特集:潰瘍性大腸炎と漢方薬
①潰瘍性大腸炎とは?
潰瘍性大腸炎 = 大腸に炎症が起こり潰瘍を形成する慢性疾患 = 出血性の下痢、腹部の激しい痛み、発熱を伴う。
潰瘍性大腸炎は、どの年齢にも起こる。(普通は15〜30歳で発症、まれに、50〜70歳で発症する人もいる。
潰瘍性大腸炎は、直腸やS状結腸から始まる = 最終的に、大腸の一部または大腸全体に広がる = まれに発症初期から大腸全体が侵される例もある。
潰瘍性直腸炎は、直腸に限局して起こる炎症で、比較的良性型の潰瘍性大腸炎で、頻度も多い。
潰瘍性大腸炎の原因は、解明されていないが、遺伝と腸の過剰な免疫反応が関係しているのは明らか。
潰瘍性大腸炎は再発する。
突然重症の発作が起こり、激しい下痢、高熱、腹痛、腹膜炎を起こすことがある。(重態)
多いのは徐々に始まる再発 = 便意が切迫して、下腹部が軽くけいれんする。
便には血と粘液が混じる。 再発は、数日から数週間にわたり、いつでも再発する可能性がある。
炎症が直腸とS状結腸に限局している場合は、便は正常か硬く乾燥している状態になるが、排便中または排便と排便の間に、
大量の赤血球と白血球を含む粘液が直腸から分泌される。(全身症状(発熱など)は、ないか、あっても軽度)
炎症が大腸の上の方へ広がると、便は軟らかくなり、1日に10〜20回ほど排便する。
患者は、重症の腹部けいれんに悩まされ、痛みを伴う直腸のけいれんが便意を催す。
夜間も症状は緩和せず、便は水様で、膿や血液、粘液を含む。(便全体が血液と膿になることもある)
発熱や食欲不振が起こり体重が減少する。
潰瘍性大腸炎の合併症
①出血 = 最もよくみられる合併症 = 鉄欠乏性貧血を起こす。
潰瘍性大腸炎の人の10%で、最初の発作が急激に進行して重症になり、大量の出血と穿孔や広範囲の感染を伴う。
②中毒性大腸炎 = 重症の合併症 = 腸壁全体が肥厚して損傷 = 腸壁の正常な収縮運動が一時的に止まる「イレウス(腸閉塞)」と呼ばれる状態を起こす。
腸の内容物が前進しなくなり、腹部が膨満する。
中毒性大腸炎が悪化すると大腸の筋緊張を失う。
腹部X線検査で、腸の麻痺した部分にガスが充満しているのがわかる。
③中毒性巨大結腸 = 大腸が異常に拡張した状態 = 非常に重篤で高熱が出る。
腹痛と圧痛があり、白血球が増加する。
腸が破裂すると、死亡するリスクが高くなる = 腸が破裂する前に迅速な治療を受ければ助かる(死亡率は4%未満)
④結腸癌 = 末期の潰瘍性大腸炎患者に毎年100人に1人の割合で発症
= 潰瘍性大腸炎が広範囲にわたる場合は、100人に10人が結腸癌になる。
結腸癌のリスクが最も高いのは、潰瘍性大腸炎が大腸全体に及んでいる場合と、罹患期間が8年以上の場合。
潰瘍性大腸炎が8年以上続く場合、大腸内視鏡検査を毎年または2年に一度行う。
大腸内視鏡検査の際に、大腸各所から組織を採取し、病理組織診を行い、初期に癌が発見されれば、ほとんどの人が助かる。
⑤クローン病の合併症と同じ = 潰瘍性大腸炎による胃腸症状が再発すると、関節炎や上強膜炎、結節性紅斑、壊疽性膿皮症(えそせいのうひしょう)などの炎症が現れる。
潰瘍性大腸炎による胃腸症状の再発がない時期でも、脊椎に炎症が生じて強直性脊椎炎となったり、股関節の炎症(仙腸骨炎)や眼の内部の炎症(ぶどう膜炎)が起こる。
潰瘍性大腸炎では、軽度の肝機能不全がみられる。 = 肝臓疾患の症状が現れるのは軽症から重症を含めても1〜3%ほど。
重症の肝臓疾患は、慢性活動性肝炎や、胆管が狭くなり、ついには閉塞する原発性硬化性胆管炎、肝臓の機能組織が瘢痕(はんこん)化する肝硬変など。
胆管炎は、潰瘍性大腸炎の腸症状が現れる何年も前から起こる。胆管炎になると胆管癌、結腸癌になるリスクが高くなる。
潰瘍性大腸炎の診断 = 症状と便の検査により診断を確定する。
血液検査 = 貧血や白血球数の増加、アルブミン(血液中のタンパク質)濃度の減少、赤血球沈降速度(ESR)の上昇 = 炎症が活発である。
S状結腸鏡検査(柔軟な観察用チューブを用いたS状結腸の検査) = 炎症の重症度を直接観察、診断を確定。
潰瘍性大腸炎の患者さんでは、症状がない時期でも、腸全体が正常にみえることはほとんどなく、病理組織診でも慢性炎症が認められる。
腹部X線検査 = 炎症の程度と広がりがわかる。
バリウム注腸後のX線検査、大腸内視鏡検査 = 潰瘍性大腸炎の活動期に行うと穿孔を起こすリスクがあるので、通常は治療を開始する前には行わない。
しかし大腸全体への炎症の広がりを診断するために、安全な時期をみて、大腸内視鏡検査を行う。
潰瘍性大腸炎の経過と治療
一般に潰瘍性大腸炎は慢性疾患で、良くなったり悪くなったり(再燃と寛解)を繰り返します。
全体の約10%が、急激に進行する初期症状から重篤な合併症を来します。
他の10%は一度の発作だけで完全に回復します。
しかし、発作が一度だけですむ人は、実際には潰瘍性大腸炎による潰瘍化ではなく、見つかっていなかった感染症によることもあります。
経過の見通し(予後)は、炎症と潰瘍が直腸だけに限局している潰瘍性直腸炎が最も良く、重篤な合併症はほとんどみられません。
しかし、約10〜30%では潰瘍性直腸炎が大腸全体に広がり、潰瘍性大腸炎となります。
治療は、炎症を抑え、症状を軽減し、体液と栄養素を補うことを目的として行います。
食事制限: 便中に血液が失われることによる貧血は、鉄剤の補給で改善されます。
炎症を起こしている大腸の内膜が傷つかないように、生野菜と果物は避けます。
乳製品を含まない食事により、症状が軽減することがあるので、試してみる価値はありますが、効果がなければ続ける必要はありません。
下痢止め薬: 抗コリン作用薬、または少量のロペラミドやジフェノキシレートは、比較的症状の軽い下痢に用いられます。
もっと激しい下痢には、高用量のジフェノキシレート、脱臭アヘンチンキ、ロペラミド、コデインなどが必要になるでしょう。
重症のケースでは、これらの薬による中毒性巨大結腸を引き起こさないように投与後の状態を慎重に観察します。
抗炎症薬: 潰瘍性大腸炎の炎症を軽減させ、再燃を予防するためにスルファサラジン、メサラミン、オルサラジン、最近開発されたバルサラジドを用います。
これらの薬は普通は経口投与されますが、メサラミンは浣腸や座薬としても使用できます。
経口投与でも直腸投与でも、これらの薬は、軽度から中等度の病気を維持したり寛解するには、限定的な効果しかありません。
ベッドで安静にしなければならないほど重い炎症でなければ、プレドニゾロンなどのステロイド薬を経口投与します。
高用量のプレドニゾロンを頻繁に服用すると、劇的な寛解が得られます。
プレドニゾロンで潰瘍性大腸炎の炎症をコントロールした後に、改善を維持するためにスルファサラジン、オルサラジンやメサラミンを投与します。
プレドニゾロンは徐々に用量を減らし、最終的には投与を中止します。ステロイド療法が長びくと、必ず副作用が現れます。
ステロイド薬の新薬、ブデソニドはプレドニゾロンより副作用が少ないですが、効果もプレドニゾロンほどではありません。
軽度から中等度の潰瘍性大腸炎が左側の下行結腸と直腸に限局している場合には、ステロイド薬やメサラミンの座薬を投与します。
症状が重症の場合には、入院が必要となり、ステロイド薬と水分を静脈内投与します。
直腸に大量の出血がみられる場合は輸血が必要となります。
免疫抑制薬: アザチオプリンやメルカプトプリンなどの薬は、長期のステロイド療法でなければ寛解を維持できない潰瘍性大腸炎患者に使われます。
この免疫抑制薬は免疫系で重要な働きをするT細胞の作用を阻害します。
しかしこれらの薬の作用はゆっくりで、2〜4カ月間しないと効果がみられません。
また、重篤な副作用を起こす可能性があるので、医師による慎重な経過観察が必要です。
シクロスポリンは、重篤な再発を起こしステロイド療法でも効果が現れない場合に投与されます。
多くの患者が当初はシクロスポリンに反応しますが、最終的には手術が必要になるケースもあります。
手術: 他の治療では寛解が得られない慢性の炎症で患者が衰弱している場合や、
高用量のステロイド療法に慢性的に依存している場合、手術が必要になります。
まれですが、壊疽性膿皮症や腕・脚の深部静脈血栓症が重症の場合など、
大腸炎に関連する腸以外の異常が起きた場合にも手術が必要となります。
大腸において癌の診断がついたり、癌性の変化である形成異常が確認された場合は、緊急ではなく待機手術を行います。
大腸が狭窄した場合や小児に成長の遅れがみられるときにも手術を行います。
大腸全体と直腸の切除により、潰瘍性大腸炎は完全に治癒します。
この治療法には、小腸の最後部と腹壁の開口部との間を手術でつなぐ回腸造瘻術を行い、
腸瘻バッグを生涯にわたって使用するという代償が伴いました。
しかし、他にもさまざまな方法が開発されており、その最も一般的な例が回腸‐肛門吻合術です。
この治療法は、大腸と直腸の大部分を切除し、小腸に小さな貯蔵部を形成して、それを肛門のすぐ上の直腸残存部につなぐ手術法です。
この治療法では、便を排泄するまで体内にとどめておくことができますが、貯蔵部の炎症などの合併症が起こるおそれがあります。
潰瘍性直腸炎では、手術が必要になるのはまれで、余命にも影響はありません。
しかし、一部には、どの治療法によっても症状が改善されない例もあります。
中毒性大腸炎は手術を必要とする緊急事態です。
中毒性大腸炎が見つかったり中毒性巨大結腸の疑いがあれば、即座に下痢止め薬は中止して絶食し、
胃か小腸に経鼻チューブを挿入して定期的に吸引します。
水分と栄養、薬剤は点滴で投与します。患者に腹膜炎や穿孔の徴候がないかどうか、注意深く観察します。
これらの処置で24〜48時間以内に症状の改善がみられない場合は、緊急手術が必要となります。
その場合大腸全体か大腸の大部分を切除します。
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2016 小松靖弘先生 近影
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健康相談
東洋医学(漢方薬・鍼灸)専門 大山漢方堂薬局(同鍼灸治療室)では、
現在、西洋医学単独では手が届かず、充分な成果が期待できなかった疾患領域に対して、
東洋医学(漢方薬・鍼灸)・自然療法・補完代替療法の力を活用して効果を上げていく、
統合医薬学、統合療法が、大山漢方堂薬局(同鍼灸治療室)の特色になっています。
大山漢方堂薬局(同鍼灸治療室)の実践する統合療法の目的は、
東西の英知(過去から現代までの医学薬学医療情報=漢方薬・鍼灸の古典、成書、漢方湯剤の使用経験、現代の臨床経験、補完代替療法の臨床経験)
を集めて、最も有効と考えられる東洋医学(漢方薬・鍼灸)、自然療法、補完代替療法を提供することです。
大山漢方堂薬局(同鍼灸治療室)では、
神経疼痛(慢性疼痛・痛覚過敏状態・線維筋痛症・神経障害性疼痛)や脳血管障害後遺症、重症筋無力症などの神経疾患、
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の患者さんの症状が安定しない方々、更年期障害や不妊症のような女性特有の病気などの患者さんに対して
西洋医学的治療だけでは充分な回復が得られない方々からのご相談をお受け致しております。
また、高齢者の認知症や歩行困難、肺炎、冷え、しびれ、排尿障害など年齢と共に増えてくる病気の患者さんのご相談もお受け致します。
繰り返しますが、大山漢方堂薬局(同鍼灸治療室)では、
現在、西洋医学単独では手が届かず、充分な成果が期待できなかった疾患領域に対して、
東洋医学(漢方薬・鍼灸)、自然療法、補完代替療法の力を活用する統合医薬学、統合療法の確立を目指しています。
基本的に、どの様な疾患のご相談もお受け致しますが、非常に有効性が高い疾患とあまり効果が期待できない疾患があることも事実です。
そこで、大山漢方堂薬局(同鍼灸治療室)へのご相談が多い疾患、調合漢方薬、鍼灸、経絡ツボ療法で、効果を上げている疾患をいくつかご紹介します。
①認知症(アルツハイマー病、脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症(ピック病)、パーキンソン病、てんかん)
特に、認知症、てんかんの患者さんに伴う精神症状の改善、QOL(生活の質)の向上に効果を上げています。
高齢者の認知症では、物忘れの他に精神的に不安定になる、物を取られたなどの妄想が生じる、
あるはずのない物が見えて怯える、など様々な異常な精神症状が発症して患者さんの家族の負担が大きくなります。
この様な患者さんに、大山漢方堂薬局の調合漢方薬(著書:脳を守る漢方薬で、ご紹介)が極めて有効であります。
②脳血管障害(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)後遺症
特に、脳血管障害(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)後遺症や神経難病に伴う嚥下障害に効果を上げています。
脳血管障害やパーキンソン病などの神経疾患では物が美味く食べられない「嚥下障害」が生じやすく、それによって肺炎を起こしたり胃瘻を作ることがあります。
この様な患者さんに、大山漢方堂薬局の調合漢方薬、「半夏厚朴湯合伏令飲加減方、他応用処方」や鍼灸経絡ツボ療法(太谿、足三里、他応用穴)への施術が有効であります。
③慢性呼吸器疾患(Chronic Respiratory Disease,
CRD)
=慢性閉塞性肺疾患(COPD)肺気腫、喘息、過敏性肺炎、肺ガン、肺小細胞癌、肺線維症、慢性胸膜疾患、塵肺、肺好酸球増多症、肺塞栓症、サルコイドーシス、睡眠無呼吸症候群
肺性心、気管支拡張症などの急性増悪の予防、慢性呼吸器疾患では、風邪などの急性気道感染をきっかけに病状が増悪し、その繰り返しで次第に身体が弱っていきますが、
この様な患者さんに、大山漢方堂薬局の調合漢方薬、「医王湯加減方、他応用処方」が有効であります。
こうした患者さんの風邪を引く回数、急性増悪の回数を減らしています。
⑤各種がん患者さんのサポート
手術療法、抗がん剤治療、放射線治療などの副作用軽減、各種免疫療法(体力、生命力、抵抗力増強、再発転移予防)、緩和ケア、生活の質QOL改善、
延命=養生(ようせい=命を養い伸ばす=最後まで通常の生活を続けながら「がんと共存」寿命を延ばし全うする)、
補完代替医療 (CAM=Complementary and Altemative
Medicine)の解説
2015. 4~
(平成27年4月)
大山漢方堂薬局(同鍼灸治療室)統括主幹
岡山大学医学博士(分子細胞医学研究施設神経情報学部門、脳代謝研究施設機能生化学部門)
徳島大学薬学修士(医療生命薬学 製薬化学科 生物薬品化学分野)
大山博行
Dr. HIROYUKI OHYAMA,Ph.D.
特集:潰瘍性大腸炎と漢方薬
②潰瘍性大腸炎は、大腸に炎症が起こり、潰瘍を形成する慢性疾患 = 出血性の下痢や腹部の激しい痛み、発熱を伴う発作が生じる = 長期にわたると結腸癌のリスクも高い。
この疾患の正確な原因は不明。
発作時の症状=腹部のけいれん痛、便意の切迫、下痢(血性)など。
潰瘍性大腸炎が広範に生じている症例では、約30%で手術が必要。
大量出血、穿孔、中毒性巨大結腸、血栓を伴う命に関わる急性の発作が生じた場合は緊急手術になる。
潰瘍性大腸炎で緊急を要しない手術の理由=寛解しない慢性疾患で生活に支障を来す場合、常に高用量のコルチコステロイド薬が必要となる場合。
大腸の癌が確認、異形成が確認、大腸の狭窄が確認、小児で発育遅滞がみられる場合=緊急でない手術を行う。
大腸と直腸をすべて切除することで、潰瘍性大腸炎は恒久的に治癒します。
これまで、この治癒には従来、小腸の最後部と腹壁の開口部との間を手術でつなぐ回腸瘻造設術を行い、腸瘻バッグを生涯にわたって使用するという代償が伴いました。
しかし、現在では他にもさまざまな代替手段が開発されており、その最も一般的な例が回腸肛門吻合術です。
この治療法は、大腸と大部分の直腸を切除し、小腸の外に小さな貯蔵部を形成して、それを肛門のすぐ上の直腸残存部につなぐ手術法です。
この治療法では、排泄を調節する機能は維持できますが、貯蔵部の炎症(嚢炎)などの合併症が起こる可能性があります。
潰瘍性直腸炎では手術が必要となることはまれで、余命も正常です。しかし、一部には、どの治療法によっても例外的に症状が改善されない患者もいます。
中毒性巨大結腸は手術を必要とする緊急事態です。
中毒性巨大結腸が見つかったり、その疑いがあれば、即座に下痢止め薬は中止して絶食し、胃か小腸に経鼻チューブを挿入して定期的に吸引を行います。
水分と栄養、薬はすべて静脈から投与します。患者に腹膜炎や穿孔の徴候がないかどうか、注意深く観察します。
時間と患者の状態が許すなら、シクロスポリンやインフリキシマブによる薬物療法を行うことがあります。
しかし、これらの処置の効果が不十分であったり、効果がみられない場合は、緊急手術が必要となります。
その場合大腸の全体または大部分を切除します。
診断は、S状結腸鏡検査(柔軟な観察用チューブを用いたS状結腸の検査)か大腸内視鏡検査(柔軟な観察用チューブを用いた大腸の検査)に基づいて行います。
長期にわたって潰瘍性大腸炎がある人では結腸癌が生じることがあります。
治療は、炎症をコントロールして、症状を軽減し、失われた水分と栄養素を補うことを目的として行います。
どの年齢にも起こりますが、普通は15~30歳で発症します。少数ですが、50~70歳で初めて発作が生じる人もいます。
潰瘍性大腸炎では、通常は大腸壁全層を侵すことはなく、小腸に及ぶこともほとんどありません。
この病気は、多くの場合、直腸または直腸とS状結腸(大腸の下端)から始まりますが、最終的には大腸の一部または大腸全体に広がります。
潰瘍性直腸炎は直腸に限局して起こり、比較的良性型の潰瘍性大腸炎で、頻度も多い疾患です。一部の患者では、発症初期から大腸の大部分が侵されます。
潰瘍性大腸炎の原因ははっきりとわかっていません。
しかし遺伝と腸の過剰な免疫反応が関係していると考えられています。
喫煙は、クローン病には有害ですが、潰瘍性大腸炎のリスクは減らしていると思われます。
ただし喫煙はさまざまな健康上の問題を起こす原因となるので、潰瘍性大腸炎のリスクを下げるために喫煙することは軽率です。
潰瘍性大腸炎の症状は再発します。
再発は突然重症となることがあり、しばしば血性となる激しい下痢、高熱、腹痛、腹膜炎(腹腔の内膜の炎症)を起こすことがあります。
このような発作の間は、患者の体調が非常に悪化します。
より多いのは徐々に始まる再発で、便意が切迫するようになり、下腹部が軽くけいれん痛を起こして、便には血と粘液が混じります。
再発は数日から数週間にわたって続き、またいつでも再発する可能性があります。
炎症が直腸とS状結腸に限局している場合は、便は正常か硬く乾燥している状態になります。
しかし、排便中または排便と排便の間に、大量の赤血球と白血球を含む粘液が直腸から分泌されます。
発熱などの全身症状はみられないか、あっても軽度です。
炎症が大腸の上の方へ広がると、便は軟らかくなり、1日に10~20回も排便が生じることがあります。
しばしば、腹部の重度のけいれん痛と、便意に伴う不快で痛みのあるけいれんが生じます。
夜間も症状は緩和しません。便は水っぽく、膿や血液、粘液を含みます。しばしば便の内容がほぼ血液と膿だけになることがあります。
患者には発熱や食欲不振も起こり、体重が減少します。
出血は最もよくみられる合併症で、しばしば鉄欠乏性貧血を起こします。
潰瘍性大腸炎になった人のほぼ10%で、最初の発作が急激に進行して重症になり、大量の出血と穿孔や広範囲の感染が生じます。
中毒性大腸炎は特に重症の合併症で、腸壁の全層に損傷を起こします。
この損傷は、腸壁の正常な収縮運動が一時的に止まるイレウス(腸閉塞)と呼ばれる状態を起こし、腸の内容物が前進しなくなり、腹部膨満が起こります。
中毒性大腸炎が悪化するにつれ、大腸の筋緊張が失われ、数日、ときにはわずか数時間で大腸が拡張しはじめます。
腹部のX線検査では、腸の麻痺した部分にガスが充満しているのが映ります。
中毒性巨大結腸は、大腸が異常に拡張したときに起こります。患者は非常に重篤であり、高熱が出ます。
腹痛と腹部の圧痛も生じ、白血球数が増加します。腸が破裂すると、死亡するリスクが非常に高くなります。
しかし、腸が破裂する前に迅速な治療を受けた場合、死亡率は2%未満です。
結腸癌は、末期の潰瘍性大腸炎患者のうち、毎年100~200人に1人の割合で発症します。
結腸癌のリスクが最も高いのは、病気の症状が活動性でなくても、潰瘍性大腸炎が大腸全体に及んでいる場合と、罹患期間が8年を超えている場合です。
潰瘍性大腸炎が8年以上続く場合、大腸内視鏡検査(柔軟な観察用チューブを用いた大腸の検査)を毎年または2年に一度は行うよう勧められます。
大腸内視鏡検査の際に、癌の早期の徴候(異形成)がないか調べるために、大腸各所から組織を採取し(生検)、顕微鏡で検査します。
異形成が診断された場合、あるいは早期の段階で癌が発見された場合でも、結腸をすぐに切除することでほとんどの人が助かります
その他の合併症は、クローン病のものと同じです。
潰瘍性大腸炎による胃腸症状が再燃すると、関節の炎症(関節炎)、白目の部分の炎症(上強膜炎)、皮膚の結節の炎症(結節性紅斑)、
紫色の皮膚のびらんに膿がたまる(壊疽性膿皮症)などの炎症が現れます。
潰瘍性大腸炎による胃腸症状の再発がない時期でも、腸の病気とはまったく無関係に、壊疽性膿皮症が生じたり、
脊椎に炎症が生じて強直性脊椎炎となったり、骨盤の炎症(仙腸骨炎)や眼の内部の炎症(ぶどう膜炎)が起こることがあります。
まれに静脈内に血栓ができることがあります。
潰瘍性大腸炎では、普通軽度の肝機能障害がみられますが、肝臓疾患の症状が現れるのは軽症から重症を含めても1~3%ほどです。
重症の肝臓疾患としては、肝臓の炎症(慢性活動性肝炎)や、胆管が狭くなりついには閉塞する胆管の炎症(原発性硬化性胆管炎)、
肝臓の機能組織が瘢痕化する(肝硬変)などが生じます。
潰瘍性大腸炎の腸症状が現れる何年も前に胆管の炎症が起こることがあります。
この炎症は胆管癌のリスクを大幅に高め、また結腸癌のリスクの急上昇とも関係があると考えられています
患者の症状と便の検査から潰瘍性大腸炎が疑われます。
S状結腸鏡検査(柔軟な観察用チューブを用いたS状結腸の検査)を行うと、炎症の重症度を直接観察することができ、診断が確定できます。
症状がない時期でも、腸が完全に正常にみえることはほとんどなく、組織サンプルの顕微鏡による検査でも通常は慢性炎症が認められます。
血液検査で診断を確定させることはできませんが、貧血や、白血球数の増加、アルブミン(血液中のタンパク質)濃度の減少、
赤血球沈降速度(ESR)の上昇がみられれば、炎症が活発になっていることを示します。
腹部X線検査では、重症度と病気の広がりがわかります。
バリウム注腸後のX線検査や大腸内視鏡検査は、この病気の活動期には通常行いません。
しかし大腸全体への炎症の広がりを診断するために、どこかの時点で大腸内視鏡検査を行います。
予後(経過の見通し)と治療
一般に潰瘍性大腸炎は慢性疾患で、良くなったり悪くなったり(再燃と寛解)を繰り返します。
全体の約10%で、初期の発作が急激に進行し、重篤な合併症を来します。
別の10%では一度の発作だけで完全に回復します。
しかし、発作が一度だけですむ人は、真の潰瘍性大腸炎ではなく、見つかっていなかった急性感染症であった可能性があります。
結腸の生検がこの点の区別に有用です。
潰瘍性直腸炎の場合は予後が最もよくなります。重篤な合併症はほとんどみられません。
しかし、約10~30%では最終的に潰瘍性直腸炎が大腸全体に広がり、潰瘍性大腸炎となります。
治療は、炎症を抑え、症状を軽減し、失われた水分と栄養素を補うことを目的として行います。
食事の制限
便中に持続的に血液が失われることで起こる貧血は、鉄剤のサプリメントで改善できます。
炎症を起こしている大腸の粘膜が傷つかないように、生の野菜と果物は避けます。
食事から乳製品を除くことで、症状が軽減する場合があるので、
試してみる価値はありますが、恩恵がなければ続ける必要はありません。
下痢止めの薬
比較的症状の軽い下痢には、抗コリン作用薬(多くの抗ヒスタミン薬やある種の抗うつ薬など)、
または少量のロペラミドやジフェノキシレート(diphenoxylate)を用います。
より激しい下痢には、高用量のジフェノキシレート(diphenoxylate)、脱臭アヘンチンキ、ロペラミド、コデインなどが必要になることがあります。
しかし重症のケースでは、これらの薬の服用により中毒性巨大結腸が生じないよう、投与後の状態を慎重に観察する必要があります
抗炎症薬
潰瘍性大腸炎の炎症を軽減させ、症状の再燃を予防するために、スルファサラジン、オルサラジン(olsalazine)、
メサラジン、バルサラジド(balsalazide)などの薬剤を用います。
これらの薬は普通は内服しますが(経口投与)、メサラジンは浣腸や坐薬としても使用できます(直腸投与)。
経口投与でも直腸投与でも、これらの薬は、軽度から中等度の活動性疾患の治療には、限定的な効果しかありませんが、
寛解状態の維持にはより有効で、おそらくは大腸癌の長期的リスクも減らすことができます。
ベッドで安静にしていなくてもよい中等度の患者では、通常はプレドニゾロンなどのコルチコステロイド薬を経口投与します。
高用量のプレドニゾロンを服用すると、しばしば劇的な寛解が得られます。
プレドニゾロンで潰瘍性大腸炎の炎症をコントロールした後に、改善を維持するために
スルファサラジン、オルサラジン(olsalazine)やメサラジンを投与します。
プレドニゾロンは徐々に用量を減らしていき、最終的には投与を中止します。
コルチコステロイド薬による治療が長びくと、ほぼ必ず副作用が現れます。
軽度から中等度の潰瘍性大腸炎が大腸の左側(下行結腸)と直腸に限局している場合には、
コルチコステロイド薬やメサラジンの浣腸または坐薬の投与が役立ちます。
免疫抑制剤
アザチオプリンやメルカプトプリンなどの薬は、長期のステロイド療法が必要な潰瘍性大腸炎患者で寛解を維持するために使われます。
この免疫抑制薬は免疫システムで重要な働きをするT細胞の作用を阻害します。
しかしこれらの薬は作用が遅く、1~4カ月間しないと効果がみられません。
また、重篤な副作用を起こす可能性があるので、医師による慎重な経過観察が必要です。
シクロスポリンは、重篤な再発を起こしコルチコステロイド療法にも反応しない場合に投与されます。
多くの患者が当初はシクロスポリンに反応しますが、一部の人は最終的に手術が必要になります。
モノクローナル抗体から作られ、静脈内投与するインフリキシマブが潰瘍性大腸炎患者に有益な場合もあります。
この薬はコルチコステロイド薬に反応しない患者や、他の免疫抑制薬を適切に使っても、
コルチコステロイド薬の用量を減らすと必ず症状が出る患者に投与します。
手術
潰瘍性大腸炎が広範に生じている症例では、約30%で手術が必要となります。
大量出血、穿孔、中毒性巨大結腸、血栓を伴う命に関わる急性の発作が生じた場合は緊急手術が必要です。
緊急を要しない手術の理由としては、寛解しない慢性疾患で生活に支障を来す場合や、
常に高用量のコルチコステロイド薬が必要となる場合などがあります。
大腸の癌が診断されたり、異形成が確認された場合、ときに大腸に狭窄が生じていたり、
小児で発育遅滞がみられる場合も、緊急ではない手術を行います。
大腸と直腸をすべて切除することで、潰瘍性大腸炎は恒久的に治癒します。
これまで、この治癒には従来、小腸の最後部と腹壁の開口部との間を手術でつなぐ回腸瘻造設術を行い、
腸瘻バッグを生涯にわたって使用するという代償が伴いました。
しかし、現在では他にもさまざまな代替手段が開発されており、その最も一般的な例が回腸肛門吻合術です。
この治療法は、大腸と大部分の直腸を切除し、小腸の外に小さな貯蔵部を形成して、
それを肛門のすぐ上の直腸残存部につなぐ手術法です。
この治療法では、排泄を調節する機能は維持できますが、
貯蔵部の炎症(嚢炎)などの合併症が起こる可能性があります。
潰瘍性直腸炎では手術が必要となることはまれで、余命も正常です。
しかし、一部には、どの治療法によっても例外的に症状が改善されない患者もいます。
中毒性巨大結腸は手術を必要とする緊急事態です。
中毒性巨大結腸が見つかったり、その疑いがあれば、即座に下痢止め薬は中止して絶食し、
胃か小腸に経鼻チューブを挿入して定期的に吸引を行います。水分と栄養、薬はすべて静脈から投与します。
患者に腹膜炎や穿孔の徴候がないかどうか、注意深く観察します。
時間と患者の状態が許すなら、シクロスポリンやインフリキシマブによる薬物療法を行うことがあります。
しかし、これらの処置の効果が不十分であったり、効果がみられない場合は、緊急手術が必要となります。
その場合大腸の全体または大部分を切除します。
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認知症・アルツハイマーは、もう怖くない 「脳を守る漢方薬」 岡山大学 医学博士 大山博行 著
cf.
大山博行(おおやまひろゆき)
Dr. HIROYUKI OHYAMA (Ph.D).
研究業績
岡山大学医学博士(分子細胞医学) 徳島大学薬学修士(生物薬品化学)
Dr. HIROYUKI OHYAMA (Ph.D)
Depertment of Neurochemistry, Institute for
Neurobiology,
Okayama University Medical School
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Free Radicals in Brain Physiology and Disorders
An International Conference
Held in Celebration of the Retirement of
Professor Akitane Mori
August 4 and 5, 1995
International Convention Center PAMIR,
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特集③:不老長寿と漢方薬
1.不老長寿の漢方薬
「瓊」の字は『玉篇』を見ると、「美玉」、「赤玉」と記録されている。
また「瓊」を用いた単語としては「瓊樓(王の宮殿の意)」、「瓊杯(玉で作った杯の意)」がある。
「瓊」の字は最上の美と大切の意味ををしている。昔から最高の美しい碧玉を表現する際に「瓊玉」の字が使われた。
また「瓊枝玉葉」という言葉があるが、これは皇族の子孫のことである。かつて、皇帝に献上する貴重品を至宝の玉という意味を持たせるために、
「瓊玉」と表現したこともあった。「膏」は「なめらかな味の良いもの」の意味もある。これにより「瓊玉膏」という名称は、薬の中でも最高の称号であることがわかる。
瓊玉膏は皇帝の長寿のための補助薬として、応急薬の牛黄清心元と共に、皇室の2大名薬に数えられた。
元の皇帝であるクビライ・カーンは、健康と精力のために好んで飲み、皇室の女子らと名門家の貴婦人達も美容のために瓊玉膏を愛用した。
このように顔を玉のように手入れをするために服用したとの意味で瓊玉膏と名づけられてといわれている。
瓊玉膏は南宋の医師である洪遵が編纂した『洪氏経験方』(1170年)に収載され、その内容をみると「人参」が「新羅人参」という名称で記載されている。
これにより朝鮮の高麗人参が既に世界的薬剤として名声を得ていることが分かる。
瓊玉膏は東洋の名薬として東アジアの国々が製造したが世界的品質の高麗人参で製造した瓊玉膏が最優秀品質だと評価されている。
2.不老長寿と生活習慣病 生活習慣病に効果的な漢方薬
成人病は加齢の病変であり、病勢の進行を止めることはできないとされてきたが、
現在では生活習慣病と称される成人病の過半数が、生活習慣を変えることにより、病気を確実に予防ができることから『健康日本21』が厚生労働省により策定された。
生活習慣病予防としては、健康と栄養を考えた食生活、運動を通じた肥満、動脈硬化、高血圧症、脳出血などの循環器病病の防止、
睡眠によるストレス緩和と休養、節煙および禁煙による心臓病のリスクの低減、適度なアルコール摂取による心身のリラクゼーション
、歯の健康、糖尿病予防、そして癌の早期発見などが挙げられている。以上をみると、
いずれにしても、生活習慣を通じた予防が求められる。結局、自然との親和する生活を意味している。
癌(Cancer)
癌は手足の爪、毛髪をのぞく、身体中どこにでも発生する恐怖の疾病である。
世界人口の約1/4が癌によって死亡している。また勧告の死亡原因の1位が癌による死亡であり、
毎年7~8万人が癌により死亡している上、癌患者は毎年増加している。
治療中の患者が10余万人で、新しく発生する患者数も10余万人に達すると専門家達は推測している。
20世紀にめざましい発展をとげた現代医薬であるが、癌は今も難攻不落で、
癌退治のために医、薬、生物学者たちは、昼夜兼行で研究している。
1.癌の正体は何か
癌は正常細胞が何らかの原因で突然変異を起こし、発生する。
1)癌は60兆に達する正常細胞の中、
最初はひとつの細胞が突然変異を起こし、発生する。(Initiation Promotion)
2)突然変異細胞は細胞死滅がなく、無限に増殖する。
3)癌細胞は多くの栄養分を要求し、無秩序に正常細胞へ機能障害を与える。
4)癌細胞は不可逆的で、正常細胞に戻ることなく、全臓器に転移拡大する。
5)増殖速度が非常に早い。
6)癌は始めに発生する原発巣癌と、転移癌がある。
原発巣癌は早期に発見すれば手術や薬物治療により治癒できるが、
転移癌は全身に転移するため、免疫が低下し急速に増殖速度を増す。
7)難治病である。
ヒトは誰でもオンコジーン(Oncogene)という不活性の癌因子を持っている。
ヒトが身体的、あるいは精神的ストレスを継続的に受け、刺激が累積すると、
不活性Oncogeneが活性化されて癌を誘発するとの学説がある。
Oncogeneを活性化する条件は日常生活習慣が鍵になっていると言える。
即ち、環境汚染、疲労、過度な紫外線及び放射線の照射、または累積されたストレス等により、
呼吸代謝で発生した活性酸素が体内に蓄積されることによって、免疫力が低下して正常細胞が破壊され、
Oncogene の活性と共に細胞の突然変異が起こるとみられている。
この突然変異は慢性的刺激(promoter)と変異源(initiater)によって起こる。
慢性刺激実験のひとつの例を挙げると、ウサギの耳の毛を削り、皮膚をコールタールで擦ることを繰り返すと、
皮膚に傷ができて出血し、皮膚や肉がふくれ、修復増殖作用が起こる。
このような操作を1年間繰り返すと(動物の癌自然発生は1年以上の期間が必要)、
修復増殖作用により修復された皮膚および肉が突然石のように固くなる。
細胞に突然変異が起こって癌になる癌は、このような原因などにより、発生する。
この実験の通り、慢性刺激(promoter)が突然、変異源(mutagen)になって癌になるのがわかる。
2.癌の予防
癌は遺伝病であると言われてきた。
しかし、最近では生活習慣病であると考える方が説得力を得ている。
癌の遺伝性は結果で、原因は生活習慣にあると考えるのである。
人類の進化は遺伝子の変化からではなく、環境に適応するために体質の変化から進化している。
癌を予防するには、まず癌が発生する原因を知ることが望ましい。
癌を誘発する変異源の原因は何かを考えてみよう。
進化と人体質変化
人体遺伝子は30億構成→蛋白質生産
人間遺伝子は不変化
環境による人間体質変化
遺伝子校正体質50%-環境50%
癌の発生原因となる放射線、紫外線、ブレオマイシン(bleomycin),テトラサイクリン系の抗生剤、
農薬、除草剤、殺虫剤等が、植物や昆虫の細胞核遺伝子のDNAに、活性酸素(Free Radical)を発生させ、
DNAを溶解したり、破壊したりする。即ち、放射線、紫外線、抗生剤等が、
人を含めた動植物の細胞核に、大量の活性酸素(Free Radical)を発生させると、DNAが破壊されて死亡する。
段簿に散布した農薬が米や野菜に吸収されたり、ゴルフ場に散布される農薬や殺虫剤が雨と共に川へと流れたりすると、
その農薬や殺虫剤は川の石や砂によって浄化されるが、微量ずつ水道水に混入する。そのため日常生活の飲料水や食物を通じて、
我々の体に蓄積される際に、前述した通り、微量ずつ発生する活性酸素(Free Radical)によってDNAが損傷を受け、
遺伝子の伝達命令が少しずつ変化しながら、細胞の突然変異を起こし、癌を誘発すつ子とになる。
以上のような事実からみると、遺伝子変異の原因は、結果的に環境と生活習慣にあることがわかる。
癌の字を見てもよく理解できると思われるが、癌の字はやまいだれに、くち(口)が3つあり、その下に山の字がある。
癌の字を解析してみると、やまいだれの中の口のひとつは食物を食べる口、もうひとつは呼吸する口、
残りのひとつは目には見えない七情(ストレス)を感じる口で、下の山の字は自然を表している。
言い換えると、日常生活において自然から遠ざかり、汚染した空気や食べ物を食べ、ストレスを連続して受けることにより、
癌にかかると考えると、生活習慣の改善が癌の予防に役立つと思われる。
一般的に癌にかかるのは遺伝子によるものだと決めつけて言う人が多い。
しかし、人の遺伝子は30億個で構成されていると言われ、遺伝子が変化することは滅多にない。
もし簡単に変化する遺伝子であったとすれば、先祖から子孫へと遺伝子が伝わってくる間に、
癌にかかってしまい、今まで遺伝子を伝えてくることができなかったはずである。
癌は遺伝性のものではなく、生活習慣による体質変化が癌を誘発するため、予防できると主張する学者達が増えてきた。
したがって親が癌で亡くなったので、遺伝子の関係で自分も癌にかかるのではないかと心配する方がいるかもしれないが、
それは杞憂で、環境や生活習慣に気をつけていくのが大事なことであると、学者たちは言っている。
3.癌の転移と早期発見
ヒトの体には外部的に『ほくろ』あるいは内部的に子宮筋腫、脂肪腫等があるが、
これらはある程度成長すると停止して転移しないため、生命には支障がなく、良性腫瘍とよばれる。
一方、悪性腫瘍(癌)は正常細胞と異なる非正常的な分裂細胞で、ヒトの正常な新陳代謝とは無関係に早い速度で無限増殖し、
正常細胞が摂取するべき栄養分を、癌組織の増殖に比例して奪取するので、正常細胞は次第に栄養不足状態となり、癌組織の増殖は加速される。
なお重要なことは、初めに発生した癌組織を原発巣癌というが、この原発巣癌がseedとなり、癌細胞から解離及びリンパ離脱されて、
血管やリンパ管を通じてからだの各臓器に移転し、早い速度で新しい癌組織を新生拡大することを、癌の転移と言う。
この転移した癌細胞に対する治療法は、未だに困難である。
癌転移に対して、いくつかの過程(process)に分けて、特徴を解析してみると
1)原発巣の増成による周囲組織の融解と血管新生の誘引
2)原発巣からのseedの解離と離脱
3)seedの脈管(血管、リンパ管)への移動
4)seedの脈管内への侵入
5)seedと脈管内の体液成分(リンパ管、血糖タンパク)、細胞成分(リンパ球、マクロファージ、血小板)との相互作用
6)seedの標的臓器(soil)の脈管壁への付着と脈管外への浸出
7)seedによる標的臓器(soil)の組織融解
8)seedによる標的臓器(soil)内への侵入
9)seedによる標的臓器(soil)での血管新生の誘引
10)seedの標的臓器(soil)での増成
以上、癌転移の過程(process)を整理して説明したが、癌転移に最初の段階、癌細胞の腫瘍塊からの離脱に関与する
細胞間接着低下に関するカテニンタンパク群の研究、癌細胞の標的臓器への接着浸透過程、
Lance Liottaの提唱した血管リンパ管規定膜接着分解運動における3段階での分解に関与する
マトリックスメテロプロテアーゼの研究、seed and soil説に対する研究、癌のseedが臓器に安着した後の栄養補充のための
血管新生誘引の抑制等、部分的に活発な研究は行われているが、未だに確実な治療法は確立されていない。
4.癌の早期発見
癌は原発巣癌と転移癌とを区別しており、これらは癌の進行過程を表している。
上記で胆の発生原因を説明した通り、最初は1個の細胞から変異が起こり、潜在期を経て転移する以前までを、原発巣癌という。
この原発巣癌の潜伏期間は相当な期間がある。ただ症状がなく、本人が感じられないため、
長い期間、癌の成長を待ったまま生活しているのが一般的な癌患者たちの実態である。
この原発巣癌の段階で病院に行って検診を受け、癌を発見するのを癌の早期発見と言う。
癌を早期発見すると、手術や放射線療法、薬物治療などによって簡単に治療できる。
癌転移に対しては上記過程(process)で説明したように、全身の臓器に転移することにより免疫が急低下し、
急速に癌細胞が増殖するため、最先端の現代医療でも未だにほとんど治癒が不可能である。
そのため、検診を通じて早期発見するよう、医療機関では受診勧告を行っている。
この受診勧告を積極的に利用するのも、癌を予防する方法である。
5.がん予防の勧奨事項
1)次はがん予防医療機関におけるがん予防の勧奨事項を紹介する(大韓癌協会)
(1)偏食しないで栄養分はバランスよく摂取する
(2)緑黄色野菜を中心に果実や穀物など、繊維質を多く摂取する
(3)牛乳と、みそ、しょうゆを多く摂取する
(4)ビタミンA、C,Eを適切に摂取する
(5)適切な体重を維持するため、過食しないで、脂肪質を少量食べる
(6)あまりにも塩分の多いもの、あまりにも辛い食べ物を熱い食べ物を避ける
(7)かびがついたものや、腐敗した食べ物を避ける
(8)火で直接焼いたり、燻製にした肉類や魚介類は避ける
(9)酒は過飲したり、習慣的に飲んだりするのを避ける
(10)禁煙する
(11)太陽光線、特に紫外線に当たり過ぎることを避ける
(12)あせを流すほどの運動はよいが、運動し過ぎる事は避ける
(13)ストレスを避ける、嬉しい気持ちで生活する
(14)沐浴やシャワーを適度に、体は清潔にする
2)日本の公益財団法人癌研究振興財団では、生活において、
癌を防ぐための12か条(Twelve Points Precaution For Cancer Prevention)を推奨している。
(1)バランスのとれた栄養をとる(彩り豊かな食卓にして)
毎日食べている食品の中には癌を誘発する物質と癌を抑制する物質が共存している。
例をあげると、乳房癌、大腸癌、子宮内膜癌等は脂肪の過量摂取が発ガンと関係ある。
反面、ビタミンA,C,E等と食物繊維は、発癌を防ぐ抑制効果があることが知られている。
食べ物はヒトが選択するもので、偏食を禁じ、バランスのとれた食事を通じて、
食物中の発癌物質の作用を相殺するのが食予防法言えよう。
(2)毎日、変化のある食生活を
多くのヒト達は好きな食べ物を繰り返し食べることが多い。
例を挙げると、精米所のニワトリは米ばかり食べて、一見、幸福に見えるが、産卵率はよくない。
また体も弱い。これはいつも米だけを食べるため、免疫が落ちるからである。
人参がヒトに良いからといって、人参だけを連続して食べるのもよくない。
また肉類を多く食べるをよくないからといって禁食すると、栄養素のバランスが崩れるため、
週に1回程度、緑黄色野菜と一緒に食べるようメニューを調整して欲しい。
(3)食べすぎをさけ、脂肪は控え目に(美味しいものも適量に)
長寿の秘訣は毎回の食事を8分目程度に維持することと言われている。
動物実験でラットに好物を制限なしに食べさせた郡と、食事量を60%に制限した郡とを比較した結果、
60%に制限した郡は発癌率が低く、長生きしたのが確認された。特に過食の中でも、脂肪の量が問題となる。
(4)お酒はほどほどに(健康的に楽しもう)
WHO(世界保健機関)の調査により、過度の飲酒は口腔癌、咽頭癌、食道癌と関係があると報告されたことがある。
フランスのノルマンディー地方の住民たちは、アルコール濃度が高いブランデーを多く飲む習慣があり、
昔から食道癌が多かった。またアルコール度数の高いお酒は、
口腔や咽頭、食道等の粘膜細胞に傷を与え、それが癌の原因となると究明された。
(5)たばこは吸わないように(特に、新しく吸いはじめない)
たばこと癌との関係は知られている事実である。がん研究振興財団によると、男性12万人以上に対して、長期に渡って調査した結果、
1日25本以上喫煙した人は、喫煙しない人に比べて、咽頭癌が90倍以上、肺癌は7倍の死亡率を表していた。
また最近は喫煙する人だけではなく、家族や職場同僚等の周辺の人にまで害を与える事が知られている。
たばこから直接出る紫色の煙より、喫煙した人の口からはかれた煙の方が、発癌物質を多く含んでいる。
また喫煙する夫よりも、喫煙しない妻の肺癌死亡率が高いとの報告もある。
(6)食べものから適量のビタミンと繊維質のものを多くとる(緑黄色野菜をたっぷり)
ビタミンは人の体の潤滑油と同じで、その中でも、ビタミンA、C、Eは癌発生を防ぐ作用があることが知られている。
例を挙げると、ビタミンA(?‐カロテン)はニンニク、ホウレンソウ、小松菜、春菊、ニラ、太刀魚、バター、チーズ等に、ビタミンCは、
イチゴ、カキ、レモン、ホウレンソウ、キウイ等に、ビタミンEは、落花生、豆、ゴマ油、えごま油、太刀魚、イワシ、卵類等に、多く含まれている。
繊維質:植物の繊維質は、大腸の活動と通便を助け、便が腸に溜まる時間を短くするだけでなく、
繊維成分が大腸内にある発癌物質の濃度を希釈し、大腸癌にかからないように助ける役割をする。
昔からある食品は植物性が多いので、繊維食品が多いが、最近は、繊維質の足りないインスタント食品を好んで食べる傾向があるため、
繊維食品が減少する状況と反比例して、大腸癌が急増している。
(7)塩辛いものは少なめに、あまり熱いものは冷ましてから(胃や食道をいたわって)
韓国には塩辛い食品が多いので、代表的な癌として胃癌を挙げることができる。
最近は食生活の改善で減少をみせているものの、今も肺癌や子宮癌に比べて圧倒的に多い。
日々の塩の消費量を10グラム以下に勧奨しているが、守られていないようである。
環境と生活改善で、胃癌による死亡率は減少したが、地域差があるのは塩分摂取量と関係があるためだと知られている。
また熱い茶、スープ等を飲む習慣がある地方では、食道癌が多いという報告もある。
(8)焦げた部分はさける(突然変異を引きおこす)
魚介類や肉類を焼くと、黒く焦げた炭化部分に突然変異を起こす物質が生じるとの報告がある。
料理温度が高く、料理時間が長いほど、突然変異する量が増加する。
特に魚介類や肉類、野菜等を直火で焼くと、加熱で焦げた場合、多く発生する。
また砂糖や炭水化物の炭化物にも、細胞の変異を引き起こす物質が含有されている。
(9)かびの生えたものに注意(食べる前にチェック)
かびには人に良いものも多いが、その反面、有害なものも多い。
有害なかびは固いピーナッツや米に付いており、このかび等に発癌性が認められている。
また東洋人に肝癌が多いことから、B型肝炎等の他に、このかびが肝癌の原因ではないかとみている学者達もいる。
(10)日光に当りすぎない(太陽はいたずら者)
太陽光線には強い紫外線があり、この紫外線は皮膚に有害であることがわかった。
適度な紫外線の照射が続くと炎症ができ、この炎症が継続すると細胞の遺伝子が損傷を起こし皮膚癌を誘発するようになる。
理論的には紫外線に過敏反応を起こすメラニン色素によるものである。
したがって熱帯地方の白人達は皮膚癌や悪性黒色腫が多いと知られている。
(11)適度にスポーツをする(いい汗、流そう)
栄養と運動は健康的な生活の基本条件である。
1日中椅子に座って仕事をするヒトに大腸癌が多いとの研究結果もある。
発癌物質を投与して、光の照射や高温下においた動物は、発癌物質だけを投与した動物より、
癌の発生率が高いという実験結果からすると、疲労とストレスは大敵とも言える。
気分転換や健康のために、適度なスポーツをすることを勧奨している。
(12)体を清潔に(さわやかな気分で)
毎日シャワーや沐浴をし、体を清潔にした場合、皮膚癌や子宮癌、陰茎癌等は、ある程度、予防できる。
200年前に、イギリスであった話だが、煙突清掃をしている人達の間で陰嚢の皮膚癌の発生が問題となった。
その後、煙突のススの中に皮膚癌の原因となる物質が発見されたので、
作業が終われば体を洗うようにした後からは、皮膚癌がなくなった。
これは体を清潔にすれば、皮膚癌の予防になる良い例と言える。
以上のように、日本や韓国の癌専門協会では、癌は生活習慣によって起こる疾患であると、
積極的に警告し、生活習慣を通じた予防法を提示している。
6.癌の危険信号
1)胃:腹部不快感、食欲不振または消化不良が継続する時
2)子宮:異常分泌物または不定出血がある時
3)肝:右上腹部鈍痛、体重減少及び食欲不振の時
4)肺:継続的に空咳や血痰が出る時
5)乳房:無痛の腫塊または乳頭出血が出る時
6)大腸、直腸:血液や血便がでたり、排便習慣に変化がある時
7)舌、皮膚:難治性潰瘍ができたり、ほくろがより濃くなったり、大きくなったり、または出血する時
8)泌尿器:血尿や排尿不良がある時
9)咽頭:声が持続的に変化した時
以上は癌学会で癌の予防と早期発見のための啓蒙活動として広報された内容である。
癌を含めた慢性病は、環境と生活の改善により病気にかからないように予防することが何より良い方法で、
早期発見のため、上記の癌の危険信号に、平素から関心を持つことが必要である。
7.抗癌化学療法剤と免疫増強剤
最近、抗癌治療は外科的手術、放射線治療と共に、多くの化学療法剤の開発により、治療が進んでいる。
しかし、副作用がなく完治する抗癌治療剤(chemotherapy)は、未だに期待するほどの抗癌剤は開発されていない。
抗癌化学治療剤の開発の歴史をみると、アメリカの化学兵器(毒ガス、細菌)研究チームの一人であったエール大学のゲルマン博士が
ナイトロジェンマスタードと言う毒ガスの殺人実験をしている時に、同じ実験室で実験中であった悪性リンパ腫のマウスが誤って少量の毒ガスを吸ってしまったところ
、悪性腫瘍が縮小されたことが確認され、これが抗癌化学治療剤の開発の契機となった。
現在では使用されていないが、医学の専門書には毒ガスであるナイトロジェンマスタードが、抗癌剤のひとつとして記録されている。
他の科学治療剤も癌細胞と正常細胞を同時に攻撃するので、正常細胞をも死滅あるいは損傷を与えるだけではなく、
免疫力も急激に低下させ、細胞を保護したり防御したりする能力を失わせる。
このような副作用を化学治療剤は持っており、使用目的が異なるだけで、毒性の面から見れば同じ事になる。
抗癌化学治療剤の問題点と言える。免疫増強剤は、科学的薬物治療、放射線治療、外科的手術の前後に、
副作用を解消し、活性を高め、正常細胞を保護するための補助剤として、
治療に必須だと言う専門医達が増えるにつれて、免疫増強剤の開発が活発になっている。
ヒトを含めた動植物は、生命を維持するために、免疫力が必要である。
したがって、日常生活の食事の大部分を占める家庭料理には、免疫力を増加する成分を、量的、質的差異はあれども、充分に含んでいる。
子供の頃、好き嫌いせずに食べなさいと言った大人達の言葉は、免疫と言う意味を知らなかったとしても、経験から発した知恵だと思われる。
例を挙げると、韓国の家庭料理の味付けの原料に多く使われている。唐辛子、ニンニク、植物油、ゴマ油、発酵食品のキムチ、タケノコ、魚介類、
各種の野菜等は、慢性病の原因となる活性酸素を消去すると同時に、免疫を増強させる重要な食物と言えよう、
また、著者が開発したキノコのメシマコブには、タンパク複合多糖体が多く含まれていて、癌治療免疫増強剤の医薬品として販売されている。
癌治療に用いる免疫増強剤の製品として、コプラン、メシマ、それ以外に類似製品としてピシニバール等がある。
漢方薬では、人参、鹿茸、当帰、熟地黄等、神農本草経の上品薬(君薬)に収載された120種の生薬が含まれる漢方処方の瓊玉膏
、牛黄清心元、十全大補湯、鹿茸大補湯、双和湯等、多くの研究報告で免疫増強作用及び抗酸化作用がみられる。
このような免疫増強剤は、癌治療の時だけ服用するのではなく、
体が衰弱した時や過労の時、疾病の予防薬として服用するのが良いと思われる。
8.癌療法と漢方製剤
現代の癌治療には外科的手術療法、抗癌化学療法剤、放射線療法、免疫療法、
その他として代替療法等を挙げることができるが、これらは癌の種類と部位によって使い分けられている。
漢方製剤や生薬製剤には
・直接的なin vitroあるいはin vivoにおける抗癌作用
・インターフェロンや腫瘍壊死因子(TNF)の誘起作用
・マクロファージ活性等、免疫能の調節作用に対する研究は進んでいるが、
現代医薬の抗癌化学療法剤に比べて、天然薬物の単独投与では限界があるので、現代医療系では抗癌剤として認めない実情がある。
しかし、臨床あるいは患者当事者らに、化学療法剤と併用して良い効果を得ている。
・小柴胡湯の癌の進展予防効果、人参(ginsenosideRh2)は癌化された細胞を機能的、
形態学的に正常細胞の方向に形質変換(再分化)させる可能性があることが報告されている。
・人参、桑黄、当帰等に含有されるポリサッカライド、瓊玉膏、十全大補湯、双和湯等は、
免疫増強剤として抗癌化学療法剤、放射線療法および手術の前後に、副作用の軽減
または相乗効果を期待して、臨床ではよく併用投与されている。
9.抗癌療法の補剤としての漢方製剤応用
・胃癌・乳癌:マイトマイシンC、アドリアマイシンと瓊玉膏、十全大補湯併用療法
・卵巣癌:シクロホスファミド、シスプラチンと瓊玉膏、補中益気湯併用療法
・消化器癌:テガフール、マイトマイシンCと瓊玉膏、小柴胡湯併用療法
・癌術後患者(88例):消化器症状に対する瓊玉膏、十全大補湯の併用効果
以上は臨床でよく利用されている。
参考文献
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4.木村昌之:和漢医薬学会誌、2(3)pp.60-603(1985)
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8.新津洋司郎等:Mebio癌治療の制御、MEDICAL VIEW(1999)
9.谿忠人:現代医療と漢方薬、医薬ジャーナル社(1991)
10.(2005)
11.(1999)
12.日本がん研究振興財団:癌 知識(平成10)
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