ツボ療法3

鍼灸診断

問診
年齢、性別、職業、既往歴、家族歴、現病歴、嗜好、便通、生理等々西洋医学とほぼ同様であるが、東洋医学が証の診断に重点が置かれている故に、患者の自覚症状は、最も重要視される。この中には五味をはじめ、次にあげるような症状の有無に注意する。又、病は必ず経路の異常を伴うため、経路に沿った痛み、しびれ、緊張感等の訴えは特に見落とせない。
 次に、臓腑経路の異常を表わす症状の主なものを列記するが、これ等を適当に問診に組み入れて診断の参考にすると便利である。

1) 木
 「木は胸脇痛、心下満を主とし、春、風、弦、涙、目、青、呼、角、怒、酸、筋、視、燥、握、爪に特徴を現わし、木の流注をよく診る」と言われている。
 
(イ)肝実:怒りっぽく、逆気して時として頭眩、眼球結膜の充血、流涙、腋下から側腹部にかけての痛みや張り。口内が苦み酸味、あるいは口渇。精神不安著しく煩々として安眠出来ない。手足の筋肉の強直、後弓反張、腓腹筋痙攣、耳鳴り、月経不順、陰      部の痛み、肝経にそった痛み等々。

(ロ)肝虚:目がかすみ、視力減退、眩暈、目疲れ、両側側胸部から側腹部にかけて筋攣。うつ症の傾向にあり、いつも人から追いかけられているような不安感。陰嚢が引っぱられるような鈍痛、下腹部が張り、頻尿の傾向にあり遺尿し易い。耳鳴り、立ちくら      み、気力減退、性欲減退等。

(ハ)胆実:頭痛、特に側頭痛、頭重、発熱、発汗、口中の苦味。舌が粘り、赤黄の舌苔、酸水の嘔吐、鼓腸、怒り易く勇敢。不眠又は好眠、眩暈、耳鳴り、胸腹側痛等。

(ニ)胆虚:溜息をつき、手足の脱力感あり、目に力が無く、物がかすんで見える。眩暈ありよろめく。球結膜に黄疸、顔面に汚い色素沈着、不眠。力無く煩悶(もだえる)する。舌は白滑で粘るか淡紅。舌苔は少ない。


2) 火
 「火は身熱を主とし、夏、熱、暑、洪、汗、舌、赤、笑、言、徴、喜、苦、血脈、歩、焦、憂、面に特徴を現わす。 火の流注をよく診る」。

(イ)心実:狂気のように譫語し、顔面赤く、火が燃えるような訴え、時として喜笑して止まない。火の経路が痛み、特に心胸部が針で刺されるように痛む。微熱あり、尿の色は黄赤。吐血、鼻出血、口渇、四肢重く、大便不利。口苦く、舌が赤い。

(ロ)心虚:不安著しく憂愁で驚悸、恐怖の夢多し。睡眠不安、健忘、心中騒然とし側胸部から背部にかけてひきつれて痛む。盗汗等。

(ハ)小腸実:腹痛、特に下腹部痛、あるいは腰背部へ睾丸が引きつけられるように痛む。排尿すると気分が良い。胸苦しく、咽喉痛あり、口中に可能性疾患を生ず。頸が腫れて痛み回わせない。舌は黄で周辺部は赤。

(ニ)小腸虚:偏頭痛、特に後頭部、耳後部痛。耳鳴り、排尿は頻回で不利。舌は薄白。


3) 土
 「土は体重筋痛を主とし、土用、湿、緩、涎、口唇、黄、歌、宮、思、甘、肌肉、坐、香に特徴を現わす、土経の流注をよくみる」。

(イ)脾実:筋肉痛、特に下肢の筋肉痛。脱力、筋肉萎縮、萎えて起立出来ない。胸胃部に膨満感あり。腹痛時に臍周囲の間歇的腹痛。皮膚は黄色がかり時に下痢、嘔吐。

(ロ)脾虚:下痢、腹痛、鼓腸、嘔吐著しく、力無く四肢の運動のままならず、唇・皮膚は乾き、疲れ著しいために臥位を好む。四肢が冷え、食物に味がない。

(ハ)胃実:心窩部膨満し痛み、胸やけして止まず、食欲旺盛で肥満。顔面がほてり鼻出血、歯根の腫脹、上歯痛、舌は赤く厚い。特に飲食少なくしてしかも肥る。

(ニ)胃虚:体・腹が冷、下肢特に脛骨外側部が冷える。腹痛、食欲減退著しく四肢が疲れ易い。胃部が膨張し、胃液を吐き、しゃっくり、舌は白滑で舌苔は淡い。


4) 金
 「金は喘咳寒熱を主とする。秋、燥、浮、毛ショク、涕、鼻、白、哭、商、悲、辛、皮、伏、腥、咳、毛を特徴とする。金経の流注を診る」。

(イ)肺実:発作性の咳をして上気する。同時に肩背痛、側胸痛あり。咳に粘稠性の痰を喀出し、時に膿性痰を出し、なま臭い悪臭。咽喉痛。鼻出血等。

(ロ)肺虚:慢性の気管支喘息、呼吸困難、慢性の咳嗽、痰は少なく白い。身体が冷たく、冷汗・盗汗をかく。両頬は紅色で色白、声がかすれて痩せる。舌は淡く薄い。

(ハ)大腸実:痔疾、腹膨あり、下歯痛、鼻出血、咽頭の乾燥感、面疔等顔面の急性下痢、裏急後重、時として便秘、膿血便。舌は黄色で乾燥。

(ニ)大腸虚:慢性下痢、肛門脱出、腹痛、腹鳴、腹部膨満あり。但し腹部は柔軟。四肢の厥冷、下歯痛、舌は白滑。苔は少ない。


5) 水
 「水は小腹痛み逆す。冬、寒、沈石、唾、耳、黒、呻、羽、恐、驚、骨髄、志、立、腐、慄、髪を特徴とす。水経の流注を診る」。

(イ)腎実:体全体の浮腫。盗汗をかき、顔色浅黒い。腹部膨満感あり。下痢。胸騒ぎがして恐れる。生殖器痛あり、足底部の燥感。

(ロ)腎虚:腰・背部・下肢が冷え、顔面頭部は逆にのぼせる。疲れ易く根気が続かず物音等に驚き易い。精力減退、インポテンツ、精液精子少なく記憶力低下。声がかすれ、舌下咽喉痛。顔面はどす黒く下眼瞼が黒紫色。

(ハ)膀胱炎:頭痛、後頭痛、項背痛、眼痛・流涙等眼疾患。癲癇、発熱、頻尿・排尿痛等急性膀胱炎症状。尿路結石、下腹部痛等。

(ニ)膀胱虚:腰痛、下肢後側痛、肩こり、後頭痛、背腰下肢の冷え。冷えからくる婦人の頻尿及び排尿痛等。


6) 心包経と三焦経
 「心包経は心に同伴するもので相火と言われ、心にほぼ同じと考えてよい」と言われているのでここでは略す。

(イ)三焦実:顔面頭部の煩熱、著しい発汗、耳鳴り、難聴、後頭痛、耳後の腫脹・痛み。胸部膨張感あり呼吸が荒く短い。腹部膨張、舌が乾き、大小便不通等。

(ロ)三焦虚:精神不安定で物事が手につかない。音声が出にくい。呼吸困難、呼吸微弱。腹部が冷え、腹痛、水様性下痢あり腹部圧迫されるのを好む。


メニエール症候群
周囲がぐるぐるまわるように感じる回転性のめまいに、耳鳴りや難聴、吐き気、冷や汗などをともなうのが、メニエール病です。
これらの症状のすべて、あるいは一部がみられる病気を総称して、メニエール症候群と呼ぶことがあります。
メニエール症候群の発作が起こったら、首の天柱、風池、完骨、耳の後ろの竅陰などを指圧することで、だいぶ症状をやわらげることができます。
また、これらのツボは、患者が自分で指圧できる位置にあります。落ち着いて、もむように押してみましょう。

半身不随患者の関節の運動
 半身不随患者は、手足のひきつりのためにまっすぐからだを伸ばして寝ることができません。しかも、ひきつったからといって同じ姿勢を長時間続けていると、ほかの病気を併発する原因にもなりかねません。患者が自分ひとりで自由に動くことができない場合は、介護者が数時間おきに患者のからだの向きや手足の位置を変える必要があります。
 患者の体位変換を介護者が正しくおこなうことが、患者の関節のひきつりや変形を防ぐことにもつながります。
  また、患者の手足の関節を動かす運動を介護者が手伝っておこなうと、からだの機能回復を早めるのに役立ちます。

①ひきつった手足をまっすぐにするには
あお向けに寝た患者の、まひしている側の肩を横に開き、腕とわきの間に筒状に丸めた毛布をはさんで固定する。まひしている側の足の裏には、ベッドや壁にもたせかけた板を当て、足が内側や外側に向かないよう、枕や毛布、座ぶとんなどで固定する。手にはタオルなどを握らせる。

②手の関節を動かす運動
介護者は、患者の手首を持って腕を伸ばす。患者が痛がらない程度にゆっくり少しずつ動かすのがコツ。最初はひじを押さえて前腕と上腕が直角になるまで動かし、次に押さえる場所を腕のつけ根に移し、腕をまっすぐに伸ばす。これをゆっくりとくり返す。ひきつってちぢまった手の指を1本ずつほぐして開いたり、手首をゆっくりとまわす運動を加えてもよい。

③足の関節を動かす運動
介護者は、患者の足首を持って足を曲げ伸ばす。患者が痛がらない程度にゆっくり少しずつ動かすのがコツ。最初は膝を押さえて徐々に足を曲げていき、ある程度まで曲げたら次に徐々に戻す。これを静かにくり返す。足首を押さえてつま先を外側に向けたり、足首をゆっくりとまわす運動を加えてもよい。

眠気をさましたいときは
 不眠症の治療をおこなって健康な眠りを取り戻すことは大切です。しかしその逆に、眠ってはいけない車の運転中や作業中などに、突然、眠気が襲ってきたらどうすればよいでしょうか。
 まずは運転や作業の手を休め、一人でできるツボ療法で気分をリフレッシュさせてみましょう。
 頭の百会、首の天柱、風池、目のまわりの睛明、瞳子リョウ、太陽などを指圧すると、とくに目をすっきりさせる効果があります。腰を軽くたたいたり、腎兪を親指で押したり、胸の鳩尾やみぞおちの巨闕を軽く圧迫するのも、自律神経の機能を整えて、眠けをとり、すっきりとさせます。

頭重をともなう場合には
 目が疲れてくると、首や肩がかたくこわばり、ひどい場合には、頭を重く感じて気分が悪くなってきます。とくに仕事中や乗り物の運転中にこうした症状が起こるとたまりません。そんなとき、症状をやわらげるための、自分でできる簡単なツボ療法を知っていると安心です。
 ポイントになるツボは頭の百会、首の天柱、風池などです。椅子に座って上半身の姿勢を正し、両手で自分の頭をかかえるようにして、もむように押し込みます。
 また、こめかみのマッサージも効果的です。仕事の休憩時間などに、さっそく試してみましょう。

肩こりをやわらげるマッサージ
 首から肩にかけてのこりがひどいときは、次のような手順でマッサージをおこなうとよいでしょう。まずはじめに治療者は、患者の首すじを、天柱の位置から大杼の方向へ向かって手のひらと指先を使ってさすります。
 次に大杼から肩先の方へ肩をつかむようにしてもんでいき、続いて肩甲骨の周囲を、手のひらでなでます。背骨に沿って腰のあたりまで丹念にマッサージを加えると、さらに効果的です。
 最後は、肩を軽くリズミカルにたたいたり、肩甲骨を手のひらで軽く押したりするとよいでしょう。たたくときは、げんこつをつくってはいけません。五本の指を軽く開き、手のひらの小指側のへりで、手首のスナップをきかせてたたくようにします。

①治療者は患者をうつぶせに寝かせ、首のつけ根から肩にかけてなでさする。それと同時に、ときおり肩をつかむようにして軽くもむ。
②うつぶせに寝た患者の肩甲骨の周囲をさすり、仕上げに肩甲骨の上に手のひらをついて、軽く圧迫する。この場合は、あまり治療者の重心がかかりすぎないように注意する。

つき指の治療
 発症後はすぐに患部を冷やすこと。そして、指をしっかり伸ばし、しばらくは固定しておくことが大切です。
 痛みと腫れがおさまってきたら、つき指した指をつまんで軽くまわしたり、伸ばしたまま前後に揺らしたり手の甲全体をもんだりするとよいでしょう。
 これらを入浴時などにゆっくりおこなうと、回復が早まります。

消化不良のときは
 胃弱をはじめ、消化器系の機能がおとろえてくると、食べたものがうまくからだに吸収されません。そのため、個人差はありますが、ひどくやせたり下痢を起こしたりしがちになります。
 こうした障害を防ぐには、規則正しい食生活と適度な運動が大切です。さらに、背中の胆兪、脾兪、胃兪、腹部の天枢、足の三里などへふだんから指圧やお灸を続けていると、消化器系の機能が高まり、消化不良を起こさない体質への改善に効果があらわれます。ストレスが原因で起こる消化不良の場合は、背中の身柱の指圧も加えます。

便秘の家庭療法
 適度な運動と規則正しい食生活はもちろん、ふだんからよくおなかや腰をもんでおくのもよい方法です。就寝前に自分であお向けに寝ておなかをもめば、翌朝、健康なお通じが期待できます。
 また、洋式便座を使用しているときには、排便しながらおなかをさすったり、腰の後ろ側を押したりしていると、楽に排便ができるようになります。
 便秘がちの人は、便意を感じたらなるべく我慢せず、トイレに行きましょう。毎日時間を決めて、習慣的にトイレに行きましょう。毎日時間を決めて、習慣的にトイレに腰かけるのも、お通じをよくするコツです。

フケ・かゆみを防ぐには
 頭皮の清潔を保つことが最も大切です。しかしどんなにシャンプーをこまめにしても、フケが出てしまうことはよくあります。こんなときは、抜け毛の予防にならって、頭皮刺激を根気よくおこなうと効果があります。
 頭皮にはたくさんのツボが集中しており、まんべんなく刺激をしていれば、体調もよくなります。刺激の方法は、ほどほどのかたさのブラシでポンポンと軽く、頭全体をたたくのが最も簡単で確実です。

母乳の出をよくするマッサージ
 母乳の出をよくするマッサージをおこなうときは、あらかじめ温めたタオルで乳房全体をおおうなどして10~15分ほど温湿布します。
 温湿布がすんだら患者をあお向けに寝かせ、乳房のまわりの各ツボをポイントにしてマッサージをおこないます。大まかには、乳房の上と下にそれぞれ半円を描くようにして手のひらでマッサージし、次に乳房の裾から乳頭に向かってなでもむようにします。それから乳頭を刺激し、背中のマッサージも加えます。所要時間は、温湿布の時間も含めて20~30分ぐらいが適当です。

①乳房のふくらみの裾の部分を手のひらでマッサージ。左右の手でそれぞれ数回、半円を描くようにおこなう。それがすんだら乳頭の方向へ向かって乳房のふくらみを集めるようになでる。
②乳頭の方向へ向かって乳房のふくらみを集めるようにしてなでるときは、同時にわきの下や乳房の外側などもていねいになでる。それがすんだら次は両手で軽く乳房のふくらみをもむ。
③親指と人差し指で乳頭をつまんでもみ、引っぱったり振動させたりして刺激を加える。乳頭がすんだら乳房全体を振動させる。
④乳房の治療がすんだら患者のからだを横向きにして背中を軽くさすってマッサージを終える。この①~④を、片方の乳房のマッサージ1回分の基本手順とし、これを両方におこなう。

健康づくりに大切な百会・長強・湧泉のツボ
 頭のてっぺんにある百会、お尻の尾骨先端にある長強、足の裏の湧泉・・・・・。この三つのツボは、お年寄りの健康づくりにはもちろん、あらゆる人間の健康づくりを進めるうえで、とくに大切なツボです。
 人間の生きるエネルギーである「気」のすべてが集まるといわれている百会。強く長生きするという文字があてはめられた長強。そして「気」の湧き出ずる泉といわれる湧泉。東洋医学では、気の流れの活性化が健康づくりの主体であると考えられていますが、この三つのツボは、まさに気の流れの要所を押さえたものです。
 この三つのツボをときどき押したりもんだりして異常がなければ、からだは丈夫で健康といえます。つまり、頭のてっぺんからお尻の先、足の先まで、気の循環がからだのすみずみに行き渡っていることを、このツボで確かめることができるのです。
 逆に、ふだんからこの三つのツボをよく刺激しておけば、気の循環が活調になって、健康維持に役立ちます。

ツボ豆知識

自然の理をふまえた東洋医学と「陰陽五行説」
 ツボ療法に代表される東洋医学は、素朴な自然の理をふまえたものです。その根本には、自然界が大きく陰と陽の現象に分けられることをはじめ、すべての現象が陰陽どちらかに属しているという考えがあります。

基本となる「陰陽五行説」の自然観
 また、東洋医学の自然観として「陰陽五行説」があります。これは、自然界は植物、熱、土壌、鉱物、液体という五つの物質で構成されるとして、それぞれを木、火、土、金、水というように表現するものです。自然界のすべてのものはそのいずれかによって構 成されているとみなしているのです。
 人間も、この自然界に属する小自然のひとつであり、これらの自然観がそっくりあてはまると考えられています。つまり、からだの臓器にもすべて陰と陽があり、木、火、土、金、水のいずれかにあてはまるというわけです。
 自然界は、いつもうららかな日ばかりが続くというものではありません。雨が降ったり嵐が吹き荒れることもあります。これと同じように、人間のからだにも好調、不調があり、栄枯盛衰があります。こうした人間の状態を、あくまでも自然界の現象のひとつの姿 としてとらえるのが東洋医学の基本的な考え方です。また、それが西洋医学とはまったく異なん独特の視点を生み出したともいえます。

ツボ名の由来もこの自然観から
 ツボ療法で用いられるいろいろな効果のあるツボは、こうした考え方をもとに発見され、命名されてきました。ツボ名に陰陽の文字が使われていたり、池や丘、泉、谷などといった。木、火、土、金、水の五行のどれかに意味の通じる文字が使われているのは 、このような東洋医学の基本的な考え方に由来しているのです。また、木、火、土、金、水それぞれに順に角、徴、宮、商、羽の文字をあてはめたものを五音、同じように青、赤、黄、白、黒の色をあてはめたものを五色といい、これらを用いたツボ名も多くみら れます。

五行説から生まれた「五臓六腑」
 東洋医学では、陰陽五行の自然観を人間のからだにあてはめています。これによると陰は静なるもの、すなわち女性、陽は動なるもの、すなわち男性というように考えられています。
 からだの外の部分についても、手のひらや足の裏など内側の静的な部分を陰、手の甲や足の甲など外側の動的な部分を陽といっています。からだの中の部分では、生命をいとなむ主体となる「臓」というものに木、火、土、金、水の五行をそれぞれあてはめています。すなわち、自然界の木は肝にあたり、火は心にあたり、土は脾にあたり、金は肺にあたり、水は腎にあたるというわけです。そしてこの肝、心、脾、肺、腎の臓をまとめて五臓と呼んでいるのです。

臓腑の組み合わせで生命を維持
 しかし、人間の生命活動は五臓だけでなく、これを助ける存在がそろってはじめて順調におこなわれます。その助ける存在となるのが「腑」というものです。いうなれば、臓と腑のコンビネーションが整って、生命が維持されるということになります。
 たとえば、肝の臓に対する対する腑は胆とされています。「肝胆相照らす」ということわざは、こうしたところから出たものです。
 そのほか、心の臓に対する腑は小腸、脾の臓に対する腑は胃、肺の臓に対する腑は大腸、腎の臓に対する腑は膀胱となっています。

現代医学の臓器名は東洋医学に由来
 肝の臓、脾の臓などというとすぐ、現代医学でいう肝臓、脾臓そのものと受け取られがちです。しかし、東洋医学でいう臓腑と現代医学でいう内臓は、名称に同じ文字を用いていても、すべて同じものとは限りません。
 つまり、オランダの「解体新書」が現代医学の書物として初めて日本に入ってきたとき、これを翻訳した杉田玄白らが、ゼロから言葉を生み出すことはできないので、当時、日本で使われていた東洋医学の用事用語を使用したために、臓器と内臓には同じ文 字が用いられているというわけです。

「五臓五腑」と「六臓六腑」
 人間の生命維持にとって大切なからだのしくみを五行になぞらえたものを五臓五腑といいます。
 ところが、実はこの五つの臓腑のほかにも、東洋医学ではもうひとつ大切な組み合わせがあるとしています。

五行にあてはめないもうひとつの臓腑
 それは、心包という臓と、これに対する三焦という腑の組み合わせです。五臓五腑のひとつに心の臓がありますが、これは人間のからだの中でも一生、一定のリズムで動き続ける大切なものなので、これをしっかり包んで保護している袋があるはずだ、という考え方から名付けられたものが心包です。
 一方、三焦のほうは、三つの熱源という意味があります。これは、人間のからだは生命があるかぎり、外界がどんなに寒かろうが熱かろうがいつも一定のあたたかさがあるから、熱をつくるもとがあるのだろうと考えられて出てきたものです。
 これを五臓五腑にプラスして六臓六腑というわけです。

東洋医学の基本は六臓六腑の考え方
 この六臓六腑の考え方は、現代医学、西洋医学の体系とまったく異なるものです。つまり、東洋医学の体系は、ひとつひとつの臓器が解剖学的に実在するというよりも、「自然界における人間が、生命活動をいとなんでいくために必要な、複雑かつ微妙な機能のあらわれとして臓器がある」という考えのもとにあるのです。
 そして、人間のからだはすべて、この六臓六腑でコントロールされ、臓腑のどれかひとつでも機能がくずれると、からだの調子が悪くなって、いろいろな症状が起きてくると考えるわけです。

六臓六腑に対する「経絡」
 東洋医学では、「六臓六腑の機能が正常に保たれ、それぞれの調和がとれていることが人間の健康につながると考えています。反対に六臓六腑の機能と調和が乱れると、病気になりやすいというわけです。
 したがって、六臓六腑には、常にその機能を正常に保ち続けるためのエネルギーが循環していると考えられています。つまり、人間の六臓六腑へ通じるからだじゅうのあらゆる場所に、たくさんのエネルギーがめぐっていると考えているのです。
 そしてこのエネルギーの流れる道すじは、「経絡」と呼ばれています。経絡の「経」は縦の流れ、経脈を意味し、「絡」は横の流れ、絡脈を意味するもので、文字どおり頭のてっぺんからつま先まで、からだじゅうにエネルギーの流れがあることを示しています。
 さらに経絡の種類は六臓六腑の十二の臓腑の機能に関連してそれぞれに対応しており、臓腑の数と同じ十二の経絡があると定められています。すなわち、肺経、大腸経、胃経、脾経、心経、小腸経、膀胱経、腎経、心包経、三焦経、胆経、肝経の「正経十二経」といわれるものがそれです。それらは順番にそれぞれの臓腑を経たうえで、最後の肝の臓をめぐる肝経から肺の臓をめぐる肺経へと再び戻ります。こうして全体の流れがひとつに」まとまってつながるというわけです。また、六臓の経絡を陰、六腑の経絡を陽と区別しています。
 東洋医学で用いるからだのツボは、エネルギーの道すじにあり、それぞれの臓腑の機能に対応する経絡に沿って並んでいます。足のツボなのにおなかの症状に効いたり、手のツボなのに頭の症状に効く、という独特の効果は、臓腑に対応してからだじゅうをめぐる経絡と深い関係があるのです。

「正経十二経」と「奇経八脈」
 六臓六腑にはそれぞれの機能に対応した十二のエネルギーの道すじがあります。これは「経絡」と呼ばれ、東洋医学のツボ療法の考え方をすすめるうえで、大切なものとされています。
 からだじゅうの経絡をエネルギーが順調にめぐっていれば、人間のからだは健康に保たれることになります。しかし、そのエネルギーに過不足があると、健康は保たれにくくなってしまうと考えられているのです。
 そこで登場するのが、エネルギーの過不足を助け補う役割をもつもうひとつの道すじというわけです。これは、任脈、督脈、陽キョウ脈、陰キョウ脈、陽維脈、陰維脈、帯脈、、衝脈、の八つで、「正経十二経」に対し、「奇経八脈」といわれています。
 これらのうち任脈は、からだの全面中央、あごから腹部にかけての中心線を縦に走っています。また、督脈は、からだの背面中央、背骨の上を走っています。この任脈と督脈は、エネルギーの流れが過不足ないように循環器系の機能を調節しているものとして、とくに重要視されています。

頭首ツボ
①百会  ひゃくえ
 「百」という数字は、もろもろの・数が多い・たくさんのという意味をあらわします。すなわち、からだの働きに関係するもろもろの道すじが、一堂に集まり会する場所が、頭のてっぺんにある百会のツボというわけです。
 百会のツボは応用範囲が広く、多くの症状に効果があるのは、そうしたツボ名の由来にも関係しています。

[治療の効果]
 たいへん応用範囲が広く、指圧やお灸、鍼治療などによく用いられます。たとえば、血圧の変化や異常にによるめまい・立ちくらみのほか、乗り物酔い、二日酔いなどといった全身症状の治療に効果があります。
 また、疲れ目、鼻づまり、さまざまな病気が原因で起こる頭痛・頭重、耳鳴り、寝違えや首・肩のこり、脱毛症の予防、痔などにも効果があります。
 頭のてっぺんからまっすぐからだの芯に抜けるように指圧するのが治療のコツです。これによって、精神的なものが影響して起こる症状も含め、さまざまな病気が原因で起こる頭のぼんやりした感じがスッキリしてきます。


②翳風  えいふう
 「翳」は、かざす・しりぞく・目がかすむ・かくす・かげなどの意味があります。
 風は中風をあらわし、中風からくる目や耳の疾患によく効くツボと推測されます。

[治療の効果]
 顔のまひ、けいれん、頬の腫れや歯痛に効果があります。これらが原因で起こる首・肩のこりや痛みもやわらげてくれます。
 そのほか、難聴や耳の痛み、歯痛、めまい、乗り物酔いにも効果があります。
 また翳風は、三叉神経痛の治療の特効ツボでもあります。
 耳のまわりには、この翳風をはじめ、聴宮、角孫、竅陰、耳門など、いくつかのツボが集まっています。
 これらのツボは難聴、耳鳴りの特効ツボです。中国では、耳の聞こえない子どもたちがこれらのツボに鍼治療をおこなうことで、聴力を回復したという報告があります。


③角孫  かくそん
 角孫の「角」は、額の「かど」をあらわしています。「孫」は、まご・子の子、から「つなぐ」という意味があります。角孫というツボ名は、額の角で、いろいろなからだの働きと関係のあるツボの並んだ線のいくつかがつながっているというところから由来しています。
[治療の効果]
 目の病気、歯の病気、耳の病気に広く効果があるツボです。また頭重・頭痛がするとき、めまい、立ちくらみのときにこのツボを押すと頭がすっきりしてきます。
 目の疾患は結膜炎など、耳の疾患は耳鳴り、耳の痛み、中耳炎などにとくに効果があります。歯では虫歯、歯槽膿漏の症状をやわらげます。


④曲鬢  きょくびん
 「曲」には、まがる・かがむ・屈折する・すみ・かたはしなどの意味があり、額の角をあらわしています。「鬢」は、横毛のことを指しています。
 つまり、額の角で髪の毛のきわにあるという意味で、ツボのある位置が名称になっています。

[治療の効果]
 頭の中の痛み、とりわけ血管性の頭痛・頭重に効果があります。
 頭の両側から下あごにかけての腫れや痛みもやわらげます。三叉神経痛、目の疲れを取り除きたいときによいツボです。


⑤頷厭  がんえん
 「頷」は、おとがい・下あごのことを指しています。「厭」は、疲れる・憎む・おす・しずむなどの意味があります。
 下あごを押し上げ、歯を噛むようにすると筋肉が動くところ、すなわちこめかみのことを指しているのです。
 漢字のもつ意味が、そのままツボ名になっているというわけです。

[治療の効果]
 目の疾患やめまい、片頭痛などにとても効果があります。とくに後頭部の痛みをやわらげます。
 また、耳鳴りや子どものひきつけなどの治療にも用いられるほか、顔面のまひやこわばり、三叉神経痛、手・腕の痛みにもよく効きます。


⑥完骨  かんこつ
 完骨の「完」は、家のまわりにめぐる垣根をあらわし、垣根に欠けたところがないことから、まっとうするという意味をあらわします。そこから、「完骨とは耳後の高骨を謂う」とされるように、耳の後ろの垣根のような骨(乳様突起)を指すツボ名だということがわか ります。

[治療の効果]
 完骨はさまざまな症状に広く効果がありますが、とくに片頭痛、めまい、脳充血、顔面の神経まひ、不眠症などの症状によく効きます。
 立ちくらみをともなう頭痛・頭重の治療のほかに、頭や顔のむくみ、歯肉炎、耳の疾患の治療にも使う使うツボです。
 口のゆがみ、首やうなじの痛み、動悸や息切れ、のどがつかえて痛いといった症状がみられるときに、この完骨を刺激するとたいへん楽になります。


⑦竅陰  きょういん
 「竅」は骨にあいている穴のことで、「陰」は少陰腎経という東洋医学の用語を指しています。つまり、陰をうかがう穴というのが竅陰の意味です。
 竅陰と呼ばれるツボは、足にもあります。親指からかぞえて四番目の指の端が足の竅陰です。

[治療の効果]
 頭・目の痛み全般によく効きます。頭の痛みからくるめまい、立ちくらみが起こったときは、このツボを軽く押さえると症状がやわらぎます。
 そのほかにも、こむら返り、うなじの痛みからくる耳の疾患、耳鳴り、舌からの出血にも効果があります。
 耳の疾患への治療効果は昔から知られており、中国では耳の不自由な子どもの治療に竅陰が使われていました。
 また、このツボは、疲れや血圧の症状など中年以降の人に特有の全身症状にも効果があります。
 気分がすぐれない、疲れやすい、耳が聞こえにくいといったときに、このツボを指圧すると症状がやわらぎます。


⑧耳門  じもん
 耳の門と書くとおり、東洋医学では、耳門は耳の病気の原因となる邪気が出入りする門にあたるところです。耳の疾患全般によく効くということをこのツボ名はあらわしています。

[治療の効果]
 耳の疾患全般にすぐれた効果があります。たとえば、耳鳴り、難聴、中耳炎、外耳炎などによく効きます。
 そのほか、顔面の神経まひ、三叉神経痛などの治療にも用いられます。
 また、歯の疾患(痛み)にも効きます。


⑨聴宮  ちょうきゅう
 「聴」は、文字どおり、きく・しっかりきくという意味です。「宮」は、みや・御家で、生活の中心となる家の尊称です。
 つまり、ものをしっかりと聞く場所の中心部であるというのがツボ名の由来です。

[治療の効果]
 耳鳴り、難聴の特効ツボです。とくに、蝉が鳴くようなジーッという音や、キーンという金属音のような耳鳴りをおさえるのに効果があります。
 そのほか、耳の病気全般、顔の筋肉の病気からくる頭痛・頭重、めまい、視力の減退、記憶力の減退にもすぐれた効果があります。
 耳珠の前には聴宮のほかに耳門というツボがありますが、この二つのツボは耳の疾患の治療に欠かせない大切なツボです。


⑩頭維 ずい
 「頭」は、あたま・かしらのことで、「維」は、つなぐから転じて、かど・すみなどの意味です。
 髪の毛の生えぎわ、頭の角にあるツボということをあらわしている名前です。

[治療の効果]
 頭維の周辺には三叉神経が通っています。そのため、このツボは三叉神経痛や片頭痛に非常に効果があります。
 また、目の病気や疲れ、視力減退、脳充血、のぼせなどの症状の治療にも用いられます。


⑪前頂 ぜんちょう
 「頂」は頭のてっぺん、「前」は百会のまえを指しています。これは、ツボの場所がそのままツボ名になっているわけです。後頭部にある後頂というツボに対して「前」という意味でもあります。

[治療の効果]
 かぜによる頭痛、めまい、顔の腫れによく効きます。
 前頭部が重苦しく感じられるときは、左右の中指と人差し指をそろえて前頂に置き、かなり力を入れて頭の芯に圧力がかかるように指圧します。こうすると頭の重苦しい感じがとれ、気分がすっきりしてきます。
 鼻がつまって頭が重苦しく感じるときなどにも用いられることがあります。
 また、血圧が高いときのさまざまな症状、たとえば、顔面の充血、腫れ、からだのむくみなどにも効果があります。


⑫天窓  てんそう
 東洋医学では人体を天・地・人と三つの部分に分けて区別することがあります。
 この分け方に基づくと、天窓の「天」は鎖骨より上を指します。「窓」はまどで、この窓から天の部分の病気をのぞきうかがうことができるという意味になります。

[治療の効果]
 一般的には耳の病気によく効くツボです。中耳炎、耳下腺炎、扁桃炎の腫れ、頚肩腕症候群など、さまざまな症状にも用いられます。
 さらに、頬のこわばりや腫れ、のどの痛み、耳鳴り、難聴、肩の痛みなどが首の後ろ側にひびくようなときにも効果があります。
 ただし、天窓を指圧するときは、急に強く刺激を与えるのではなくて、人差し指か中指でゆっくりと、力の入れ過ぎに注意しながら押すようにします。


⑬天容  てんよう
 「天」は天窓のところで説明したとおり、鎖骨より上の部分のことです。「容」は、ものを入れる・つつむ・盛る・用いるという意味があります。
 したがって、天容とは、耳やのど、頭や歯など、鎖骨より上の部分の病気の痛みを取り除くツボ、また、それらの部分の全ての病気をこの中に包み込んでしまうツボ、という意味になります。

[治療の効果]
 頸部の病気の治療によく用いられます。たとえば、うなじがこって首がまわらない、寝違えて首が痛い、首がこわばる、首の痛みによってしゃべりにくい、というような場合に効果があります。
 のどが痛いときは、自分で耳の下あたりのこのツボの周辺を軽くマッサージすると、たいへん楽になります。
 さらに、胸が痛い、胸が押しつぶされるような感じで息がしにくい、歯が痛い、耳鳴りがする、耳が聞こえにくいなどの症状にも、効果的です。


⑭承霊  しょうれい
 「霊」は神霊の宿るところ、心の臓のあるところで、神廟とされています。承霊というツボ名は神霊を受けるという意味で、心臓の疾患に関係して起こる循環器系の症状や、それにともなう症状を処置するということを示しています。

[治療の効果]
 脳や脊髄の炎症から起こる発熱をはじめ、まひ、けいれん、めまい、頭痛に効果があります。
 ほかにも、かぜによる寒け、頭痛、鼻血や鼻づまり、喘息の治療にも用いられます。抜け毛防止のために頭皮を刺激する際にも、このツボの周辺は大切なポイントになっています。


⑮曲差  きょくさ
 「曲」は、まげる・まがる・ゆがむ・よこしまという意味から転じて、かたはし・角すみを表しています。一方、「差」という字は、たがい・ちがうなどの意味があります。
 曲差というツボ名は、平坦な額から前髪きわに曲がる段差のあるところ、前髪きわにあるツボという場所をあらわしていることになります。
[治療の効果] 
 鼻の病気によく効きます。たとえば、慢性鼻炎やアレルギー性鼻炎、蓄膿症による鼻づまり・鼻閉に効果があります。鼻血や鼻たけの治療にもこのツボを使います。
 とくに鼻づまりの治療には曲差のほかに天柱、風池、迎香、通天などを同時に治療に用いると、いっそう効果があります。
 そのほかにも視力障害や眼底出血、頭痛、高血圧症にも効果があります。


⑯通天  つうてん
 通天の「通は、とおる・とどく、転じて開く・貫く・過ぎるという意味になります。
 「天」は鎖骨より上の部分をあらわす天部の頂上・頂点・頭のことです。すなわち天部のすべてに通じる穴であるというのが通天のツボ名の由来です。
 経脈はこの通天から頭のてっぺんに通じ、脳の中を循環するといわれており、通天というツボ名はその働きをぴったりあらわしていることになります。

[治療の効果]
 たいへん応用範囲の広いツボで、さまざまな治療効果があります。
 とくに、頸部にこぶ状のできものができたとき、鼻の中にできものができたとき、鼻汁による鼻閉のときは、このツボで治療するとたいへん効果が期待できます。
 そのほか頭痛・頭重の治療にもよく用いられます。なかでも片頭痛にはとくによく効き、さらには後頭部からうなじにかけてのこわばりをほぐす特効ツボとしても活用されています。
 また、抜け毛や円形脱毛症、脳卒中が原因で起こる顔面のまひの治療にも用いられます。


⑰しん会  しんえ
 [治療の効果]
 脳貧血によるめまい、立ちくらみ、のぼせ、またはのぼせによる鼻血などの治療に用いて効果があります。
 また、顔の腫れやむくみ、頭痛・頭重のほか、鼻づまりなど、頭部や顔面のさまざまな症状をやわらげます。


⑱神庭  しんてい
 神庭の「神」は、精神の神をあらわしています。「庭」は文字どおり、にわの意味があります。
 したがって、額から髪の毛に入る庭先にあたるという位置を示し、精神や情緒を安定させるツボという意味をもっています。

[治療の効果]
 慢性鼻炎、蓄膿症などの鼻の疾患をはじめ、頭痛、めまい、てんかんに効果があります。
 また、眉の上が痛んで上を見ることができないとき、意識を失ったときなどにも、このツボを刺激するとよく効きます。


⑲廉泉 れんせん
 「廉」という字は、いさぎよし・角・側辺・すみという意味があります。
 「泉」はいずみ・水源のことをあらわします。
 つまり廉泉は、下あごと首の間の角すみにあって、泉のように気のわきたつところという意味をあらわしています。
[治療の効果]
 舌の病気によく効くツボです。舌炎、舌の知覚異常・運動まひ、舌がもつれて話しにくい、舌の根元が急に収縮して言葉が出ない、舌が丸まってよだれが流れるなどの症状に効果があります。
 また、喉頭炎、扁桃炎、気管支炎などによるせきやたんをしずめるのにも使用されます。
 そのほか、ヒステリー性失語症、しわがれ声、唾液分泌過多にも効果があります。

⑳気舎  きしゃ
 気舎の「気」は邪気をあらわしています。「舎」は家・やどるの意味です。したがって、邪気がここにとどこおり、集まるという意味になります。
 邪気とは東洋医学で病気の原因になるものをあらわします。なかでもこの気舎に集まるという邪気は、胃の病気に関するものなので、気舎はの治療によく用いられています。

[治療の効果]
 のどの痛み、首のできものや腫れ、肩から首にかけてのこり、うなじのこりなどによく効きます。
 また、気舎は胃腸の機能と関係の深いリンパ節に近いため、胃腸の調子が悪いときに起こるさまざまな症状にたいへん効果があります。
 さらに気舎のあるところには、迷走神経が通っています。迷走神経は脳から首、気舎を通って胸、腹部へと続いており、気舎への刺激が迷走神経を刺激し、胃の調子をよくしてくれるのです。
 胃のもたれや不快感、吐き気、嘔吐、胸やけ、ゲップなどの症状があるときにこのツボを刺激すると、迷走神経が刺激され、症状がおさまってきます。
 慢性的な胃弱の治療、しゃっくりにも使用されます。


21人迎  じんげい
 「人」の字はひと、「迎」は、むかえる・むかえ会うという意味です。
 人迎はからだの中に流れるエネルギーの道すじのいくつかが、むかえ会って交わるところにあります。

[治療の効果]
 ぜんそく、慢性関節リウマチ、高血圧症、痛風、黄疸、気管支の慢性的な症状に効果があります。
 また、神経性心悸亢進症、狭心症、胃けいれん、胆石症による痛み、めまい、のぼせ、結節紅斑などの病気の治療にもよく使用されます。
 さらに人迎は、女性に多い甲状腺の機能の高まりから起こる橋本病や、血圧を下げるのにも効果があります。


22天鼎  てんてい
 「天」は人間のからだの上の方、鎖骨より上の部分をあらわし、、「鼎」は三つの脚をもった香をたく器のことをあらわします。
 天鼎は胸鎖乳突筋と鎖骨とでつくられている三角形のくぼみの中心にあるツボです。
 このツボ名は、天の生気がからだの中に入ってくる三角形の中心にあるツボということをあらわしています。
 このツボがある胸鎖乳突筋の内側には、心臓と頭と結ぶ血管や神経が多数通っており、人間のからだの中でもとくに大切な部分です。

[治療の効果]
 扁桃炎によるのどの痛みや腫れ、のどのふさがり、声がれ、息苦しさなどをやわらげるのに効果があります。歯痛、手のしびれと痛みの治療にも使われます。
 また、このツボは血液の循環を調節する場所として知られており、高血圧症で血液の循環に異常があるとき、ツボの周辺にしこりやこりが出ます。このしこりやこりを取り除くことが高血圧症の治療に効果をもたらします。ただし、けっして強くは押さないように注意しましょう。


23水突  すいとつ
 「水」はみず、経水を意味します。東洋医学では、この部分に経水がうっ滞すると、ぜんそく、気管支炎を起こし、せきやたんの症状があらわれるとしています。「突」は突く・突き出るの意味で、ここでは喉頭隆起を指しています。
 つまり、水突というツボ名は、喉頭隆起のかたわらにあり、気管支炎やぜんそくなどの症状に効果があるツボという意味になります。

[治療の効果]
 せきが出てのぼせる、のどが腫れる、息苦しいなどの症状によく効くツボとして知られています。
 また、のどの調子が悪くて声がガラガラにかれてしまったときや、気管支炎・咽頭炎・喉頭炎・ぜんそくによるのどの腫れと痛みにも効果があります。


24天突  てんとつ
 「天」は鎖骨から上の天部を指します。「突」はつく・穴の中からにわかに出る・にわか・あらわしいずるという意味です。
 したがって天突は、それまで体内を走っていたからだの機能に関係のあるツボの道すじが頸部のくぼみの中に突然現れる場所ということをあらわしています。
[治療の効果] 
 のどの痛み・しびれ・声がれ、食べのもがのどを通らない、ものが飲み込みにくい、声が出ないほど息苦しいぜんそくなどの症状に効果があります。
 天突は一般に気管と咽喉の病気に効果があるツボとされおり、さまざまな病気が原因で起こるせきやたんによく効きます。
 のどが渇いていがらっぽい、ヒリヒリ痛む、たんがからむなどの症状の特効ツボでもあります。
 軽い症状であれば鍼などを使わなくても、自分で人差し指をカギ状に曲げ、このツボを下に向けてぐっと押すだけで楽になります。
 天突を押すと、のどの奥からあごの下にかけてツーンとひびくような刺激が走ります。ただし、のどのツボは押しすぎて息苦しくなることがよう、力の入れすぎに注意します。
 そのほか、しゃっくりをしずめる場合にも使用されます。


25天柱  てんちゅう
 「天」は鎖骨から上の部分、頭部を意味します。「柱」とは、大黒柱という言葉にみるとおり、最も大切なところを意味しています。
 したがって天柱というツボ名は、頭部の重要なツボであることをあらわしています。

[治療の効果]
 頭部のあらゆる疾患はもちろん、全身状態を回復するのに役立つツボです。
 中年以降の人の血圧安定のために、たいへん効果があります。
 急性の熱で汗が出ないときや、めまい、頭痛、目の疲れ、首の後ろや肩がこるときなどにここを刺激すると、治りが早まります。
 また、だるい、疲れやすい、のぼせる、冷える、低血圧症、高血圧症、二日酔い、乗り物酔いなどの全身症状にも、すぐれた効果があります。
 さらに、慢性鼻炎・蓄膿症による鼻づまり、鼻血、耳鳴り、むち打ち症や寝違え、むくみ、腎臓病の治療に使用されるなど、たいへん応用範囲の広いツボです。
 首は、頭とからだを結ぶ血管や神経の通りみちであるため、その部分にある天柱を刺激すると、心身のさまざまな症状をやわらげるのに役立つというわけです。すなわち、このツボを押したりもんだりすることによって頭部の血行が促進され、頭のぼんやりした不快感がすっきりし、快方に向かうのです。


26風池  ふうち
 風池は「風邪入りて邪気溜滞する」といわれるツボです。
 東洋医学でいう邪気とは病気の原因のことで、寒・暑・風・湿・熱・燥・火の七つがあります。その中の風の邪気、すなわち「風邪」が人体の中に入って、池のようにたまるところがこの風池というわけです。
 このツボは中風によく効くツボでもあり、風府、風門と並んで、かぜの特効ツボでもあります。

[治療の効果]
 かぜをひいて頭が痛い、後ろ首がこる、からだの節ぶしが痛い、熱っぽい、咳が出る、だるいなどのさまざまなかぜの症状に対する特効ツボです。ほとんどのかぜは風池を刺激すると治るといわれています。
 ほかにも、めまい、たちくらみ、二日酔い、乗り物酔いなどの全身症状や目の疲れにもすぐれた効果があります。
 さらに円形脱毛症、月経困難症、月経痛、寝違えの治療にも使われるツボです。
 頭や胸のいろいろな症状が出ているときにも広く活用されています。


27風府  ふうふ
 風府の「風」は、東洋医学で病気の原因といわれている邪気のひとつです。
「府」は、くら・みやこ・あつまるところの意味があり、風の邪気すなわち風邪がここに集まってくるということをあらわしています。
 風府には舌本、鬼枕、鬼穴の別名があります。鬼の字がつくツボはからだの機能が高ぶりすぎたときに、これを調整します。

[治療の効果]
 頭痛・頭重、全身のだるさ、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、発熱、寒けなど、かぜによって起こるさまざまな症状をやわらげる特効ツボです。
 東洋医学では、かぜの原因である風の邪気はまず背中の風門から入り、首の風池に集まるといわれています。それがさらに進行すると風府に集まり、最後には脳の中に入って脳の髄を侵します。髄を病むと、全身の痛みとなるといわれています。
 このため、風府でしっかりかぜを食い止めないと大事に至ってしまうというわけです。
 そのほか、鼻血や蓄膿症、鼻炎などの鼻疾患、頭痛、脳出血、高血圧症にも有効なツボです。


28大椎  だいつい
 大椎とは大きな椎骨の意味で、頸椎の七番目にある骨を指します。「大」には、たっとい・偉い・たいせつ・重要などの意味があります。
 まとめると、大椎は椎骨の重要なところにあるツボということになります。

[治療の効果]
 嘔吐、鼻血、首・肩のこりに効果があります。とくに、首から肩にかけてこわばるような感じがひどいときには、大椎を中心とした指圧やマッサージが、たいへん効果的です。
 また、片頭痛、湿疹、じんま疹、にきび、吹き出もの、痔、鼻かぜ、胃腸障害、ぜんそくなどにも効くツボです。抜け毛や円形脱毛症、子どものぜんそく・虚弱体質の治療にも用います。


29後頂  ごちょう
 「後」はうしろ、「頂」はいただき・頂上のことを意味しています。
 つまり、頭頂部の後ろという場所をあらわしているのです。前頂というツボに対して「後」という意味でもあります。
 別名、交衝ともいいます。

[治療の効果]
 一般に、頭部全体に関するいろいろな症状に効果があるツボです。頭頂部の痛み・こわばり、寒け、めまいなどの治療によく用いられています。


30天よう  てんよう
 「天」は鎖骨から上の部分を示す言葉である天部の天。「よう」は窓という意味です。天ようというツボ名は天の窓という意味になります。
 したがって天ようは頭部から頸部にかけて、そこに起こった様々な疾患に対して、効果をあげるツボということになります。

[治療の効果]
 頭痛・頭重、顔の腫れや痛み、首がこわばってまわらない、歯が痛い、目が痛いなどの症状があるときに、効果を発揮します。
 さらに、突発性の難聴、視力の衰え、夢をよく見て疲れる、よく転倒する、顔色が悪く、青ざめていたり、くすんでいるといった症状にも効果があります。
 このツボは耳の乳様突起に胸鎖乳突筋が付着する部分のすぐ後ろ側にあるため、首の痛みにもとくに効果があり、斜頸や首の後ろのこりにもよく効きます。


顔のツボ

31太陽  たいよう
 中国で開発された新しいツボです。
 目の症状に効果があり、空に輝く太陽と同じ名のとおり、目を明るくすっきりさせます。

[治療の効果] 
 疲れ目による目の痛み、充血など、目のさまざまな症状をやわらげるのに、効果のあるツボです。なかでも目の疲れが原因で、目の奥がジンジン痛むとき、物がかすんで見えるとき、まぶしく感じるとき、目がショボショボするときなどによく効きます。
 このツボを、指先で小さな輪を描くようなつもりでもみ押し続けます。すると、文字どおり太陽が照るように、目がすっきりして、気分も晴ればれとしてきます。指圧のコツは、始めは軽く押して徐々に力を入れ、最後にしっかりと圧をかけることです。


32迎香  げいこう
 「迎」はむかえる・むかえ会うことを意味し、「香」は、におい・かおり・かんばしい、という意味をもっています。 つまり、これらの文字があらわすとおり、迎香というツボは、においをかぐ鼻に関する症状の特効ツボとして、治療に用いられています。
 また、「香」の字はここでは中国の古典に基づき、胃も意味します。このことから迎香は、東洋医学でいう「胃の腑」の機能に関係する胃経という経絡に属することがわかります。

[治療の効果]
 鼻のさまざまな症状をやわらげる効果があります。たとえば、鼻水、鼻づまり、鼻血によく効き、鼻づまりがひどくなって息苦しく、においがわからなくなってしまったときなどに、効果があります。
 この場合、さゆうのツボを両手の指で同時に、やや強めに押すのがコツです。これによって、鼻の通りがよくなり、嗅覚が回復します。
 したがって、病名でいうと慢性鼻炎、急性鼻炎、蓄膿症などに効果があるというわけです。
 そのほか、顔面の神経に関する症状にも効果があり、小鼻の脇がピクピクけいれんしたときや、顔の神経痛で痛みがひどい場合などの治療にも、よく用いられます。


33巨りょう  こりょう
 「巨」は、巨分をあらわします。巨分とは、鼻唇溝(鼻の両側から口の角までの溝)のことです。
 一方、「りょう」は、骨の角すみ・馬の背骨・凹でこ・盛り上がり・・飛び出る、という意味で、ここでは巨分の角すみにあるへこんだ部分を指しています。
 二つの漢字の意味を総合すると、巨りょうというツボ名は、巨分の角すみにあるへこんだ部分の重要なところ、という意味になります。

[治療の効果]
 鼻づまりや鼻水、鼻血に効果があります。鼻炎、目の疾患、上歯痛、歯肉炎、蓄膿症、三叉神経痛、顔のまひ・けいれんなどの治療によく使用されます。


34顴りょう  かんりょう
 「顴」は、頬骨のことで、「りょう」は角すみをあらわします。
 つまり、顴りょうとは、頬骨の隆起の角すみという意味になり、場所をあらわしているツボ名ということになります。

[治療の効果]
 上歯の痛み、頬の腫れ、目の黄ばみ、眼精疲労などに効果があります。
 ここには三叉神経の第二枝や顔面神経頬筋枝などが通っているので、顔面の神経まひ、顔面のけいれんやひきつり、三叉神経痛、急性鼻炎にも使用されます。
 また、顴りょうは美容にも効果があるツボとして知られています。
 顔の美容で最も気になるのは、頬に出る横じわ、目じりの小じわなどです。顔だけにこのような気になるしわがあらわれるのは、からだの中で顔の皮膚だけが、筋肉の組織とからみ合い、一体となっているからです。
 そのため、筋肉のゆるみがすぐ皮膚のゆるみとなって、しわができてしまうというわけです。
 したがって、日ごろからこのツボを中心に指先で軽くマッサージしていると、張りのある皮膚を保つことができます。


35 睛明  せいめい
 睛明の「睛」は、ひとみ・目玉、「明」はあきらか・照らすという意味です。
 瞳の影がさわやかに消え去って、非常にはっきりと物が見えるようになるという効果をあらわしたツボ名です。
[治療の効果]
 目にあらわれるさまざまな症状に効果があります。
 本などを長時間読んで目が疲れたときに、人差し指で睛明をもむようにすると、すっきりして疲れがとれます。かすみ目や目の充血もこのツボで治療することができます。
 顔面のけいれんにも効果があり、とくに目のまわりやまぶたがピクピクけいれんしたときに指圧すると、たいへんよく効きます。
 また、鼻の通りが悪いときにも、鼻すじに沿ったいくつかのツボとともに治療に用いられます。
 そのほか、子どものひきつけ、疳の虫にも効果があります。ちょっとしたことでむずかったり、泣きやまないときなどは睛明を軽く押してやると機嫌がなおります。ただし、その場合には、誤って眼球を圧迫することのないように、注意しましょう。


36 瞳子りょう  どうしりょう
 「瞳子」は目・ひとみをあらわします。「りょう」はかど・すみを示しています。
 したがって、瞳子りょうとは目のかたわらの骨が盛り上がっているところのくぼみにあるツボという意味になります。
 また、瞳の角すみにあるツボということもあわらしています。別名、前関ともいいます。

[治療の効果]
 頭痛などの頭部疾患と、目の疲れ、目のかゆみ、充血などの目の疾患にたいへんよく効きます。
 また、めじりのしわをとるのにも効果的で、美容にも欠かせないツボです。


37陽白  ようはく
 「陽」は高く明らかなるという意味で、ひなた・あたたか・清しといった意味です。
 「白」は眼輪筋腱部の白色部にあるということを示しています。
 つまり、陽白というツボ名は、目を明らかにするという意味をあらわしています。

[治療の効果] 
 主に頭や顔、目の症状に効果があります。とくに、目の上の痛み、顔の痛み、三叉神経痛のひどい痛みをやわらげるのに効果的です。
 そのほか、まぶしい、涙がしきりに出る、角膜のにごり、トラコーマなどの症状もこのツボで治療します。
 また、夜盲症、めまい、寒さによるふるえなどにも効果があります。


38承漿  しょうしょう
 「承」は下から上をうけるの意味で、うく・うけたまわることをあらわしています。
 また、「漿」は、しろみず・しる・酢などの意味があり、ここでは口から出る液、つまり唾液のことを指しています。
 したがって承漿というツボ名は、唾液を下から受ける位置という、ツボのある場所をあらわしています。

[治療の効果]
 口や目がゆがんで斜めになってしまった場合、顔が腫れてしまった場合、口や歯が痛んで話をすることができない場合などに効果があります。
 一般には顔面浮腫、三叉神経痛、顔面の神経まひ・こわばりなどの顔の疾患や、下歯の痛みなどの歯の症状、言語不能の中風患者の治療によく用いられます。


39四白  しはく
 「四」は四方・周囲の意です。「白」はしろ・明らかの意味があります。
 白は空白の白から転じてくぼんでいるという意味にもとれ、周囲から見てたいへんくぼんでいて、その部分を押すと圧痛がある、という意味にもなります。
 また、別の説では、四方が明らかになるという意味にも解釈されるため、目の病気によく効くことをあらわしたツボ名であるといわれています。

[治療の効果]
 顔面の神経がまひして目が閉じない、頬のあたりに痛みがあるなどの症状に効果があります。
 頭痛やめまい、疲れ目によく効き、三叉神経痛の治療にも用いられます。
 顔面にけいれんが起きたときには、このツボを指圧しただけで、一時的にけいれんを止めることができます。


40地倉  ちそう
 「地」は天地の地、すなわち土を意味し、ここでは大地の恵みである穀物をあらわしています。「倉」はくら・穀物をおさめる方形の建物のことです。また、東洋医学では、胃の腑のことを大倉ともいいます。
 したがって、地倉は元気の源となる穀物(食べ物)が大倉(胃の腑)に通じるところという意味になります。

[治療の効果]
 高血圧症や、中風からくる言語障害、顔面の神経まひによる口のゆがみ、三叉神経痛、さらに顔のけいれんが起こったときの治療に使用されます。
 また、胃の状態がよくないときには、この場所にかさぶたや湿疹ができやすくなり、口臭が強くなります。
 地倉は胃の健康のバロメーターともいわれ、このように胃が悪いために出てくるいろいろな症状にも効果的です。なかでも、口内炎や口角炎の症状をやわらげるのによく効きます。


41攅竹  さんちく
 「攅」には、杖・あつまる・あつめる・しげるという意味があります。
 「竹」はたけ・竹の葉です。
 つまり、攅竹というツボ名は、竹の杖をつかなければ歩けないほど目が見えにくい、といった症状に対して効果があることを意味しているわけです。これは、治療の効果がツボ名の由来となっている例のひとつです。
 攅竹には員在、始光、夜光、明光、始元、元柱、員柱、眉本、眉沖、小竹など、たくさんの別名があります。

[治療の効果]
 涙が多い、めまい、目の疲れ、結膜炎、頬の痛みによく効きます。
 また、頭痛・頭重、高血圧症などの治療にも応用されます。
 目が腫れぼったいときには、このツボを親指で強く押すと腫れがひきます。
 ただし、このツボは禁灸穴といってお灸をしてはいけないツボなので注意しましょう。


42絲竹空  しちくくう
 「絲」という字は、いと・細糸・糸のように細いすじという意味で、ここでは眉を指しています。
 「竹」は、たけで、竹の葉の形から、眉の形を意味しています。
 「空」はすきまを意味し、穴すなわちツボをあらわします。 
 したがって、この三つの漢字の意味を合わせると、眉が糸のように細くなったへりで、くぼんでいるところにあるツボという意味になり、場所をあらわしているツボ名となります。

 [治療の効果]
 目のまぶしさのために起こる頭痛、目の充血、さかさまつげ、片頭痛によく効きます。このツボにマッサージや指圧をすると、目の疲れや顔のむくみがとれ、すっきりします。このとき、目の周辺にあるほかのツボも刺激すると効果が増します。


43印堂  いんどう
 [治療の効果]
 蓄膿症や慢性鼻炎などにみられる、鼻づまりとそれにともなう頭の重苦しい感じ、頭重、息苦しいような不快感をやわらげるのに効果があります。
 印堂は、慢性的な鼻づまりをはじめとして、鼻水、鼻血、鼻のツーンとひびくような痛みなど、鼻のいろいろな病気とその症状緩和のために用いられるツボのひとつでもあります。 
 また、めまいや、子どもの引きつけなどの治療に用いられることもあります。


44禾りょう  かりょう
 「禾」とは、のぎ・穂をあらわし、穀物(食べ物)に通じます。転じてここでは口を指しています。
 「りょう」は、角すみをあらわし、ここでは骨の盛り上がったところで、鼻孔のことも指しています。
 したがって、禾りょうは、口の角すみで、口と鼻の間、骨肉の盛り上がっているところにあるという意味になります。

 [治療の効果]
 鼻の疾患の治療に広く使われるツボです。たとえば鼻水や鼻づまり、鼻血、急性鼻炎、慢性鼻炎、畜膿症などにすぐれた効果をもたらします。鼻がつまってにおいがよくわからなくなってしまった場合にも有効です。
 ほかに、三叉神経痛、顔面の神経まひなど、顔面部の神経障害の治療にも用いられます。
 また、このツボは上歯槽神経の通っているところなので、上歯の痛みや歯槽膿漏などが原因の歯ぐきの痛みにも効果があります。
 指圧をする場合は、人差し指か中指で少しずつ力を強めながら押します。
44禾りょう  かりょう
 「禾」とは、のぎ・穂をあらわし、穀物(食べ物)に通じます。転じてここでは口を指しています。
 「りょう」は、角すみをあらわし、ここでは骨の盛り上がったところで、鼻孔のことも指しています。
 したがって、禾りょうは、口の角すみで、口と鼻の間、骨肉の盛り上がっているところにあるという意味になります。

 [治療の効果]
 鼻の疾患の治療に広く使われるツボです。たとえば鼻水や鼻づまり、鼻血、急性鼻炎、慢性鼻炎、畜膿症などにすぐれた効果をもたらします。鼻がつまってにおいがよくわからなくなってしまった場合にも有効です。
 ほかに、三叉神経痛、顔面の神経まひなど、顔面部の神経障害の治療にも用いられます。
 また、このツボは上歯槽神経の通っているところなので、上歯の痛みや歯槽膿漏などが原因の歯ぐきの痛みにも効果があります。
 指圧をする場合は、人差し指か中指で少しずつ力を強めながら押します。


45大迎  たいげい
 「大」という字は、大いなる・りっぱ・さかんという意味です。「迎」は、むかえる・むかえ会うことをあらわします。
 大迎は下顎角部、下顎枝と下顎体のへりの交わる場所であり、またここは大腸の働きに関係するツボの道すじと、胃の働きに関するツボの道すじが交差しているところなので、このツボ名がついたとされています。

 [治療の効果]
 冷えたりほてったりする症状のときや三叉神経痛からくる口のけいれん、舌のこわばり、目の痛み、下痢の痛み、歯ぐきの痛みなどに効果があります。


46客主人  きゃくしゅじん
 客主人は別名、上関と呼ばれています。かつては、頬骨弓のことを顴骨弓または関骨といっており、この骨より上にあるツボなので上関という名がつきました。
 「客」は、まろうど・来訪者、広く己の相手となるものという意味で、そこから転じて旅人、主に対する人という意味になります。
 「主」は、あるじ・ぬしを指し、物事の中心、首脳をあらわしています。
 「人」は、ひと・人類・人間・性質を示します。
 客主人という名は、頬骨をはさんで下関と上関という二つのツボが並んでいて、これがちょうど客と主人が相対している関係に見えることからつきました。もともとは上関・下関の両方をまとめて客主人と呼んでいたものが、いつしか上関のみを指すようになっ たわけです。

 [治療の効果]
 三叉神経の痛み・けいれんに効果があります。顔面まひ、子どものひきつけ、耳鳴りや難聴の治療にも使われます。上歯の痛みを取り除くのにもすぐれた効果があります。


47頬車  きょうしゃ
 「頬」は、ほおで、ツボの位置をあらわしています。「車」というのは東洋医学でいう牙車のことで、歯が車のように動くところ、すなわち下顎関節を指しています。
 つまり、頬車というツボ名は、下顎関節あたりにあって、この関節にある病気に有効なツボであることをあらわしています。
 [治療の効果]
 歯の痛み、顔の神経痛、頬の腫れ、あごの腫れやこわばり、口や歯、歯ぐきの痛みによって噛みしめることができないなどといった症状に効果があります。
 半身不随の状態で、歯をくいしばったまま話ができない場合にも頬車での治療は効果的です。
 耳のまわりは、物を噛むための筋肉が走っています。この筋肉がときどきピクピクとけいれんすることがありますが、こうした場合にも、頬車を指圧するだけでひきつりがおさまります。


48下関 げかん
 「下」は、した・しもを指し、上に対する反対後です。
 「関」は、せき・かんぬき・とざす・からくりなどの意味があります。
 客主人というツボは別名を上関といいますが、下関はそれに対し、関骨(頬骨弓)の下にあるツボ、という意味になります。
 
 [治療の効果]
 歯痛、耳鳴り、三叉神経痛の治療によく使われるツボです。歯が痛み、腫れをともなっている場合に強めに指圧すると、症状がおさまります。
 また、下あごの脱臼が習慣的になっている人や、三叉神経痛、下顎関節痛で口を十分に開けられない場合にも効果があります。

49缺盆 けつぼん
 鎖骨の上の部分は、筋肉や皮膚がお盆のようにくぼんでいます。
 したがって、缺盆というツボ名は、お盆のように骨肉のくぼんでいるところというツボのある位置を意味しています。
 
 [治療の効果]
 ぜんそく、息苦しさ、胸苦しさ、胸の痛み、肋間神経痛、急性の熱病に効果があります。
 胸や腕へ抜ける神経の通り道にあるツボなので、これらの部位に関係する症状の治療に用いても、たいへん効果があります。


50兪府 ゆふ
 [治療の効果]
 のどもとにやや近いことから、食道・気道に関する病気の治療に用いられます。また、肋間神経痛などの胸の痛み、気管支炎の胸苦しさ、嘔吐や吐き気といった症状をやわらげたり、心臓病などにも効果があります。


51或中 わくちゅう
 「或」は、あるいは・あるもの・ある・うたがう・まどう・あやしむ・或に通ず、などの意味があります。ここでは、こころ・胸を指しています。
 「中」は、なか・あたる・かなめという意味です。
 したがって、或中というツボ名は、胸部の境目にあって、東洋医学でいう心の臓を守るツボであることをあらわしています。

 [治療の効果]
 食道の疾患、肋間神経痛、気管支炎、嘔吐、心臓病の症状によく効きます。
 せきが止まらない、ぜんそくの発作、食欲がわかない、胸からわき腹にかけて重苦しい感じがする、唾がたくさん出るなどの症状に対しても効果があります。


52中府 ちゅうふ
 中府の「中」は、なか・あたるという意味です。「府」は、くら・朝廷の文書や財貨を集める蔵、転じて人や物の集まるところを指します。
 つまり、病気の原因となる邪気が中に集まる場所という意味になります。

 [治療の効果]
 息切れ、呼吸が苦しい、胸の痛み、肋間神経痛、慢性気管支炎、ぜんそくにたいへんよく効きます。胸から肩・上腕部へ続く痛みにも効果があります。
 また、せき、たん、鼻水、顔のむくみ、のどの痛みなど、かぜの諸症状をやわらげる治療にも使用されます。
 そのほか、にきび、吹き出物、抜け毛、円形脱毛症、小児ぜんそく、肩や乳房の張りにも効果がみられます。


53だん中  だんちゅう
 「だん」は、東洋医学でいう心の臓に入ろうとする邪気をさえぎり、心の臓を守って包み込む隔膜のことをあらわしています。「中」は、真ん中という意味です。したがってだん中は、胸の真ん中で邪気をさえぎり、心の臓を守るという意味になります。
 まただん中には、羊くさい・生ぐさいという意味もあります。これはつまり、だん中のある位置が、左右の乳房にはさまれた真ん中で、乳の香りがすることからきていると考えられます。

 [治療の効果]
 のぼせて息苦しい、せきが止まらない、動悸、息切れ、胸苦しいなどの症状をやわらげる効果があります。また、肋間神経痛、慢性気管支炎、乳房痛、乳汁分泌不全などのほか、神経症、たとえば、うつ病、イライラ、ヒステリーなどによく効きます。
 だん中から第四胸椎棘突起の下にかけて痛みが走るときや、左腕の小指側に抜けるような痛みがあるときは、狭心症の発作の前ぶれである場合があります。このようなときにだん中を指圧すると、痛みが軽くなります。


54乳根  にゅうこん
 乳房の根元の部分にあることから、このツボ名がついたといわれています。

 [治療の効果] 
 乳腺炎、母乳が出にくいなどの乳房の症状に効果があります。
 そのほか、胸・腹部が張って痛むときや、急性の熱性病で、ふくらはぎが張る・けいれんが起こる、肋間神経などの場合にもこのツボの刺激が効果的です。さらに、心筋梗塞や肋膜炎の治療にも用いられます。
 

55乳中  にゅうちゅう
 文字どおり、乳の中央にあるツボなのでこの名がつきました。

 [治療の効果]
 鍼、お灸はできないので、マッサージ治療が主になります。
 母乳の出が悪いとき、乳中を指でつまみ、ふるわせるようにマッサージすると効果があります。
 そのとき、乳房の根もとをいっしょにつかむようにして、乳中に向かってなであげしたり、乳房全体をマッサージすると、より効果的です。
 なお、治療の前には、乳房全体を温湿布するとよいでしょう。


56よう窓 ようそう
 「よう」は胸をあらわしています。「窓」はまどを意味します。よう窓のツボ名は、胸の窓として胸部の違和感を明らかにするツボを意味します。
 よう窓の周辺には、大胸筋、小胸筋、内肋間筋、外肋間筋などの筋肉、内胸動脈、肋間動・静脈などの血管、前胸神経などがめぐっています。

 [治療の効果]
 母乳の出が悪いときや、乳腺炎などの症状はこのツボで治療します。また、呼吸器の疾患、心臓疾患、胸痛、肋間神経痛などにも効果があります。


57天谿 てんけい
 「天」は、天部を意味します。東洋医学では、人体を天・人・地という三つの部分に分けたり、天・地という二つの部分に分けて考えることがあります。ここでは、おへそより上を天部、下を地部とする分け方の天部を指します。「谿」の字は、たに・谷川のことで、水が谷に落ちていくところ、つまり骨肉のくぼみという意味です。
 したがって天谿というツボ名は、天部の病気に効く、肋骨のくぼみの中にある重要なツボという意味にとることができます。

 [治療の効果]
 胸の痛み、胸苦しさの治療に用いられ、とくに女性の乳房の腫れにたいへんに効果があります。
 出産後、乳房が腫れ、それによって高熱が出ることがありますが、その場合に天谿を指圧すると、ただちに乳の腫れがひき、熱も下がってきます。


58神封  しんぽう
 神封の「神」はかみ・こころのことをあらわしています。「封」は封じる・閉じる・包むなどを意味しています。つまり、心の臓の病気のもととなる邪気を封じる、あるいは心の病気を封じるという意味をあらわしています。

 [治療の効果]
 心臓病の特効ツボとして知られています。とくに狭心症などが原因で起こるさまざまな症状に効きます。
 たとえば、のぼせる、胸苦しい、息苦しい、せきが出る、吐き気がする、嘔吐する、胸からわき腹にかけてつかえる、動悸がするなどの症状に効果があります。
 さらに、肋間神経痛、乳房が張って母乳が出にくいときなどにもこのツボで治療します。


59鳩尾 きゅうび
 文字どおり、鳩の尾という意味です。
 鳩尾は、胸骨剣状突起の下にあるツボで、胸骨剣状突起が鳩のしっぽのような形をしているところからこのツボ名がつきました。

 [治療の効果]
 一般に頭痛、片頭痛、咽喉の疾患m、心臓病などのほか、神経衰弱、てんかんなどの精神疾患に効果があります。
 精神や情緒が不安定になると、動悸や息切れ、手足の冷えやほてり、胃腸の調子が悪い、食欲がない、不眠症、ノイローゼなどの症状が出てきますが、こういった症状の治療にも鳩尾が使用されます。
 そのほかにも、子どもの夜泣き、しゃっくりをしずめるのに効果があります。


60不容 ふよう
 「不」はここでは大いなり・はじめの意味です。
 「容」は、物をいれること・かたちをあらわし、胃のことを指しています。
 不容というツボ名は、最初に物の入るところ、つまり、食べ物の入る場所を意味し、大切な胃の入り口のことをあらわします。

 [治療の効果] 
 胃の諸症状をおさえるのに最も即効性があるツボです。
 みぞおちから胃にかけてシクシク痛む、キリキリ痛む、ゲップが出る、胸やけがする、胃がもたれる、胃が苦しい、胃弱、慢性胃炎、胃酸過多、胃アトニー、胃下垂などの症状にたいへん効果的です。
 そのほかにも、腹部の張り、嘔吐感、横隔膜のけいれん、胸から腹部にかけての痛み、肋間神経痛、しゃっくりなどにもよく効きます。


61巨闕  こけつ
  「巨」は心の臓のことです。「厥」は、宮城・宮門など、天子(尊い人)の居所をあらわしています。
 つまり巨闕というツボ名は、心の状態を察し、循環器系の病気をつかさどる重要な場所をあらわしているということになります。
 [治療の効果]
 心臓の病気によく効きます。動悸や息切れ、心痛、心悸亢進症、心臓弁膜症、狭心症に効果があります。この部分を指で押してみて、なんとなくかたかったら、自覚症状はなくても心臓に負担がかかっている証拠ですから休息をとった方がよいでしょう。
 また胃腸病にもよく効きます。胃酸過多、胃けいれん、食道狭窄、胃弱による胸やけ・ゲップ、腹の張り、ふくれ、腹が鳴る、吐き気、嘔吐、胃下垂、胃アトニーなどの慢性胃炎の治療に効果があります。そのほか、ぜんそくなどの呼吸器疾患の治療にも使用されるツボです。


62梁門 りょうもn
 「梁」という字は家屋の屋根を支える大切な横木(はり)という意味があります。
 「門」は病気の原因といわれる邪気の出入りするとことを指します。中かんというツボが腹部の中央にありますが、梁門はその横にあり、ツボ名の意味は、胃の横の重要な出入り口ということになります。
 梁門は、胃疾患の治療に用いられる大切なツボとなっています。
 梁門、期門、章門など、腹部のツボで名前に門の字がつくものはすべて重要なツボです。

 [治療の効果]
 胃の病気にたいへん効果があります。病名でいえば、胃炎、胃下垂、胃アトニー、胃潰瘍、また、消化不良、胃部膨満感、神経性炎による胃けいれん、急性胃炎、胃拡張症、食欲不振などのさまざまな症状にも効きます。
 胃潰瘍の場合には、ここに圧痛が出ることが多いようです。胃がんの場合、このツボにかたいしこりが触れることがあります。さらに、黄疸や胆石症の治療にも効果があります。


63中かん ちゅうかん
 「中」は中心・中央の意味があります。「かん」は胃袋のことをあらわします。
 つまり中かんというツボ名は、胃の中心にある重要なツボという意味をあらわしています。

 [治療の効果]
 胃の疾患の症状全般に非常に効果があり、胃の病気にとくによく効きます。
 胃痛、胃けいれん、胃潰瘍、胃炎、胃酸過多、胃アトニー、胃下垂、胃内停水、吐き気や嘔吐をとおなう食欲不振、慢性胃炎による腹の張り、消化不良など、胃の症状に広く効果があります。
 また、胃の病気だけでなく脾臓の病気や、糖尿病の治療、肝臓、胆嚢などの症状にも幅広く用いられ、すぐれた効果がみられます。
 さらに、下痢や、便秘、じんま疹、めまい、耳鳴り、にきび、心身症、子どもの虚弱体質、不妊症などの症状改善にも効果があり、たいへん応用範囲が広いツボです。
 中かんは、腹部の内臓機能を調節する自律神経叢があるところに位置します。このため、非常に広い範囲の上場に効果があるのです。


64章門 しょうもん
 「章」は、あきらか・あや・ふみ・あらわすなどの意味です。一方「門」は出入り内のことです。
 東洋医学では、人間の健康は体内のエネルギー循環によって支えれれているとされています。このエネルギーはもちろん腹部へもめぐっていますが、そのための出入り口として明らかなツボが、この章門といわけです。

 [治療の効果]
 消化不良、嘔吐、背中のこわばり、上肢、下肢がだるい、冷え性、子どもが乳を吐くなどの症状に効果があります。
 また、章門は消化器系一般の疾患をつかさどっているので、胃下垂、胃痛、肝臓や胆嚢、脾臓などの治療にも用いられます。
 さらに腹水、わき腹の痛み、肋間神経痛にもよく効きます


65日月 じつげつ
 「日」は太陽・日・昼をあらわします。「月」は夜のことです。
 つまり、陰陽が調和して、人体の機能をつかさどり、うまく健康を維持するうえで大切なツボということを意味しています。。
 別名を神光といいます。

 [治療の効果]
 胸や腹が熱くて息苦しい、言葉が正しく出ない胸から腹にかけての強い痛み、呼吸が充分にできないときによく使われるツボです。
 胆嚢炎や黄疸、胆石症などの治療にも効果があります。
 さらにノイローゼ、ヒステリー、不定愁訴、しゃっくりにも効果を発揮します。


66期門 きもん
 「期」は、あうべきとき、「門」は門戸をあらわしています。
 すなわち期門という名は、からだの機能に関係のあるツボを連ねた道すじ(経絡)のいくつかが、そこで交差したのち、胸にめぐって門戸にあたるという意味なのです。

 [治療の効果]
 月経不順、子宮内膜症など婦人科系の疾患をはじめ、熱性の消化器病で下痢がひどい、腹がかたく張る、わき腹にかけてしこりがあって痛いといった症状に効果があります。
 また、肝臓病や胆嚢炎などの場合に圧痛が出るつぼでもあり、ここを刺激すると症状がやわらぎます。
 そのほか、糖尿病、ノイローゼ、ぜんそく発作、しゃっくりの治療にも用いられます。


67帯脈 たいみゃく
 このツボ名は、からだの色々な機能に関係あるツボの道すじ(経絡)が、体内でからだを帯のように一回転して、束なるところという意味があります。
 また、帯を締めたときの高さにあるツボという意味もあり、この名がつけられたとされています。

 [治療の効果]
 腰や背中の痛みが腹にひびいて歩けない、腸が鳴って下痢をしている、尿があまり出ない・出にくいといった症状に効果があります。
 また、このツボは婦人病の特効ツボで、月経不順、卵巣・卵管・子宮の病気、女性の下腹部痛にすぐれた効き目があります。
 卵巣・卵管・子宮に病気があるときは、帯脈に痛みが出ます。
 さらに、子どもの慢性胃腸障害にも効果があります。


68居りょう  きょりょう
 「居」は屈曲・かがむという意味です。「りょう」は骨の角すみをあらわします。
 したがって、居りょうというツボ名は、骨の飛び出た角すみで、つま先立ちで腰を深くおろしたり、跳んだりしたときに筋が現れるところにあるツボという意味になります。

 「治療の効果」
 疲れて膝が痛い、足がだるくて重い、足がひきつる・しびれる・こわばる、などの症状に効果があります。したがって、座骨神経痛などの治療にたいへん効果のあるツボです。
 また、腰痛、下腹部痛の治療にも使用されるツボです。


69五枢  ごすう
 「五」は東洋で好まれる奇数で、幸運の数のひとつです。
 「枢」は、かなめ・くくる・とざす・からくりという意味で、大切な場所を示しています。

 「治療の効果」
 寒気があって下腹がひきつるといった症状によく効きます。
 からだを冷やしたり、ひどい過労のときなどに腰から下腹部・側腹部が痛くなるときがありますが、このような場合に五枢を用いて治療すると、たいへん効果があります。
 また座骨神経痛や、精巣炎・精巣上体炎などの男性の生殖器疾患にも効果があります。婦人科系の病気もこのツボで治療します。


70水分  すいぶん
 東洋医学でいう「水・かす」を分ける場所にあたることからこのツボ名がつきました。
 腹部の診察ではむくみがあるかないかを調べるために、重要なツボです。下痢の場合にはこのツボに圧痛が出ます。

 「治療の効果」
 腸が鳴って腹痛がする、胸が苦しい、腹が太鼓のようにかたく張る、食欲がない、腸・胃が冷える、などの症状のほか、冷えからくる背中や腰の痛みによく効きます。
 水分は利水をコントロールするツボとされ、胃内の停水、胃下垂症、排尿困難、腎臓病、水っぽい下痢、むくみ、夜尿症などの治療に用いると効果があります。


71天枢  てんすう
 人体を上下に分けた場合、東洋医学ではおへそから上の部分を天と呼び、おへそから下の部分を地と呼ぶことがあります。天枢はちょうどこの二つの部分の気の交差する位置にあります。気とは、東洋医学でいう生命力、生体の生きるエネルギーといった  意味です。
 「枢」とは、かなめ・たいせつなという意味です。
 したがって天枢というツボ名は、天地の気が交差する重要なツボという意味になります。

 「治療の効果」
 消化器系の胃・小腸・大腸。肝臓・胆嚢・脾臓の疾患全般に広く効果があります。
 とくに吐き気や嘔吐をともなう慢性胃炎、胃弱による胸やけやゲップ、慢性の下痢に効果があります。さらに生殖器である子宮・卵巣・精巣の病気、呼吸器や心臓・脳神経系の疾患で消化器系の働きがおとろえている場合にも利用されます。
 そのほか腎臓・膀胱の疾患、からだがだるく疲れやすい、根気がないなどの全身症状に効果があります。


72盲兪  こうゆ
 「盲」は穴、ツボのことをいいます。「兪」はそそぐという意味です。すなわち盲兪とは、邪気(東洋医学でいう病気の原因となるもの)の注ぐツボという意味をあらわしています。過労などのときには、このツボを軽く押しただけでも強い痛みを感じるので、体力の 低下を診断する際に利用されることがあります。

 「治療の効果」
 心臓病による胸の痛み、黄疸、細菌性の下痢、腸の病気による腹痛、胃弱による胸やけ・ゲップ・胃・十二指腸潰瘍などによく効きます。
 さらに、男性側の異常によって子どもができないときの治療にもたいへん効果があります。
 また、低血圧、糖尿病、耳の痛み、からだがだるく疲れやすいときや、便秘、目の充血の治療にも使用されます。


73関元  かんげん
 「関」という字は、かんぬき・せき・とざす・からくり、などの意味です。
 「元」は、もと・かしら・頭・よし・はじめ・元気、などの意味があります。
 したがって関元というツボ名は、健康のもとである元気にかかわる重要なツボということをあらわしていることになります。
 この場所は腎経、脾経、肝経と任脈が体内で交わるところでもあります。

 「治療の効果」
 たいへん応用範囲の広いツボです。
 胃腸障害をはじめ、精力減退、やせすぎ・太りすぎ、高血圧症、不眠症、冷え性のほか、にきび、じんま疹など皮膚の症状の治療に用いられます。
 また、このツボは男女の性器の疾患にもよく効きます。たとえば、尿意がひんぱんに起こる、下腹部の膨張感がひどいといった症状をはじめ、女性の場合には、子宮筋腫、月経痛、月経不順、子宮内膜炎、子宮のけいれんなどの症状緩和に効果を発揮しま す。
 さらに、腎臓病やむくみ、抜け毛、円形脱毛症、躁うつ病、夜尿症などの治療にも用いられます。


74中極  ちゅうきょく
 「中」は、うち・なか・あたる・かなめ、などの意味があります。
 「極」には、きわまる・むね・なか・いたる・つくる・とおし・かならず・おわり、などの意味があります。
 この二つの意味を総合すると、からだの機能と関係のあるツボの道すじのいくつかが体内で交差する重要な場所ということになります。

 「治療の効果」
 生殖器や泌尿器の病気に効果があります。
 膀胱炎、膀胱まひ、尿道炎、腎臓病によるのぼせやむくみ、インポテンツ、夜尿症などの治療に有効です。
 また婦人科系の病気にもよく効き、子宮内膜炎、帯下(おりもの)、月経不順、月経停止、月経痛、子宮筋腫、下腹の冷え・緊張感の治療によく使用されます。
 さらに座骨神経痛、下肢のリウマチ、頭重、腹膜炎などにも効果があります。


75気海  きかい
 ツボ名は、東洋医学で心身のエネルギーをあらわす気の海をあらわし、気の変動の集中するツボであることを意味しています。
 気の充実はすべての病気の回復を進め、気の欠乏は症状の回復を遅らせます。
 したがって、気海のツボを整えることは、病気の治りぐあいを早めることになります。

 「治療の効果」
  このツボは気の集まるところなので、気の病気によく効きます。
 脳神経系からくる神経過敏症、心身症、ヒステリー、躁病、うつ病に効果があります。
 また婦人科や泌尿器疾患にも効果があります。膀胱炎、腎臓の病気、不妊症、子宮筋腫、インポテンツ、淋病、さらに月経困難症、月経痛、月経不順による腹の張り・ふくれによく効きます。
 ほかにも神経性胃炎、腸疾患などの消化器疾患の治療にも効果があります。


76腹結  ふくけつ
 「腹」は、はらをあらわしています。「結」は、むすぶ・ゆわえる・しばる・くくる・むすびめという意味がありますが、ここでは結積(しこり・痛み・便秘などのこと)の意味になります。
 つまり腹結は、腹部の結積に効果があることをあらわしているツボ名となります。

 「治療の効果」
 一般に下痢や腹痛の症状軽減のほか、便秘、わき腹の痛み、下腹部の神経痛、黄疸などによく効きます。
 とくにみぞおちが痛んで下痢をする、腹の中にしこりができる、おへそを中心にしてしぼるような痛みがあるときに効果があります。


77大巨  たいこ
 「大」は、おおいなる・りっぱ・たいせつの意味で、「巨」も同じ意味があります。
 つまり、下腹の重要なツボであることをあらわしたツボ名となっているわけです。

 [治療の効果]
 のぼせ、冷え、低血圧、糖尿病、慢性腸炎による腹の張り・ふくれ、腹が鳴る、過敏性腸症候群、慢性の下痢や便秘、不眠症、半身不随、慢性の腹膜炎、月経困難症などに効果があります。
 とくに腎炎や腎臓結石、腎盂炎などの腎臓の病気、子宮内膜症、こしけ(おりもの)、不妊症、月経不順などの婦人科系の病気、膀胱炎など、下腹部の疾患に非常に効果があります。
 大巨は男女どちらかの不妊の治療にも効果があり、さらにリウマチや座骨神経痛など下肢の病気にも欠かせないツボとなっています。
 昔から左側の大巨は、悪い血がたまって婦人病の原因になるというお血のあるなしを調べたり、取り除くのにも使用されています。そのため、のぼせの症状や腰の痛み、下腹部の張り、足の冷えなどお血が原因となっていると考えられる症状には、とくに効果があります。


78大赫  だいかく
 「大」はたいせつという意味です。
 「赫」は、赤という字が二つ並び、火の赤い形から転じて、輝く・ひかる・かっといかるという意味があります。
 したがって男性の大切な陰茎が、真っ赤になって大きくなるツボという意味になります。

 [治療の効果]
 男性のインポテンツや早漏、女性の不感症に効果があるツボです。
 インポテンツや早漏、不感症などは、精神的な原因による場合もありますが、大赫に加え腰の腎兪、腹部の肓兪、関元、足の三陰交などといっしょに治療すると、効果があります。
 これらのツボはマッサージ、指圧、お灸のいずれもよく効きます。


79曲骨  きょくこつ
 「曲」は、まがる・かがむという意味です。「骨」は、ほねをあわらしています。
 したがって曲骨とは、曲がった骨、すなわち恥骨弓のことをあらわしています。 
 別名、回骨、屈骨、屈骨端、尿胞とも呼ばれています。

 [治療の効果]
 下腹部の張り、尿閉、産後のおりもの、こしけ、月経不順、冷えによって起こる臓器の機能低下、失精(腎虚)などの症状緩和に効果があります。
 また、尿道炎、膀胱炎、膀胱まひ、前立腺肥大、夜尿症、慢性胃炎、内臓の虚弱などにも効果があります。
 一般におへその下から恥骨の上にかけてあるツボは、すべて生殖器の病気に効果があるとされ、とりわけ婦人科系の病気によく効きます。
 なかでも、下腹部の骨ぎわにあるツボは、とくに婦人科系の疾患にすぐれた効果があることで知られています。


80水道  すいどう
 文字どおり、水が通じる道という意味があり、水に関する泌尿器、生殖器、腹水や大便などの病気に効果があるツボです。

 [治療の効果]
 下腹部のさまざまな病気、たとえば、便が出にくく下腹部が張るといった腸の疾患、尿が出にくく排尿時に痛みを感じたり、尿量・排尿回数に異常があらわれる尿道炎、膀胱炎、前立腺肥大症などによく効きます。また、糖尿病や腎臓病の症状をやわらげ、むくみをとるのにも有効です。
 そのほか婦人科系の疾患にも効果的で、子宮のいろいろな病気や、月経・更年期障害などにともなう腰痛、腹痛、が腹部の張り、肩から背中・腰にかけてのこりなどの症状をやわらげます。


81陰交  いんこう
 陰交は、三つの陰脈が体内で交わりあうという意味になります。陰脈とはからだの機能に関係のあるツボの道すじのうち、陰陽の陰に分類されるものです。
 別名、丹田、横戸、少関とも呼ばれています。

 [治療の効果]
 下腹が冷えて痛む場合や、産後の女性のおりものが止まらない、子宮不正出血、ヘルニアなどの症状に効果があります。
 また腎臓病、腹膜炎、慢性の下痢、月経不順、、座骨神経などに効果があります。


82気衝  きしょう
 「気」は気血の気です。「衝」は脈拍の触れるところを指しています。皮膚の上からさわって脈を感じるツボには、衝という字がツボ名に入っています。
 つまり気血の拍動を感じられるところで、衝脈の起こるところという意味になります。

 [治療の効果]
 一般に気衝は、男女の生殖の病気によく効きます。
 子宮内膜症、卵巣炎、卵管炎、精巣上体炎、月経不順、月経痛の治療によく使用されます。
 また、冷え症、尿道炎、膀胱炎、腎盂炎などの泌尿器疾患、腹膜炎、腹水、レイノー病、鼠径部の神経痛などにも効果があります。
 さらに、腹が張る、腹部に熱があって痛みがある、陰嚢が腫れる、陰嚢が冷えて痛むなどの症状に効果があります。
 難産のときにもこのツボを治療に用いると効果があります。


83風門  ふうもん
 文字どおり、風の門という意味で、風は風邪をあらわしています。東洋医学では、いくつかある邪気(病気の原因となるもの)のうち、風の邪気すなわち風邪がこのツボから体内に入るためにかぜをひくと考えています。
 風邪が入る門ということから、風の予防・治療をするツボであることを示しています。

 [治療の効果]
 急性の熱、のぼせ、呼吸の乱れ、息苦しさ、胸や背中に突き抜けるような痛み、首の後ろのこり、嘔吐、めまい、激しい頭痛などの症状に効果があります。
 風邪は、風門から入り、風池に集まって風邪の症状を悪化させるといわれています。したがって風門は、かぜのひき始めの治療に欠かせないツボで、かぜの症状全般にたいへん効果があります。ふだんからここをよく指圧しておくと、かぜの予防にもなります。そのほかにも、急性の呼吸器病、消化器病、肺炎の治療によく用いられます。
 風門にはお灸の治療がたいへんよく効きます。より効果的な治療をしたい場合は、鍼の後にお灸をすえるとすぐれた効き目が期待できます。


84肺兪  はいゆ
 東洋医学でいう肺の臓に邪気(病気の原因となるもの)が注ぐところがこのツボです。したがって肺兪は、肺の臓の状態を診断するにあてってたいへん重要です。

 [治療の効果]
 呼吸器の疾患全般によく効くツボです。
 とくに、気管支ぜんそく、かぜの症状全般、慢性気管支炎によるせきや吐血、結核性の熱、肩・背中、胸の痛み、肺結核に効果があります。
 そのほか、腰から肩や背中の強いこり、からだが冷えたり熱くなったりするために起こる呼吸困難や、にきびや吹き出もの、糖尿病、疲労からくるからだのだるさ、黄疸、心身症などの治療にも有効です。
 指圧でもお灸でも効きますが、強く刺激すればするほど効果が増します。


85心兪  しんゆ
 東洋医学でいう心の臓に邪気(病気の原因となるもの)が注ぐ場所であるため、この名がついたとされています。
 東洋医学でいう心の臓は、精神をつかさどるところとされ、精神的なショックが心の臓ならびに現代医学でいう心臓の発作につながりやすいことをあらわしています。
 狭心症などの心臓発作の時には、この心兪のあたりが痛むほか、左手の手のひら側と小指側の部分にかけて痛みが走ります。こうした発作の際には直接効果がある心兪とあわせて、巨闕やだん中、陰げきなどを治療に使用するとよいでしょう。

 [治療の効果]
 動悸、頭重、上半身ののぼせ、下半身の冷え、カッとなりやすい、イライラする、背中から胸にかけてキューッと痛みが走るときによく効きます。さらに心身症、ヒステリーなどの心の病気、嘔吐、躁うつ病、胃腸の病気、肋間神経痛、慢性気管支炎、子どもの虚弱体質、夜尿症などの治療にも使われるツボです。
 心兪にはお灸が効果的です。お灸の場合は古典によると「百壮すえる」とありますが、これは回数を多くすえるとよいという意味です。


86大杼  だいじょ
 「大」は尊称、「杼」は水をくみ出すとか、排除するという意味です。
 したがって大杼というツボ名は、骨の髄にたまった邪気をくみ出すツボであることをあらわしています。また、大杼は骨の髄を養うツボとしても知られています。

 [治療の効果]
 発熱しても汗が出ないので熱が下がりにくい、肩や背中の筋肉がけいれんする、子どもがひきつけるなどの症状によく効きます。
 さらに、肩や背中の痛み、頭痛・頭重、寒け、斜頸、疲れ、せきやたん、発熱、めまい、頭痛、胸苦しさ、頭部の病気など、多くの症状に効果があるツボとして知られています。


87身柱  しんちゅう
 「身」はからだ、「柱」ははしら、家屋を支える大切な大黒柱を」意味しています。からだの大黒柱の役目をしているのがこの身柱というわけです。
 別名を散り気といいます。

  [治療の効果]
 頭・うなじ・首・肩から背中にかけての痛みやこり、てんかん、ひきつけ、うわ言、子どもの疳の虫(神経過敏症)に効果があるツボです。
 また散り気とも呼ばれるように、集まった邪気をはらうツボとしても知られ、子どもの体力をつけ、からだを丈夫にするツボです。そのため、虚弱体質の改善にも用いられています。
 子どもにみられるさまざまな症状の特効ツボとして知られる身柱ですが、大人の神経性疾患の治療にもたいへん効果があります。
 たとえば神経症、ヒステリー、顔の神経痛や、気管支炎、かぜ、ぜんそく、鼻血、抜け毛、円形脱毛症などの治療にも効果があり、ほかにも応用範囲の広いツボです。


88腑分  ふぶん
 「腑」は、つく・付着するという意味ですが、ここでは上肢のことを指します。
 「分」は、わける・分かれるという意味です。
 このツボはちょうどからだの機能に関係があるツボの道すじのいくつかが体内で分かれる場所にあるので、この名がついたとされています。

  [治療の効果]
 肩から背中にかけてのこり・痛み、首が痛くてまわらない、かぜによるからだの疲れ、前腕からひじにかけてのまひに効果があります。
 とくに背骨がかたくなる強直性脊椎炎の治療にたいへん効果があります。この病気は、年をとるにつれて背骨と背骨の間の水分が抜け、かたくなることが原因で起こります。
 そのため、背骨を後ろにそらすことができなくなったり、からだを横に向けるのが非常に苦しくなります。胸が強く圧迫されるので、胸苦しさやせき、息切れ、動悸が激しくなるなどの症状も起こります。
 腑分はこれらの症状によく効き、また上腕神経痛の治療にも用いられます。


89魄戸  はくこ
 「魄」は肺に宿る精気、「戸」は出入りするところという意味です。この二つを合わせると、東洋医学でいう肺の臓の邪気の出入りするところという意味になります。
 肺の病気から起こる情緒の不安定・神経過敏がみられるときはこのツボで治療します。
 魄戸は肺兪のかたわらにあり、肺の病気にたいへんよく効くというわけです。

  [治療の効果]
 せきが出る、のどがゼイゼイする、顔がほてって足が冷える、ひじの痛み、過労からくる心身の衰弱、うなじのこわばりなどの症状に効果があります。
 肺結核、肺気腫、ぜんそく、気管支炎など肺の疾患の症状全般や、首・肩のこり、五十肩などにもよく効きます。


90厥陰兪  けついんゆ
 「厥」は、血のめぐりの悪いことをあらわします。「陰」は東洋医学でいう陰証です。
 陰証とは生体の機能の衰えによって循環器系などに障害が起こることです。
 したがって、厥陰兪は、循環器系などの障害で病状が内にこもって冷えるときに使われるツボということをあらわしています。

  [治療の効果]
 肋間神経痛や心臓の病気、呼吸器疾患などに効果があります。
 せきが激しく出る、のぼせる、冷える、嘔吐、胸が苦しい、胸が痛い、精神的な苦しみがある、歯が痛いなどの症状によく使用されます。
 とくに、血の循環が悪く冷え症の人は、胸苦しさや動悸のせいで根気が続かない場合が多いのですが、そういった症状があらわれたとき、このツボを静かに指でマッサージすると症状がおさまり、楽になります。
 また、厥陰兪は心身症、過敏性腸症候群など精神的な影響がみられる症状の治療にも用いられています。


91膏肓  こうこう
 膏薬とは外用の薬のことですが、もともとは難病に効く薬という意味でした。
 ここでの「膏」は不治の難病を指しています。
 「肓」は、穴、ツボのことなので、膏肓というツボ名は、治りにくい症状や病気を治すツボという意味になります。
 循環器疾患や呼吸器疾患があると、ここにかたいこりが出るぐらい反応の敏感なツボです。
 
 [治療の効果]
 腕や肩から背中へ続く痛み、動悸や息切れ、せき、たん、胸の痛みをしずめるのに効果があります。
 血の循環障害は、心臓に障害があるために起こります。血液のめぐりが悪く、手足がいつも冷えているような場合にこのツボで治療すると、たいへんよく効きます。
 慢性の冷え症は、心臓の機能がよくなることにともなって回復します。


92神堂  しんどう
 「神」は神・こころのことです。「堂」は家・宮殿をいみします。東洋医学では、心の臓に神が宿ると考えており、神の宿るとことにこころがあるとしています。したがって、文字どおり神の宿る宮殿という意味をもつ神堂は、心因性の疾患などにかかわりがあることがわかります。

 [治療の効果]
 胸からわきや背中にひびく痛みがある、寒気がして発熱をくり返す、胸から腹にかけて重苦しい、息切れ、呼吸が苦しいなどの症状に効果があります。
 さらに気管支炎、ぜんそく、肋間神経痛、五十肩、心臓病などの諸症状に効果があります。


93膈兪  かくゆ
 「膈」は、横隔膜の膈、へだたるという意味です。横隔膜の近くにあり、胸とおなかをへだてる大切なツボです。

 [治療の効果]
 肋骨からわき腹にかけての痛み、熱が上がったり下がったりする、腹が張って重苦しい、胃が痛い、横隔膜のけいれん、からだの冷え、のどが絶えずゼイゼイするなどの症状に効果があります。
 また心臓部のさしこむような痛み、胃・十二指腸潰瘍、胃炎、胃けいれんの痛み、ものを食べると嘔吐する胃腸病、肺結核による全身のだるさ、せきが止まらずに嘔吐をともなうなどの症状にも効果があります。
 さらに膈兪は血液疾患の特効ツボであり、喀血、吐血、心臓病疾患にも用いられます。胸と腹部の機能のコントロールがくずれて起こる不眠症にもよく効きます。
 慢性の消化器疾患には、鍼治療がたいへんよく効きます。


94膈関  かくかん
 「膈」はへだてるという意味があります。横隔膜の近くにあることにも関係しています。

 [治療の効果]
 不眠症や、吐き気、しゃっくり、食べ物がつかえるなどの症状をやわらげるときに用います。


95肝兪  かんゆ
 このツボは東洋医学でいう肝の臓の病気の原因となる邪気の注ぐところです。
 肝の臓のこのような機能衰弱を治療するのが肝兪で、それがそのままツボ名になっています。
 東洋医学では、肝の臓の状態を診断するには肝兪と期門を使います。この二つのツボは現代医学でいう肝臓の位置と一致します。

 [治療の効果]
 肝炎、肝機能障害、肝臓肥大、胆石症、胆嚢炎などのほかに胸膜炎、肋間神経痛、腰痛、神経衰弱、不眠症、てんかん、中風、半身不随、虚弱体質、糖尿病、口内炎など非常にさまざまな病気に効果があります。
 症状としては、両わき腹のひきつり、寝返りがうてない、胸や背中の痛み・ひきつり、黄疸、病気のため視野が狭くなる、血たん、筋肉のひきつり、こむら返り、二日酔いや乗り物酔いによる吐き気・嘔吐、食欲不振、めまい、立ちくらみなどによく効き、たいへん応用範囲が広いツボです。
 また、肝臓には外部から体内に入った毒を浄化する働きがあるため、肝臓の位置にある肝兪は解毒の特効ツボとしても知られています。


96至陽  しよう
 東洋医学でhあ、人体の第七胸椎から上を陽とし、そこから下を陰と分けることがあります。
 至陽はその境目にあるツボで、ここから陽に至るという意味をあらわしています。

 [治療の効果]
 胃炎、胃アトニー、消化不良、食欲不振、胃酸過多症などの消化器系の疾患に効果があります
 また、頭重・ヒステリーなどの神経症状や不眠症、腰や背中の痛み、胸の痛み、胸膜炎、肋間神経痛、四肢のまひ、気管支炎、ぜんそく、黄疸などの治療にもよく使用されます。
 さらに、至陽は腎臓の機能低下によって起こる熱の症状の特効ツボでもあります。
 腎臓の機能に異常があると、腎熱といって全身に熱症状が出ますが、このときに至陽を刺激すると熱がとれます。


97 胆兪
 このツボは東洋医学でいう胆の腑に邪気(病気の原因となるもの)が注ぐところで、胆の腑の病気を取り除くツボであることからこの名前がついたとされています。現代医学でいう、胆嚢に病気があるときにも、ここに痛みがあらわれます。
 また、胆兪に対して腹部にある日月は、ともに使われる重要なツボです。

 [治療の効果]
 心臓の周辺から腹のあたりが張る、口の中が苦い、舌が乾く、胸とわき腹が痛い、頭痛がする、寒気がする、わきの下の腫れ、のどの痛み、結核による発熱、消化不良、胃弱による胸やけ・ゲップなどの症状に効果があります。
 とくに慢性の胆嚢炎、胆石症ではこのツボに鍼やお灸をするとたいへんよく効きます。
 東洋医学では、「肝胆相照らす」といって、肝の臓と胆の腑はいつも表裏して相助け、互いに補い合いながら機能しているとされています。
 そのため、肝兪のツボで効果がある病気には胆兪も効果的です。


98脾兪  ひゆ
 「脾」とは脾の臓のことです。したがって脾兪とは東洋医学でいう脾の臓に邪気(病気の原因となるもの)が注ぐところで、それがそのままツボ名となっています。
 ただし、東洋医学でいう脾の臓は、現代医学でいう脾臓のことではなく、膵臓のことを指しています。膵臓はインスリンという物質を分泌しており、その分泌が低下すると糖尿病が起こりますが、脾兪を刺激すると膵臓の機能調整につながり、糖尿病の症状緩和に効果を示します。
 また、「脾」には意思が宿るといわれているため、気持ちの安定を保つのによいツボです。

 [治療の効果]
 腹・胸・背中にかけての痛み、黄疸、上肢・下肢の痛みとしびれ、腹のしこり、寒気と冷え、からだのだるさ、のどの渇き、食欲不振、吐き気などに効果があります。
 さらに、「脾の臓、胃の腑」といわれるように、東洋医学でいう脾と胃はお互いに助け合っている関係にあるため、脾の調子が悪いと胃も不調になります。胃の病気、食欲不振、消化不良などは脾の不調から起こる場合が多いので、脾兪はそれらの治療にも用いられます。


99胃兪 いゆ
 「兪」とは邪気(東洋医学でいう病気の原因となるもの)が注ぐところという意味です。自然界におけるすべての邪気は兪穴と分類されるツボから体内に入り、臓腑をおかして病気を起こすとされています。
 胃兪は胃の腑の兪穴で、東洋医学でいう胃の腑に邪気の注ぐところです。それがそのままツボ名になっているというわけです。
 胃の腑の状態を判断するにはこの胃兪と、中かんを使用します。


 [治療の効果]
 消化器系の疾患に効果があります。たとえが、急性胃炎、慢性胃炎、胃下垂、胃アトニーなどのときは、このツボが強く反応します。
 そのほか、腹が張って食欲がない、胃のあたりが冷える、吐き気、嘔吐、腸が鳴る、腹が痛む、乳幼児の吐乳に効果があります。胃腸の調子が悪いと、口の中や唇が荒れて口内炎、口角炎ができやすくなりますが、胃兪はそれらを治療する場合に用いても、効果があります。
 さらに、糖尿病、イライラやヒステリーの治療にも用いられ、効果があります。
 胃兪は、胆兪とともに「胃の六ツ灸」と呼ばれ、お灸の治療がよく行われます。それぞれ三壮ぐらいずつすえると、胃腸の調子がきわめてよくなります。 
 また、痔の治療にも有効とされています。


100三焦兪 さんしょうゆ
 東洋医学の基本的な考えに六臓六腑という考え方があります。これに含まれる三焦の腑に、病気の原因になると考えられる邪気が注ぐところを三焦兪といいます。
 東洋医学では人体を、上から下まで天・人・地という部分に分けて考えることがあります。三焦兪はこの三つをめぐる血液の流れ、熱源を調節する大切なツボです。
 人間をはじめとする恒温動物の体温は、いつも三七度程度に保たれています。これは、恒温動物が外部環境の寒暖に応じて血液の循環を調節しているためです。この血液循環をコントロールしているのが三焦の腑なのです。

 [治療の効果]
 心身が疲れやすい、疲れてからだがだるい、わきの下に汗をかく、腸が鳴る、消化不良、腹痛をともなう下痢、頭痛、腰から背中へのこわばり、女性の下腹部のこわばり、やせすぎなどに効果があります。
 消化器系の病気の症状改善に広く使用されるほか、口内炎や湿疹、にきび、吹き出ものなどの治療にも効果があります。


101腎兪 じんゆ
 東洋医学でいう腎の臓へ邪気(病気の原因となるもの)が注ぐところで、ツボの名前もこれに由来しています。
 東洋医学では、腎の臓の機能が活発であると、体力、体調が活発になりすべての内臓が調整され、全身が強健になると考えられています。

 [治療の効果]
 腎兪の応用範囲はたいへん広範囲にわたっています。
 生殖器疾患、泌尿器疾患、呼吸器疾患、循環器疾患、神経系疾患、婦人科系の疾患、代謝異常などさまざまな症状に効果があります。
 めまい、立ちくらみ、高血圧症、糖尿病、やせすぎ・太りすぎ、不眠症、目の疲れ、耳の痛み、中耳炎、五十肩、座骨神経痛やぎっくり腰などの腰の痛み、しみ、そばかす、腹が鳴る・ふくれる・張るといった過敏性腸症候群など、たくさんの病気・症状に使用されます。
 とくに泌尿器系の腎臓病や膀胱炎、尿道炎、婦人科系の月経困難症、月経痛、月経不順、不妊症、足の冷えにすぐれた効果を発揮します。
 そのほかに痔、脱肛、直腸脱、インポテンツ、子どもの虚弱体質や夜尿症にも効果があります。
 前記のような具体的な症状がなくても、たとえば軽い疲労のときなどにこのツボをマッサージすると、全身に生命力や気力がみなぎり、からだの調子がたいへんよくなります。


102志室  ししつ
 「志」は、こころざしという意味ですが、ほかに腎に対する精気のことをいいます。「室」は部屋・家のことです。
 昔から「腎には志が宿る」とされており、生まれつきの体力の強弱がこのツボでわかります。
 腎に病気があると、疲れやすく精気が弱まり、からだに元気がなくなります。この状態を腎虚といいますが、志室はこのようなときの状態改善に欠かせないツボです。

 [治療の効果]
 全身の疲労感や、だるさによく効きます。
 背中から腰にかけての強い痛み、腹の中が非常にかたく緊張している。排尿がうまくできないといった症状にも効果があります。
 また、睾丸の腫れ、陰部のできもの、陰部の痛み、食べ物の不消化、食べたものを吐く、急性の胃腸炎、座骨神経痛などにもよく効きます。
 さらに、腎臓病、インポテンツにも効果があります。


103命門  めいもn
 文字どおり、このツボは命の門という意味です。人間の生命力の中心であることからこのツボ名がついたとされています。別名を腎間の気、先天の元気の座ともいいます。腎間の気、先天の元気がこのツボから出入りして、健康が保たれているといわれています。

 [治療の効果]
 腰痛、精力減退から起こる耳鳴り、頭痛、結核性の熱、婦人病気や月経異常、こしけ、おりものに効果があります。
 また頭が割れるように痛い、からだが熱っぽい、子どもの疳の虫やひきつけなどの症状にも使用されます。
 さらに子宮出血、腸出血、痔出血、鼻血などの出血を止める、血止めのお灸がよく効くことでも知られています。
 このツボは先天の元気が宿るところとされており、人間が生まれつき備えている体調や体力を丈夫にする働きがあります。そのため、虚弱体質や精力減退、腰痛に用いて効果があるのです。
 このツボとあわせて、先天の元気の座である腎兪、後天の元気の座である三焦兪を使用すると、スタミナづくりにたいへん効果があります。
 病気などで体力を消耗してしまったときには、これらのツボを刺激して体力の回復をはかるとよいでしょう。


104大腸兪 だいちょうゆ
 東洋医学でいう大腸の腑に邪気(病気の原因となるもの)が注ぐところがこのツボです。大腸の腑に出るさまざまな症状は、大腸兪と天枢をいっしょに治療すると効果があります。
 天枢も腹部の病気全般にたいへんよく効きますが、大腸兪と相助け合ってこそ、ツボの刺激が効いて、さらに治療の効果があがります。

 [治療の効果]
 背中のこわばり、腰から足にかけての痛み、ぎっくり腰、腹の張り・ふくれ、腹がゴロゴロ鳴る、おへそのまわりが切られるように痛む、慢性の下痢・便秘、慢性の腸炎、下腹部がしぼるように痛い、便や尿が思うように出ないなどの症状に効果があります。
 胃腸の調子が悪い場合、大腸に原因があるときは、腹が鳴る、下腹部が痛む、下痢や便秘、背のこわばり、腰痛などの症状が出ます。このような症状のときに大腸兪を治療すると効果的です。


105小腸兪 しょうちょうゆ
 東洋医学でいう小腸の腑に邪気(病気の原因となるもの)が注ぐところがこのツボです。関元と併用して治療すると、消化器、泌尿器の病気に効果があります。
 東洋医学でいう小腸の腑は、胃の腑・脾の臓のつながり、腹を十六まわりする間に、水とかすを分ける役目があるとされています。
 おへそを中心とした腹痛の場合、小腸に病気の原因があって起こると下痢になり、また、大腸に病気の原因があっておこるとしぶり腹になります。
 小腸兪、膀胱兪、中膂兪、上りょう、中りょう、下りょう、はすべて臀部にあり、男女の生殖器の病気に深い関係があるとされています。

 [治療の効果]
 尿の色がおかしい、尿の量が少ない、下腹のうずくような痛み、足の腫れ、息切れ、食欲不振、便に膿や血が混じる、痔が痛い、女性のおりものなどの症状に効果があります。
 また、おへそを中心にした腹痛で、下痢が激しいときはもちろん、便秘をしている場合にもよく効きます。下痢や便秘、婦人科系の病気など、下腹部の病気からくる腰の痛みには、このツボあたりを温湿布したあとに、マッサージや指圧などの治療を行うと効果が増します。


106関元兪 かんげんゆ
 [治療の効果]
 腰の症状に効果があるツボです。腰の痛みやだるさ、しびれなどをやわらげるので、ぎっくり腰などの治療によく用いられます。
 そのほか、急性および慢性の下痢、冷え症や月経痛などといった婦人科系の疾患にも効果があります。


107上りょう じょうりょう
 臀部の平らな骨である仙骨には、左右それぞれ四つずつのくぼみがあり、そのくぼみに「りょう」をいう字のつくツボが並んでいます。
 上りょうは、そのうち最も上にあることからこの名がつけられました。

 [治療の効果]
 腰痛、下腹部の張り、子どもの夜尿症や尿失禁、けいれん、てんかん、ぎっくり腰などの症状に効果があります。
 さらに、便や尿の出がよくない、胃がムカムカして腹から突き上げるような感じがする、膝が冷えて痛む、鼻血が出るといった症状にも効きます。体力向上のために用いても効果的です。
 とくに「血の道」と呼ばれる婦人科系の病気から起こる症状に対してはきわめて効果があります。婦人科系の疾患から起こる症状は主に下腹部の張り・痛み、足のむくみ、おりものが多い、頭が重い、便秘などですが、上りょうはこれらの治療に欠かせないツボとなっています。
 子宮内膜症、子宮後屈からくる白帯下(おりもの)の激しいものや、月経痛、月経不順、月経困難症などにも効果があります。


108次りょう じりょう
 上りょうの次にあるツボなので次りょうと呼ばれています。
 腰にある「りょう」の字のつくツボの中で最も重要な働きをするツボです。

 [治療の効果]
 便や尿の出が悪い、便通異常がある。腰の痛みのため思うように動けない、ぎっくり腰、血尿が出て排尿時に痛みをともなう、足の冷え、腹が鳴って下痢をする、帯下(おりもの)があるといった症状に効果があります。
 一般に、上りょうとともに骨盤内の臓器の病気や泌尿器の疾患に有効なツボです。
 とりわけ女性の月経時の不調によって起こるイライラ、足の冷え、下腹部のひきつるような痛みといった症状は骨盤内の臓器の機能異常からくるものなので、次りょうを刺激して月経を順調にすることが大切です。次りょうに加え膀胱兪、胞肓、腹部の中極といったツボを、マッサージや指圧、お灸で治療するとたいへん楽になります。


109中りょう ちゅうりょう
 上りょう、次りょうに続き、下りょうとの間にあるので中りょうと呼ばれています。

 [治療の効果]
 性器の病気、腎臓の病気、膀胱の病気、座骨神経痛、婦人病などに効くツボです。
 上りょうや下りょうの効果とだいたい同様の効果が期待できますが、痔や膀胱炎などはこの中りょうのほうが効くともいわれています。
 上・中・下の左右あわせて六つの「りょう」の字のつくツボは、とくに「下の六ツ灸」と呼ばれ、性器の機能を活発にする働きがあるとされています。すなわち、この六ツ灸はインポテンツの治療にもすぐれた効果を示すということです。
 また、中りょうは湿疹、皮膚炎の治療にも使われます。その場合は左右の上りょう、次りょう、中りょう、下りょうという八つの「りょう」の字のつくツボに加えて、さらに腹部の巨闕、中かん、期門、肓兪、天枢、大巨、関元、肩の肩井、背中の肺兪、腰の三焦兪の中から反応のあるツボを選んで治療を行います。


110下りょう げりょう
 八りょう穴のいちばん下にあるので下りょうというツボ名がついたとされています。

 [治療の効果]
 生殖器、泌尿器、直腸、肛門、足腰の疾患に効果があるツボです。腹痛、右下腹部のしこり、しぼるような激痛、ひどい腰痛、血便、腹が張って便秘する、腰から下がまひする、インポテンツ、不妊などの症状によく効きます。
 また、このツボには、消化器系の機能を高め、体力をつける効果があるため結核性の病気、たとえば肺結核などの治療にも使用されます。
 さらに下りょうは皮ふ病にも効果があります。湿疹、皮膚炎、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、皮膚掻痒症、主婦湿疹とも呼ばれている進行性指掌角皮症などによく効きます。


111腰の陽関 こしのようかん
 「陽」は太陽・陽気の陽、「関」はかんぬき・関門の意味です。
 陽関は、このツボの場所から下に、健康を意味する陽気を伝える関門となっています。ツボの名もそこからついたとされています。

 [治療の効果]
 腰に出るさまざまな症状によく効くツボです。
 腰や腹にできたしこりのため腰が痛む、腰の曲げ伸ばしをすることができない、からだのしびれのため思うように動けないといった症状に効果があります。
 腰痛をはじめ、座骨神経痛、リウマチ、関節炎、膝の痛み、下肢のまひ、椎間板ヘルニア、半身不随などの治療に用いられるツボです。
 さらに腰や下腹部の冷感、遺尿症、頻尿、膀胱炎、前立腺炎、月経不順、インポテンツの治療にも使用されます。


112膀胱兪 ぼうこうゆ
 東洋医学でいう膀胱の腑に邪気(病気の原因となるもの)が入るところがこのツボです。おへそから指幅四本分ほど下にある中極と相乗効果のあるツボです。

 [治療の効果]
 かぜでせきや寝汗が出る、腰や背中が痛い、女性の下腹部のしこり、こむら返り、むくみ、腎臓病、糖尿病、膀胱炎、尿道炎、前立腺肥大症などの症状に効果があります。
 このツボは膀胱の腑に邪気が注ぐところなので、とくに膀胱の病気の治療によく効きます。
 その中でも、子どもの夜尿症、おもらしなどにたいへん効果があり、昔から治療に使用されてきました。
 また、女性の場合は膀胱炎になりやすく、下半身の冷えが原因で発病することが多いのですが、膀胱兪を治療すると冷えが治り、病気もよくなってきます。
 下腹から腰、仙骨部にかけて位置するツボは、温める治療法が効果的です。からだのこの部分は構造上、血液のめぐりがよくなく、うっ血が起こりやすくなっています。したがって、この部位を温めると血液の循環がよくなり、冷えがとれ、冷えが原因で起こっていた夜尿症や膀胱炎、排尿時の痛みが治るのです。


113胞肓 ほうこう
 「胞」は子袋、つまり子宮のことです。「肓」は穴すなわちツボのことを指しています。
 このツボは子宮の疾患にたいへんよく効き、ツボ名も子宮疾患の特効ツボであることをあらわしています。

 [治療の効果]
 性器の病気、とくに子宮など婦人科系の病気に効果があります。
 婦人科系の病気の主な症状には、頭痛や肩こり、腰のだるさ、下腹の張り、足の冷えなどがありますが、このような症状がみられるときに胞肓を処置すると楽になります。
 腰から下をお湯の中に浸し、下半身を温める腰湯という治療法があります。胞肓などの婦人科疾患に効くツボが、腰から仙骨部(臀部の中央の平らな骨のあたり)にかけてあることから考えると、この部分をまとめて一度に温める腰湯はすぐれた治療法といえます。
 マッサージや指圧をする際も、治療前に温湿布などで温めてからおこなったほうが効果的です。
 そのほか、前立腺肥大症や尿道炎、膀胱炎、尿路結石などのために起こる排尿時の痛みと排尿困難にもよく効きます。また、急性の腹痛や消化不良、腰から背中にかけての痛みにも効果的です。腸がゴロゴロいうのをしずめる効果もあります。


114中膂兪 ちゅうりょゆ
 「膂」は、からだの中の一部突出したところを指し、「中」は、からだの中心を意味しています。このことから「中膂」というのは、からだの中心の突出したところ、すなわち、男性の生殖器である陰茎を意味していることがわかります。
 また、「兪」は、邪気(東洋医学でいう病気の原因となるもの)が注ぐツボであることを意味しています。
 つまり、男性の尿道、陰茎に邪気が注ぐところという意味にとることができます。
 別名を中膂内兪ともいいます。

 [治療の効果]
 男性の尿道や陰茎に症状がある場合、たとえば、前立腺炎や尿道炎、前立腺肥大症などの治療に用いられ、尿道の痛みや尿の出にくさ、尿もれ、残尿感などの症状をやわらげます。
 また、腎虚、糖尿病、疝痛、腹の張り、膀胱炎、腸の出血、直腸カタル、座骨神経痛などにも応用されます。


115会陽  えよう
 からだの機能に関係あるツボの並んだ道すじ(経絡)のうち、陰陽の陽に分類されるものが体内で交わりあうことを示したツボ名です。

 [治療の効果]
 便に血が混じる、慢性の痔、からだの冷え、下痢、陰部の病気の症状に効果があります。
 とくに会陽は痔の特効ツボとして広く知られています。尾骨のちょうど先端にある長強とあわせて治療するとたいへん効果があります。会陽での治療は、お灸がたいへん効果的です。そのあと臀部を軽くマッサージしておくとよいでしょう。
 しかし、痔の治療の場合でお灸が効くのは、痔核、脱肛、切れ痔に限り、痔瘻には効果が期待できません。


116長強  ちょうきょう
 「長」という字には、ながい・たけだけしい・つね・いつまでも、という意味があります。「強」は、つよいという意味です。
 したがって長強はからだを丈夫にし、長生きができるようにするツボという意味になります。

 [治療の効果]
 長強は痔の治療の特効ツボです。痔は肛門の周辺にある静脈叢がうっ血して起こり、それが進むと静脈が破れて出血します。
 長強を刺激すると、肛門の括約筋が締まり、さらに血管が拡張するので血のめぐりがよくなってうっ血がなくなります。お灸をすえて熱刺激を与えると、より効果的です。ふつう、お灸は一回に三~五壮すえますが、この場合は最低でも十~十五壮ぐらいすえ ないと効果が出ません。頭の百会とあわせて治療するといっそう効果が増します。痔核、脱肛、切れ痔いずれの治療にも有効です。
 そのほかにも、背中から腰にかけての痛みとこわばり、便秘、子どもの疳の虫、ひきつけ、精神的な症状にも効果があります。



手・肩のツボ

117雲門  うんもん
 東洋医学では人間のからだを天・人・地と三つに分けることがあります。これは、鎖骨を境に上を天、鎖骨からおへそまでを人、おへそから下を地と呼ぶものです。ほかにも上半身を天、下半身を地と分けることもあります。
 また、人間は自然界から気を取り入れ、そのうちの天の気と地の気がうまくまじってからだをめぐり、エネルギーの循環系をつくると考えられています。その天の気を体内に取り入れるところが雲門であるとされています。
 鎖骨の下のくぼみの中に位置する雲門のツボ名は、そこが天の生気を取り入れる「雲」にそそり立つ「門」であることを示しています。

 [治療の効果]
 雲門は肺の機能に関係のあるツボで、天の気を取り入れることから、呼吸器系の症状に広く活用され、効果を発揮します。胸苦しさ、せき、ぜんそくによく似た息苦しさなどの症状に効果があります。
 また、五十肩、のどの腫れからくる痛み、たん、動悸があって胸部からわき腹・背中の方に痛みがある場合、発熱して腕や足に痛みがあるような場合にも効果があります。


118肩井  けんせい
 「井」は井戸をあらわしています。
 すなわちこのツボ名は、肩をめぐっているからだの中のエネルギーが湧く井戸であることを示しています。

 [治療の効果]
 首のリンパ節が腫れて首をまわすことができないときや、過労、のぼせ、手足の冷え、疲れ目、眼精疲労、背中のだるさなどには、とくに効果があります。
 また、気持ちのたかぶり、ノイローゼ、神経症、イライラする、ヒステリーなどといった症状や、湿疹、じんま疹などにも効果をあげます。
 東洋医学では、このツボを中心に首すじから肩の先端にかけて処置する技法のことを「肩井の術」と呼びます。家庭でこれをおこなう際には、親指でこのツボを指圧するだけでも症状をやわらげる効果があります。
 お灸もたいへん効果的です。


119肩ぐう  けんぐう
 「ぐう」は骨のすみ・先端を意味しています。つまりこのツボ名は、肩の先端のすみに位置するツボであることをあらわしています。

 [治療の効果]
 慢性関節リウマチの症状にたいへん効果のあるツボです。
 五十肩や肩こりをはじめ、首から肩にかけての症状と、腰痛などの治療にも用いられ、効果があります。
 また、急性熱性病や、熱病を原因とした前腕部の痛みとまひ症状からくるうずき、脳血管障害による半身不随、歯痛などの治療にも用いられます。
 その場合には、発症から一週間たたないうちにこのツボと肩りょうなどのツボにお灸をすえると効果があるとされています。それも右半身の症状は右側に、左半身の症状は左側というようにお灸をすえ、それが数百にもなると肩の筋肉も落ちず、肩の老化
 も予防でき、治療の効果も抜群であると昔からいわれています。
 数百とは、数多くという意味です。お灸は一か所につき、一回分三~五壮ぐらいをすえるのが適当なので、何回も根気よく続けるという意味になります。
 じんま疹やいんきんたむし、湿疹などに対しても治療効果をあげる場合があります。


120曲垣  きょくえん
 「曲」はまがる、「垣」はかきねを意味してます。曲垣は肩甲骨の上部に位置しますが、ちょうどこの部分の骨の形が背中の垣根の曲がり角のように見えることから、このようなツボ名がついています。

 [治療の効果]
 五十肩、頸肩腕症候群など、首や肩、腕などのこりと痛みにすぐれた効果のあるツボです。
 曲垣と、首の後ろ側の上方にある天柱、風池の間付近には、肩甲骨と頭部をつないでいる筋肉があります。また、天柱、風池と肩の肩井とのラインにも筋肉が走っていて、この二つの筋肉のしこりが肩こりなどの症状となってあらわれます。
 そのため、これらのツボを結ぶ線に沿って、それぞれのツボに刺激を与えることで症状をおさえることができます。
 具体的には指圧やマッサージをしたり、また、家庭では温湿布をしたうえにドライヤーで温風を送って温めるなどの方法も効果的です。


121肩中兪  けんちゅうゆ
 「肩中」は肩外兪よりも内側にあるツボということをあらわしています。

 [治療の効果]
 どうもこのところ視力が落ちた、というような自覚症状があるときには、たいへん効果があります。かすみ目や疲れ目の際には、とくに効果があります。
 また、せきやたん、肩こりにも効果があります。


122肩外兪  けんがいゆ
 「肩」は肩甲骨、「外」は背骨をはさんだ外側の場所、という意味です。「兪」は東洋医学でいう病気の原因となるもの(邪気)が注ぐところを意味しています。

 [治療の効果]
 肩や背中、ひじが痛いときにこのツボを刺激するとすぐれた効果があります。
 また、かぜをひいてからだが痛んだり、だるい場合、けいれんを起こしたときなど、急な症状のときにもこのツボが活用されます。


123肩りょう   けんりょう
 「りょう」は骨のすみをあらわしています。したがって、このツボ名は肩の骨のすみに位置するツボであることを示しています。

 [治療の効果]
 重い荷物を持ったり無理な運動をした際など、肩が上がらなくなって痛んだり、あるいは腕がだるくなったりといった症状がでますが、それは肩にある三角筋という筋肉が軽い炎症を起こしたために生じます。三角筋とは、私たちが腕を真横に上げるうえで大  切な筋肉です。この筋肉の機能を調整するのが肩りょうというわけです。
 また、このツボは上腕三頭筋の調子を整えるツボでもあります。重いものを長時間、持ち続けたりするとひじが伸ばせないなどの症状が出ますが、これは上腕三頭筋が伸びきってしまい、血液の循環が悪くなることから起こる症状です。
 肩に重圧感があって腕があがらない、ひじが痛い、などといった症状の際に肩りょうを刺激すると、すぐれた効果があります。治療の際にはこのツボに加え、肩ぐう、臂臑をあわせて刺激すると、よりいっそうの効果を発揮します。また、脳卒中からくる半身不  随などの治療にも用います。


124天宗  てんそう
 「天」は天部(上半身)を、「宗」はみなもとをあらわしています。すなわちこのツボ名は、天部の背中側の、重要なエネルギーの源であることを意味しています。事実、上半身に疾患のある場合には、効果があります。

 [治療の効果]
 腕が上がらないほどの肩・ひじの痛みには、抜群の治療効果をあげるツボです。したがって五十肩、肩甲骨の痛み、上腕神経痛などに効果があります。ただし、何の異常もないのにこのツボに強い刺激を与えると、腕が上がらなくなったりするので注意が必 要です。また、このツボ付近の筋肉がこわばっても腕が上がらなくなることがあります。この場合は、軽い運動などで筋肉をほぐすとよいでしょう。
 このツボは女性の乳房と関係が深く、乳の出が少ない場合や乳腺炎にもすぐれた効果があります。
 また、胸の痛みにもすぐれた効果を発揮します。胸膜炎、肋間神経痛、ほかに顔面の腫れなどにも効果があります。
 このツボは、右と左ではその効用が少し違う場合もあります。右のツボは肝障害にも効果があり、左のツボは心臓病に効果が期待できます。


125天りょう  てんりょう
 「天」は天部、ここではおへそより上の部分をあらわし、「りょう」は角すみにあることをあらわしています。すなわち、このツボ名は肩のすみにあるツボを意味しています。

 [治療の効果]
 肩・ひじの痛み、首やうなじの急なこりと痛み、肩こりなどに効果があります。五十肩の治療によく用いられます。
 また、鎖骨のくぼみが痛んで汗が出ない場合や、頭痛、高血圧などの治療にも活用されます。
 不安や心配ごとなど、胸中に悩みごとがある場合にもこのツボを用いて、イライラや不安感をしずめ、気分を落ち着かせることができます。


126極泉  きょくせん
 「極」は棟木・高いという意味があり、そこから最上である・最終であるという意味になります。
 「泉」はいずみ・水の湧き出る源という意味です。
 極泉というツボ名は、高いところにあってからだをめぐるエネルギーが湧き出る泉であることをあらわしています。

 [治療の効果]
 わきの下の中央部は肩から腕に向かう神経の分かれ目にあたります。したがって、腕からわき腹にかけての痛みやひじの冷え、痛みなどに効果があります。頸肩腕症候群などの治療にはとくに効果があります。
 また、心臓病、不安、心配からくる胸さわぎ、動悸、からぜきなどにも効果があります。
 昔は腋臭にこのツボが効くとされ、瀉血治療(患者から一定量の血を取り除く治療)が広くおこなわれていました。このツボは強い刺激を与えたぐらいのほうが効果があるとされています。


127きょう白  きょうはく
 「きょう」ははさむという意味を、「白」は肺を意味しています。これは東洋医学では肺や心の臓などの臓器に色と五行を対応させていることに由来し、肺には、色では白、五行では金を対応させています。すなわちこのツボ名は、白つまり肺をはさんでいる位  置を示しています。
 ほかの対応としては、肝の臓には青・木を、心の臓には赤・火を、脾の臓には黄・土を、腎の臓には黒・水を配しています。

 [治療の効果]
 このツボは、肺を左右からはさむ位置にあり、呼吸器系の症状にすぐれた効果を発揮します。
 みぞおちから胸にかけての痛みや重苦しさ、せき、たん、動悸、息切れなどに効果があります。
 また、腕の神経痛、腕のしびれやまひ、テニスひじなどの痛み、肋間神経痛などにも効果があります。


128少海  しょうかい
 「少」はすくない・せまいを、「海」は水が大量に集まる場所を意味しています。
 東洋医学では、からだの各所のツボに、心身の活力となるエネルギーがめぐっていると考えています。ツボにはいろいろなからだの働きが関係し、その役割が決まっています。なかでもからだの要所要所には、このエネルギーが湧き出る場所という役割をも つツボがあるといわれています。そのためこのエネルギーは水にたとえられ、湧き出る場所は泉にたとえられています。さらには、泉からこんこんと湧き出た水がだんだんと集まり、量を増して川になり、ついには海に注ぐというようにもたとえられています。
 つまり、このツボ名は、最初は少量だったエネルギーが量を増し、ついには海に注ぎ込むところにあることを意味しています。慢性の疾患に治療効果があるツボです。

 [治療の効果]
 このツボはひじから前腕にかけての痛みや、わきの下の痛みにすぐれた効果があります。したがって、腕の神経痛、五十肩、首の後ろのこり、むち打ち症、ひじのしびれなどに活用されます。
 また、耳鳴り、脳貧血、めまい、嘔吐、歯痛、心臓疾患からくるさまざまな症状にも効果があります。


129曲沢  きょくたく
 「曲」はまがる、「沢」は草と水が接するくぼみを意味しています。すなわちこのツボ名は、曲がるところ、つまりひじの内側のくぼみに位置することをあらわしています。

 [治療の効果]
 ひじから手指の付近までに痛み、神経痛によく効くツボとして、広く治療に使われています。
 したがって、慢性関節リウマチ、手のしびれとこわばり、テニスひじによって起こる痛みなどにも効果を発揮します。
 また、発熱、腹痛、とくにみぞおちの痛み、のぼせなどにも活用します。
 一般的に関節というところは、痛みや腫れなどといった症状が出やすいところですこのため重要なツボも数多くありますので、そのようなツボの位置を覚えておくと、いざというときに役立ちます。


130尺沢  しゃくたく
 「尺」は距離をあらわす尺で、東洋医学では手首からひじまでの長さを一尺とします。これは尺貫法の尺とは異なるものです。「沢」は岸辺で、水草の茂るくぼみにあたります。
 つまりこのツボ名は手首からひじまでの長さをあらわすとともに、ひじの曲がり目のくぼみを水草の茂るくぼみに見立てたことに由来しています。

 [治療の効果]
 このツボは別名、鬼堂、もしくは鬼受と呼ばれています。鬼の字がつくツボは大切なツボとされ、精神のたかぶりをおさえる効果があるとされています。また、このツボで瀉血治療(患者から一定量の血を取り除く治療)をすると、鼻や目の疾患、頭痛に効果が あると昔からいわれています。
 手のほてりや痛み、こわばりなどをやわらげる効果があるため、慢性関節リウマチ、五十肩などの治療に用いられます。ひじの痛み、とくに上腕から前腕にかけての腫れ、しびれ、痛みにも効果があります。
 また、吐血、扁桃痛、ぜんそく、遺尿症、動悸、口の渇きやのどの渇き、痛みといった症状についてもよく効きます。


131臑会  じゅえ
 「臑」はひじ・上腕を意味し、「会」はあう・集合するという意味があります。臑会はいろいろなからだの機能と関係のあるエネルギーの道すじ(経絡)のいくつかが、体内で出会い、交差するところの表面に位置しているため、このような名前がついています。

 [治療の効果]
 指圧、マッサージのほか、鍼、お灸などの治療に活用されます。
 このツボは三角筋の縁に近い位置にあることから、上腕の神経痛や三角筋の痛みなどの症状、肩関節、五十肩などといった頸肩腕症候群にすぐれた効果があります。
 また、胃の腫れや首のこぶといったリンパ節の腫れにも効果があります。のどの腫れからくる熱、ズキズキする痛み、片まひにも効きます。


132臂臑  ひじゅ
 「臂」は前腕を、「臑」はひじ・上腕をあらわしています。つまりこのツボ名は、前腕・上腕の痛み、しびれなどによく効くツボであるという、その効果を示しています。

 [治療の効果]
 このツボの近くには親指や人差し指を動かす神経が通っています。そのため腕の機能を維持するうえではたいへん大切なツボです。したがって、五十肩、腕や手の痛み・しびれ・神経痛などにすぐれた効果があります。
 また、脳卒中などで腕が痛んで上がらない、首が動かない、むち打ち症、手の腫れやできものなどにも効果があります。


133天井  てんせい
 「天」は天部、ここではおへそより上の部分をあらわし、「井」は泉の湧く場所をあらわしています。したがって天部につながっているからだのエネルギーの湧く場所であることを、このツボはあらわしています。

 [治療の効果]
 このツボは、首の根もとから上腕までの症状を治療するのにたいへん効果を発揮します。とくに、五十肩や頸肩腕症候群などに効果があります。
 したがって、ひじから肩までの腕の痛み、ひじの関節炎、首のこりなどにも活用されます。
 また、のどの痛み、頭痛、鼻づまり、息苦しさ、せき、胸痛、腰痛、目じりの痛みなどにも効果があります。
 そのほか、のぼせ、驚いてドキドキする、ひきつけ、言語障害、リウマチ、難聴、食欲不振などにも効果があります。


134曲池  きょくち
 「曲」はまがる、「地」はいけ・たまるという意味があります。つまり、ひじの曲がるところに位置するツボで、池のように邪気(東洋医学でいう病気の原因)がたまってしまいがちな場所であることを示しています。

 [治療の効果]
 曲池は大腸の機能の働きを判断するうえでたいへん重要なツボです。もともと邪気がたまりやすい場所であることから、そこの流れをよくしてやることにより、大腸の邪気を取り除くことができるわけです。したがって、下痢や便秘に効果を発揮します。
 また、応用範囲が広く、テニスひじ、肩から腕にかけての痛みや重だるい感じ、むち打ち症、脳血管障害からくる腕のまひ、半身不随、脳卒中、息切れ、胸の周辺の痛み、頭痛、頭が重い、胃下垂、胃アトニーなどにも効果があります。
 このツボはまた、皮膚病、糖尿病などにも活用されるほか、冷えや女性の生理不順などにも効果があります。


135手の三里  てのさんり
 「三」は数字の三、東洋医学でいう「天の数」で幸運の数を意味します。「里」という漢字は分解すると田と土になり、稲という意味も含んでいます。稲は食糧であることから転じて、胃腸の病気によく効くツボであることを示しています。 
 手の三里というツボ名は、温溜というツボから三里(指幅三本ほど)の場所にあることを示し、胃腸とたいへん関係深いことをあらわしています。
 
 [治療の効果]
 胃腸の症状の治療に用いられるほか、昔からできたものにたいへんよく効くとされており、良性の腫瘍に効果を示します。顔に吹き出ものやにきび、湿疹があるときに、とくによく用いられます。
 また、歯茎や歯の痛み、テニスひじ、腕の神経痛、手やひじ・顔面のまひ、胃弱からくるゲップ、胃けいれん、胸やけ、のどの腫れ・痛み、扁桃炎、下痢、糖尿病などにも効果があります。
 このツボは別名、鬼邪とも呼ばれますが、このように名前に鬼の字がついているツボは、昔から神経をしずめる効果があるとされています。したがって、このツボは精神の安定にも活用されます。


136孔最 こうさい
 「孔」という字は穴、すなわちツボのことを意味しています。「最」はもっとも(最も)という意味です。
 肺経の症状のときには、邪気(東洋医学でいう病気の原因)がここに最も集まるといわれます。したがって呼吸器系の症状に著しい効果をあげます。

 [治療の効果]
 呼吸器の不調時に感じるこりや痛みなどによく反応し、呼吸器の症状にすぐれた効果を発揮します。慢性気管支炎、胸膜炎、ぜんそく、肺気腫など呼吸器系病のせきをしずめ、急にせき込んだような場合には、このツボを押さえるだけでもだいぶ楽になります。
 また、喀血、たん、のどの腫れ・痛み、鼻づまり、前腕の冷え、ひじ関節部の痛み、歯痛の治療にも効果があります。発熱しているのに汗が出ないような場合にもよく活用されます。
 痔、脱肛、直腸脱、抜け毛、円形脱毛症の治療にも応用されます。


137げき門  げきもん
 「げき」はすきま、「門」は出入り口です。すなわち骨と肉のすきまに位置し、東洋医学で病気の原因になるものと考えられている邪気が出入りするところを意味します。

 [治療の効果]
 手のしびれや痛み、神経痛など、ひじや腕の痛みに効果があり、むち打ち症の治療にも用いられます。
 また、げき門を刺激することで、自律神経系のたかぶりを落ち着かせる効果があります。したがって、自律神経によってコントロールされている心臓や血管の症状に効果があります。鼻血や吐血、驚いたり恐れたりといったときに、精神を安定させるうえでも活用できます。
 また、とくに心臓に関する症状にたいへん効果を発揮するツボとしても知られ、動悸や息切れ、息苦しさ、胸の痛みなどの治療に効果があります。心臓に不調を感じたときに、このツボを三~五秒圧迫しては一~二秒休むという動作を数回くり返すだけでも、だいぶ楽になります。
 胃腸の病気や低血圧症、むち打ち症などの治療にも活用されることがあります。


138内関  ないかん
 「内」はうちを、「関」はせきをあらわしています。したがってこのツボ名は、手の内側にあって、からだの働きと関係のあるツボの道すじ(経絡)をめぐっているエネルギーをせき止める場所であることを示しています。また手の甲側にある外関と相対するツボでもあります。

 [治療の効果]
 心臓発作などの場合に効果があります。また、慢性胃炎や不眠症、イライラ、ヒステリー、しゃっくりなどといった症状や、目の充血、みぞおちの痛み、腕や手の痛み・しびれ、神経痛などにも効果を発揮します。
 胆石症や歯痛、糖尿病や低血圧症からくるだるさなどにも用いられることがあります。
 近ごろでは呼吸器系および循環器系の疾患の際、専門医の手によってこのツボに鍼をし、そこに低周波の電気を流して治療をするケースが多くなっています。


139列缺  れつけつ
 「列」は軍隊などで兵士が隊を整え進んでいく様をあらわします。「缺」は欠ける・いままであったものの一部が欠けて不足するという意味をあらわしています。
 列缺というツボ名は、肺の機能に関係する道すじ(経絡)を流れていたエネルギーがここを分かれ目として、一部分が体内の別の道すじに流れてしまうことをあらわしています。

 [治療の効果]
 せき、たん、慢性気管支炎、頭痛、鼻の疾患、背や胸が冷えて息苦しさを覚えるような場合に効果があります。
 また、顔や腕のまひや痛み、半身不随、手のひらのほてりなどにも効果を発揮します。
 また、このツボは瀉血治療(患者から一定量の血を取り除く治療)をすると非常に効果があるとされています。


140陰げき  いんげき
 「陰」は陰陽の陰、手の内側を意味し、「げき」はすきまをあらわしています。げきという場所は骨と肉のすきまで多くの神経がすじの間にあらわれ出ているところであり、刺激を与えるのに適当な場所です。

 [治療の効果]
 げきという場所は、心臓をめぐる経水と呼ばれるからだのエネルギーの流れが、つまったりたまったりしやすい場所だとされています。そのため、このツボに刺激を与えて経水の流れをスムーズにしてやると、循環器系とくに心臓の症状に効果があります。鍼やお灸での治療に使用されますが、指圧の刺激でも効果があります。また、とくに急性の症状に効果を発揮します。狭心症の発作時にはこの陰げきを圧迫すると痛みがやわらぎます。
 動悸、息切れにもたいへんよく効きます。
 また、みぞおちの痛み、鼻づまり、疲れ目、子どものひきつけ、腕の小指側の側面の痛み、血液の循環不良からくるのぼせなどの治療にも効果がみられます。
 鼻血や胃からの出血時に止血するうえでも効果を発揮します。


141温溜  おんる
 「温」はあたたかい・やわらぐを、「溜」はたまるをあらわしています。このツボ名はたまってしまった経水(エネルギーの流れ)をやわらげるという意味を示しています。熱病の際にはこのツボに邪気(東洋医学でいう病気の原因)がたまるといわれています。
 このツボは別名、蛇頭とも呼ばれます。これは手のひらを力いっぱい握ったとき、ひじからこのツボのあたりまで盛り上がる筋肉の様が、まるで蛇の頭の部分のように見えるところに由来しています。

 [治療の効果]
 手足の筋肉痛、神経痛、肩からひじや背中にかけてのこわばりと痛み、半身まひ、のどの腫れ、歯痛、痔、口内炎、鼻血、顔面まひなどの治療に活用されています。
 また、急性の腸カタルで発熱・下痢をしているような場合にはとくによく用いられ、効果を発揮します。躁病などにも効果があります。


142外関  がいかん
 「外」はそとを、「関」はせき、せき止めることを意味しています。すなわちこのツボ名は、からだの機能に関係のある道すじ(経絡)を流れていたエネルギーがせき止められる場所で、手の甲側にあるという意味をあらわしています。
 また、手のひら側にある内関と表裏一体の関係にあることも、このツボ名は意味しています。

 [治療の効果]
 難聴、耳だれといった症状に非常によく効きます。
 また脳卒中からくる手足のまひ・痛み、半身不随などにもすぐれた効果を発揮します。
 指の痛みで物が握れない場合や、前腕の痛み、頭痛、皮膚の症状などにも活用されます。


143養老  ようろう
 「養」はやしなう・そだてるを、「老」はとしより・おとろえるをあらわしています。
 したがって養老とは、文字どおり老いを養うという意味をあらわし、お年寄りの養生灸をすえる場所であることを示しています。
 
 [治療の効果]
 このツボは顔や背中にできるできものの特効ツボで、指圧やお灸をすえるとすぐれた効果があります。
 また、眼精疲労からくるかすみ目、視力低下、耳の痛み、肩やひじの痛みにも活用されることがあります。


144少衝  しょうしょう
 「衝」はみちに突き当りそれ以上進めない末端部のことをあらわしています。少衝というツボ名は、からだの中のエネルギーの流れるツボの道すじ(経絡)のうち、少陰心経と呼ばれるものが、手のこのツボの位置で終わっていることを示しています。

 [治療の効果]
 心臓の病気にはたいへん効果のあるツボとして知られ、鍼治療やお灸に活用されます。とくに、胸のだん中とともにお灸をすえると、動悸が激しいときなどにすぐれた効果が期待できます。手・口のほてり、のぼせ、熱病、息切れ、胸苦しさ、嘔吐したあとののどの渇き、白目の黄ばみなどにも活用されます。
 また、腕の痛みではときに小指側が痛むときに用いて効果がみられます。


145神門  しんもん
 「神」はかみ・こころをあらわします。神霊の宿るところを東洋医学では心の臓と考えており、ここに「神」すなわち「心」が宿ると説いています。したがって、心の宿る心の臓に通ずる出入り口がこのツボというわけです。

 [治療の効果] 
 このツボは心臓の異常を知るうえでたいへん重要です。神門を調べることによって心臓の異常の有無を知ることができます。したがって動悸が激しいような場合に活用されます。
 また、疲れやすい、だるい、節々が痛い、といったときにもすぐれた効果があります。
 嘔吐、吐血、口の中の渇きと食欲不振、発熱して寒気がする、ひじや手は冷えているのに顔がほてる、みぞおちが痛い、胸苦しい、腕のしびれや痛み、尿をもらす、疲れ目、低血圧症、便秘などにも効果があります。そのほか、イライラ、ヒステりー、ノイローゼ、神経症などといった心の症状にも活用されます。
 また、このツボ妊娠すると大きく脈うちはじめるといわれてきたことから、昔はその判断材料にされていました。


146大陵  だいりょう
 「大」にはたいせつ・重んじるという意味があります。「陵」は大きな丘という意味で、このツボが手首の盛り上がった部分の境目にある重要なツボであることを示しています。

 [治療の効果]
 かなり広範囲にわたって使用されるツボです。手のひらのほてり、腕の痛みやしびれ、慢性関節リウマチ、半身不随などに効果をあげるほか、わきの下やのどの腫れ、みぞおちの痛み、心身症やヒステリー、躁の状態など、心の症状にも効果があるとされています。
 手首のねんざや関節の痛みは、ここを中心に治療がおこなわれます。
 また、疥癬、口の渇き、尿の色が赤いような場合にも活用できるとされています。
 心臓の病気にもよく活用されます。


147太淵  たいえん
 「太」には重要・さかんという意味があり、「淵」はふち・よどみという意味です。したがって、水がとどまり、よどんで大きな淵になっていることをあらわしています。このツボは肺の機能に関係があり、肺の調子が悪いときには、このツボにからだをめぐるエネルギーがまるで大きな淵のようによどんでいるとされています。

 [治療の効果]
 せき、たん、胸の痛みなど呼吸器系の病気に活用されます。
 一方、消化器系の機能が衰えたような場合にこのツボを刺激すると、効果をあげる場合があることも知られています。
 ぜんそくの苦しみをやわらげるには、このツボにお灸をすえると効果があります。
 そのほか、疲れやすい、倦怠感があるといった場合や、関節の痛みなどにも効果があります。そのため、慢性関節リウマチや手のねんざ、肩や背中の痛みの治療にも使用されます。
 また、しみ、そばかす、抜け毛、円形脱毛症にも効果があります。目の病気にも効くとされています。


148魚際  ぎょさい
 親指の根もとにあるふくらみは、ちょうどその格好がさかなの形に似ていることから魚腹と呼ばれます。この魚腹のきわ(際)に位置することから魚際というツボ名がついています。

 [治療の効果]
 このツボがある親指の根もとのふくらみ(魚腹)の色で、胃腸の調子を判断することができるといわれています。
 たとえば、下痢の症状があるとき、とくに胃腸の調子が思わしくないときには青いすじとなってあらわれます。
 また、肝臓に異常があると、肝斑といってこの部分が赤くなります。慢性の疾患の場合には経脈が黒く見えるともいわれています。
 これらのように、このツボは胃腸や肝臓との関係が深く、暴飲暴食で胃腸や肝臓の調子をくずしたときや疲れているときに、ここを刺激すると効果があります。


149商陽  しょうよう
 「商」は東洋医学で肺の臓の機能に関係があることを意味しています。
 また、手の甲と手のひらとでは、手の甲を陽、手のひらを陰とすることから、「陽」の字がつく商陽は、手の甲側にあることがわかります。
 
 [治療の効果]
 みぞおちの重苦しさなどの治療に効果のある大切なツボです。
 このツボはまた、下痢の症状にすぐれた効果があります。それもただ下痢ぎみというよりは、かぜをひいたときの発熱にともなって下痢をしたような場合にとくに効果を発揮します。
 せき、たん、口の渇き、耳鳴り、難聴、疲れ目、視力低下、歯の痛み、胸苦しさなどにも活用されることがあります。
 また急性期で症状が軽いときには、扁桃腺炎、耳鳴り、脳充血などの際に、専門医のもとでこのツボから血をとるとよいともされています。ただし、それをおこなう場合は、あくまでも急性期で軽症時だけに用いるようにします。


150合谷
 このツボは親指と人差し指のちょうど分かれ目のくぼみにあります。合谷という名称は、そのくぼみがまるで谷のようであり、そこからからだの中をめぐる活力となるエネルギーが湧き出ていることをあらわしています。
 また、親指と人差し指を大きく広げると、この格好がまるで虎が大きく口を開けたように見えることから、このツボを虎口とも呼びます。

 [治療の効果]
 幅広い症状に活用され、効果をあげるツボです。
 頭痛、歯・歯茎の痛み、口内炎、のどの腫れ・痛み、発熱、疲れ目による視力低下、耳鳴り、神経痛、手のしびれや痛み、鼻血、胃炎、胃けいれん、腹痛、下痢、便秘などのさまざまな症状に効果があります。
 ぜんそくやむくみ、乗り物酔いや二日酔いによる気分の悪さ、だるさと疲れなどにも活用されるツボです。
 また、女性の生理に関係する症状に効果があり、月経困難症、月経痛、月経不順などの治療にも使用されます。
 てんかん、心身症、子どものひきつけなどといった脳神経系の症状や、にきび、吹き出もの、しみ、そばかす、抜け毛、円形脱毛症、また、高血圧症や低血圧症、、それからくる眼底出血、老人性白内障などにも効果があります。


151陽谿  ようけい
 「陽」は陰陽の陽出、手の甲のことをあらわし、「谿」は谷川、谿谷(渓谷)で、大きな谷あいということをあらわしています。
 すなわち、手首の手の甲側の、親指の下に出る二本のすじの間のくぼんだところにこのツボが位置することから、その格好をとり囲まれた谿谷にたとえているのです。
 また、このほかにも、骨やすじに囲まれたくぼみ(谿谷)にあるツボの名前には、この谿の字がよく使われています。

 [治療の効果] 
 このツボは、息苦しさ、せき、冷えなどの治療に用いられます。
 また、のどの痛み、歯痛、手首の痛み、耳鳴り、難聴、中風、ひじや前腕のしびれ、半身不随などにも効果があります。
 躁病に用いても効果があります。


152陽池  ようち
 「陽」は陰陽の陽で手の甲のことをあらわし、「池」はいけをあらわしています。つまり東洋医学で病気の原因と考えられる邪気がたまりやすい場所であることをを示しています。

 [治療の効果]
 痛みで腕が上がらない、五十肩など、肩から腕にかけた症状に効果があります。とくに手根関節痛、リウマチ、腕の神経痛の治療などによく効きます。
 また、だるさや口の、頻尿などといった症状やしみ、そばかす、湿疹、じんま疹、にきび、吹き出物などにも効果があります。抜け毛や円形脱毛症にも効果があります。
 このツボは子宮の位置の異常をなおすのにすぐれた効果のあるツボとしても知られ、帯下(おりもの)などの際にも活用されます。インポテンツの治療に用いられることもあります。


153陽谷  ようこく
 「陽」は陰陽の陽を、「谷」は渓谷のうち険しく小さい谷あい・谷間をあらわしています。すなわち、手の陽側、つまり手の甲側で、手首の上、小指側にあるくぼみに位置することをこのツボ名は示しています。

 [治療の効果]
 手首のねんざの治療に用いられるほか、いろいろな症状の治療に活用されます。
 親指の根元にできるくぼみの中のツボである陽谿が、陽の渓谷(淫谷)であることから、この陽谷と陽谿は互いに関連づけて治療にもちいられています。
 陽谷は頭痛、歯痛、頬から耳や首の周辺にかけての痛み、肋間神経痛、手の神経痛に効果がありますが、その急性時の痛み、発熱時には、陽谿とあわせて、治療に用いることがあります。大腸・小腸の調子を判断するうえでも重要です。
 また、めまい、立ちくらみ、耳鳴りなどにも活用されます。


154少沢  しょうたく
 「少」はすくない・小さいという意味ですが、ここでは小腸のこともあらわしています。「沢」は川岸のように草と水が接して潤うくぼみを意味しています。すなわちこのツボ名は、骨と肉とが接するくぼみにあるという場所をあらわすとともに、小腸の機能と関係あ るツボの道すじ(経絡)を潤していることも示しています。

 [治療の効果]
 目の疾患、とくに、白内障、緑内障、目の星などの症状に効果があります。ただしその治療は、家庭療法ではおこなえないので、必ず専門のツボ療法の医師に相談しましょう。
 また、発熱して寒けはあるのに汗が出ない、せき、のどの腫れ・痛み、動悸、息切れ、胸苦しさ、ひじの痛み、首すじにかけてのこり、頭痛・頭重、よだれや唾がよく出る、などといった場合にも、このツボを刺激すると効果があります。
 東洋医学では手足の指先、つまり爪の端にあるツボは半身不随の治療にたいへん効果があるとされています。その治療に際には左半身のまひとしびれには左のツボ、右半身のまひとしびれには右のツボというふうに使用します。小指の爪のつけ根にある 少沢も、半身不随の効果をあげるツボのひとつといえます。



足のツボ
155陰廉  いんれん
 「陰」は、ここでは陰部・陰器のことです。「廉」は、角すみ・かたわらなどの意味があります。したがって陰廉というツボ名は、陰部の角すみにあり、陰部の病気を治すという意味になります。

 [治療の効果]
 婦人病によく効くツボです。とくに不妊症に効果があることで知られていますが、月経の異常にもよく効きます。月経異常の治療は陰廉だけでなく、腎兪、上りょう、次りょう、中りょう、巨闕、太谿などと併用すると効果が増します。
 ほかにも、睾丸炎、閉鎖神経痛、下肢の痛み、腰の冷え、下腹の張り、インポテンツなどに効果があります。


156衝門  しょうもん
 「衝」は通り道・むかう・あたる・突き進むという意味があり、ここでは衝動・拍動を指しています。「門」は入り口のことです。
 衝門は動脈の拍動部にあり、体内のエネルギーの流れが腹部に向かって進む門戸(出入り口)にあたることからこの名がついたとされています。

 [治療の効果]
 おへその下からみぞおちにかけての急激な痛みによく効き、子宮けいれんや、月経痛の突き上げるような痛みにたいへん効果があります。更年期あるいは冷え性の女性が風呂あがりや暑気あたりのときに、おへそからみぞおちにかけての痛みを訴える場合がありますが、これは自律神経の失調で、頭に急激に血がのぼるために起こります。東洋医学ではこの症状を上衝といい、冷えとのぼせにも効果がある衝門のツボ名は、ここからも由来しているといわれています。
 また、このツボの付近は男性の生殖器病や婦人病のひきつるような痛み・圧痛が出るところでもあります。そのため治療に用いると、精巣炎、脱腸・子宮位置異常から起こる痛みにも効果が期待できます。ほかに、幼児のひきつけ、動悸がして息苦しい、腹に水がたまるといった症状の治療に用いることもあります。


157伏兎  ふくと
 「伏」は、ふす・ふせるという意味、「兎」は、ウサギのことです。
 このツボは足の筋肉が盛り上がっているところにあり、それが地面に伏せたウサギの背中のように見えることから伏兎という名がついたとされています。
 ツボ名や古代の医学用語の中には、この伏兎のように、古代の中国人の連想からつけられたものがすくなくありません。

 [治療の効果]
 ももの肉離れや、疲れて筋肉が痛む、膝が冷えて痛む、脚気がひどく歩くことができない、腹部が張る、胸が痛む、中風で半身不随となったときなどに使用して効果があります。
 そのほか足の神経痛、座骨神経痛などにも効果があり、胃腸の調子が悪いときの治療に用いる場合もあります。


158箕門  きもん
 「箕」は、みのことで、穀物に混じっているゴミをふるい分けるための農具を指しています。そこから転じて、けがれを取り除くという意味になります。一方、「門」は出入り口のことです。
 したがって、箕門は、からだの中に入ってきて混じるさまざまな異物、すなわちじゃき(東洋医学でいう病気の原因)を取り除くツボということになります。
 また「箕」という文字は、両足をそろえて座る形のことも指しています。このことから、足にまとわりつく邪気を取り除き、きちんと両足をそろえて座れるようにするツボがこの箕門である、とする解釈もあります。

 [治療の効果]
 肉離れなど、太ももの痛みを治療するほか、婦人病や、精巣炎など男性の生殖器病に効果があります。
 そのほか、鼠径ヘルニア、閉鎖神経痛、足の静脈瘤、痔、遺尿症などの治療に用いると、鼠径部の腫れと痛み、尿漏れ、排尿困難などの症状をやわれげる効果があります。


159血海  けっかい
 「血」は、ち・血の道です。「海」は、うみ・わた・水の集まるところという意味です。したがって血海は血の海を指し、血の道に関する病気を治すツボです。
 おへその下の所に気海というツボがありますが、あお向けに寝て足を六十度ほどに開くと、両足の血海と気海が正三角形をつくります。東洋医学では「生きるエネルギー」を気といいますが、血のとどこおりを取り除くのが血海であるなら、気のとどこおりを取り除くのは気海であるというわけです。

 [治療の効果]
 血海は血のとどこおりを取り除き、血液の循環をよくしてくれるツボです。
 したがって、女性特有の生理から起こるいろいろな症状にたいへん効果があります。
 たとえば、月経不順、月経痛、下腹の張り、むくみ、膝の痛み、腰の痛み、肩こり、頭痛などによく効きます。
 これらの症状は、東洋医学ではお血といわれ、古い血が原因となって起こる症状とされています。お血の症状が出ると血海のツボに必ず圧痛がみられますが、これは、血海を処置するとすみやかにとれます。
 血行をよくするツボなので、そのほかにも更年期障害、貧血症、淋病、インポテンツなどにもよく効き、湿疹や肌の美容にも有効といえます。太ももの痛みに用いても効果的です。



160内膝眼  うちしつがn
 膝の皿をはさんで、反対側にある外膝眼と対になっているツボです。内膝眼と外膝眼という二つのツボ名は、それぞれが膝の内側と外側にあって、膝を子牛の顔に見立てたとき、目の部分のように見えることからきています。

 [治療の効果]
 膝の痛みにたいへん効果があるので、慢性関節リウマチや変形性膝関節症などの治療に用いられます。また、痛みをやわらげるでけでなく、膝関節症などで水がたまっている場合にもよく効きます。
 膝の痛みの治療は、老化が原因のときは膝の内側から痛むことが多いので内膝眼を、からだをひねるなど物理的な原因のときは膝の外側が痛むことが多いので外膝眼を刺激するとよく効きます。内膝眼への刺激は、指圧だけでなくお灸も効果的です。
 そのほか、腰痛などの治療にも用います。


161外膝眼  そとしつがん
 膝の皿をはさんで、反対側にある内膝眼と対になっているツボです。内膝眼と外膝眼という二つのツボ名は、それぞれが膝の内側と外側にあって、膝を子牛の顔に見立てたとき、目の部分のように見えることからきています。

 [治療の効果]
 膝の痛みにたいへん効果があるので、慢性関節リウマチや変形性膝関節症などの治療に用います。また、痛みをやわらげるだけでなく、膝関節症などで水がたまっている場合にもよく効きます。
 ゴルフなどで体勢をくずし、からだをねじってしまったために膝が痛むというような場合には、膝の外側が痛むことが多いものです。こうした場合に外側が痛むことが多いものです。こうした場合に外膝眼へ刺激を与えると、たいへん効果があります。外膝眼への刺激は、指圧だけでなく、お灸も効果的です。
 そのほか、腰痛などの治療にも用います。


162梁丘  りょうきゅう
 「梁」とは家屋の屋根を支えている横木、「丘」はおかを意味しています。
 膝をぐっと伸ばすと腸脛靭帯が盛り上がりますが、この靭帯は直立したときにからだを支える重要な結合組織の靭帯です。
 梁丘という名前は、この腸脛靭帯の盛り上がりのきわにあるためにつけられました。

 [治療の効果]
 太ももや膝の痛みに用いるほか、胃の急性症状をしずめるのにたいへん効果があります。急性の腰痛、胃けいれんの発作のとき、このツボで治療するときわめて楽になります。
 そのほか、足・腰・膝の病気、半身不随、膝の関節炎、リウマチ、座骨神経痛、つわりによる胃腸の症状、下痢の治療にも使用されます。
 神経性胃炎、慢性的な胃弱、腹痛などの急性の症状の場合や下痢止めには、お灸が効果的です。


163とく鼻  とくび
 「とく」は子牛、「鼻」は、はなのことです。このツボは、膝蓋骨を額、膝の両脇を結ぶ腱を子牛の鼻にたとえて、その膝蓋腱の付着部にあるという意味の名前になっています。
 「とく」の字には子牛という意味のほかに、大いなる窩(あな)という意味もあります。

 [治療の効果]
 膝の関節炎、関節症、リウマチなどの膝の痛み、水腫、脚気などに効果があります。ねんざや、膝の動きをよくしたい場合にも用います。


164承扶  しょうふ
 「承」は、助ける・救う・力を貸して支える、転じて、支えて保護する・うけたまわるという意味です。「扶」は、助ける・守る・救うの意味です。
 つまり、下肢の機能を助け、守るツボという意味になります。

 [治療の効果]
 大腿部の内側から陰部にかけての痛みとこわばり、ももの肉離れ、長く続いている痔、便や尿の出が悪い場合などに用いて効果があります。
 足に痛みがあるとき、お尻の下の横じわの内側を軽く押すと、コリっとしたしこりができている場合があります。これは、足の痛いところをかばおうとして臀部の筋肉が疲れるためにできるのです。このしこりをマッサージや指圧、お灸などでほぐすと、足の痛みが軽くなります。
 また、承扶は、座骨神経が骨盤の中から外へ出て行く場所なので、ももの後ろから足全体にかけて痛むというような、座骨神経痛の症状にもよく効きます。


165殷門  いんもん
 「殷」は、盛んなりから転じて、多い・当たる・真ん中・ねんごろという意味です。一方、「門」は、東洋医学で病気の原因と考えられている邪気が出入りするところです。
 したがって、このツボ名は、ももの中央に位置し、邪気に対して著しい効果のあるツボという意味になります。

 [治療の効果]
 殷門は座骨神経痛の特効ツボとしてよく知られています。慢性の座骨神経痛には殷門へのお灸が非常に効果的です。症状としては、もものつけ根から大腿部の痛みや、だるい、疲れやすい、こむら返りなどの症状に効果があります。
 そのほか、腰や背中の痛み、腰痛、足の腫れ、下肢のまひの治療にも使用されています。


166陰谷  いんこく
 「陰谷」は、足の後ろ側の谷という意味です。このツボが足の後ろ側の谷のようなところ、すなわち、膝の裏のくぼみにあることを示しています。

 [治療の効果]
 帯下(おりもの)が多い場合や、インポテンツなど、男女の性器の疾患に有効です。
 ももの肉離れ、膝関節炎、リウマチ、腎機能の低下、精力減退によって膝がガクガクする症状の治療にもよく使用します。
 非常に驚いたりすると、からだの力が抜けてへなへなと崩れるように座り込むことがあります。腰を抜かすといった状態ですが、これは腰ではなくて、膝の力が抜けてしまうことによって起こります。このようなときに陰谷を刺激すると効果があります。そのほか 鼠径ヘルニアや、男性の場合は下腹部・陰嚢・陰部の腫れ、女性の場合は下腹部の張り・生理不順・月経時の出血が多い、などの症状に効果があります。


167委中  いちゅう
 「委」には、ゆだねる・まかす・したがう・曲がるといった意味があります。「中」は、中央・真ん中という意味です。つまり委中というrツボ名は、膝の関節の曲がり目の中央にあるということをあらわしています。

 [治療の効果]
 足の痛みを取り除くのに重要なツボとされています。
 変形性膝関節症、座骨神経痛、腰痛、ふくらはぎのひきつりに、すぐれた効果が期待できます。そのほか、婦人科系の病気、高血圧症、脳卒中、リウマチにもよく効きます。
 変形性膝関節症は、中高年の女性に多い病気で、これにかかると膝をかばうために、ふくらはぎ・足・腰・殿部などに痛みや疲れが出ます。
 この場合、原因となっている膝の痛みを治療することが大切になってきますが、委中への治療はたいへん効果があります。
 マッサージや指圧をおこなうときは、力を入れすぎないように注意します。軽くなでるくらいで十分効果が出ます。

168委陽  いよう
 「委」は、ゆだねるから転じて、まかす・したがう・曲がるなどの意味があります。
 「陽」は陰陽の陽です。大腿部(太もも)の外側を陽、内側を陰とするころから、
委陽の陽は、このツボが大腿部の外側にあることをあらわしています。
 したがって、委陽というツボ名は、膝の後ろの曲がり目の外側にあるという意味になります。

 [治療の効果]
 背中や腰が痛い、膝の後ろが痛む、尿が出にくい、けいれん性の痛み、下腹がかたい、ももの肉離れ、
座骨神経痛、膀胱炎などの症状にたいへんよく効きます。とくに、老化のために膝の関節の骨が変形し、
膝のまわりのすじや筋肉がひきつったり、あるい はゆるんだりして、
血の循環が悪くなることなどから起こる変形性膝関節症に用いられることが多いツボです。
 委陽はマッサージ、指圧ともによく効きますが、さらに鍼やお灸で治療をおこなうと、効果が倍増します。


169曲泉  きょくせん
 「曲」はまがるの意味で、膝関節の曲がり目を指します。「泉」は、いずみ・水源のことです。
 したがって曲泉は、膝関節の曲がり目を指し、心身の活力のもとになるエネルギーの湧き出るところをあらわしています。

 [治療の効果]
 水分、血液など、体液と関係する症状に対して効果があります。
 たとえば、水っぽくゆるい便が出る下痢のときや、股間が痛んで尿が出にくいときなどにこのツボを刺激すると、
症状がやわらぎます。したがって、病名でいうと尿道炎、膀胱炎、淋病などによる排尿時の痛みや頻尿、夜尿症の治療に用います。
 また、血液の循環に関する症状として、のぼせや鼻血などの場合に用い、ことに女性の月経に関係する症状や、
月経不順、経血の量の異常、不妊症を治療する場合に用います。
 そのほかにも、いろいろな病気が原因となって起こる足の痛みとだるさをやわらげます。
とくに太ももの内側から、股へかけての痛み、すねの痛み、足が動かしにくいといった症状や、精力の減退がみられる場合の治療に効果があります。


170足の三里  あしのさんり
 「三」は数字の三、東洋医学でいう「天の数」で、大切な幸運の数を意味します。
「里」という字は分解すると田と土になり、稲という意味も含んでいます。それから転じて食べるものと関係すると考え、胃腸のことも示します。
 したがって、胃腸の症状に深い関係がある大切なツボという意味になります。

 [治療の効果]
 たいへん広い範囲にわたって効果が期待できる大切なツボのひとつです。
 胃けいれん、胃炎、胃アトニー、胃下垂、胃弱から起こる胸やけ・ゲップ、吐き気などの胃疾患、肝臓・胆嚢の症状、
糖尿病からくるからだのだるさややせる・のどが渇く・むくむなどの症状、慢性の下痢や便秘といった、
消化器系の症状一般や代謝異常に効 果があります。足・膝・腰の病気にもよく効き、脚気、各種神経痛、
半身不随、脳卒中から起こる足や膝の疲れ、こむら返り、座骨神経痛、ぎっくり腰の治療に有効です。
 また、呼吸器の疾患、心臓病で体力が落ちているときに、消化機能を回復させ、栄養を補給するために用いる場合もあります。
神経衰弱、ヒステリー、神経症、精神の動揺をしずめるときにも用います。精神的原因で起こるインポテンツの治療にも用いること があります。


171陰陵泉  いんりょうせん
 「陰」は陰の側の意味で、「陵」は丘のことです。「泉」は、いずみ・水源を指します。
 つまり陰陵泉というツボ名は、陰の側すなわち足の内側にあり、骨の小高い丘のようなところにあって、
からだをめぐるエネルギーの湧き出るところという意味になります。

 [治療の効果]
 広い範囲の疾患に効果が期待できます。
 主に腰・膝・足の疾患、女性の生殖器、泌尿器、胃腸の病気に使用します。たとえば、手足の冷え、
冷えて膝が痛む、腹が痛む、食欲がない、わき腹のあたりが重苦しい、息苦しい、のぼせる、腰が痛い、
湿疹、婦人病一般、糖尿病、遺尿症、閉尿、更年期 障害などに効果があります。
 とくに陰陵泉は冷えが原因となる症状によく効くとされています。血圧の異常で手足が冷えたり、
女性の冷え性、寝冷えして腹が痛い、下痢をしているときなどにこのツボを使用します。
 反対に熱や腫れが原因となる場合、日射病で頭痛があるときなどは陽陵泉で治療します。


172地機  ちき
 「地」は、とち・つち・土で、土は東洋医学でいう五行の脾の臓・胃の腑のことをあらわします。
 「機」は、からくり・事の変化・物事の重要なこと・機密という意味です。
 つまり、消化器病など内臓の働きの異常があらわれる重要なツボという意味になります。

 [治療の効果]
 精力減退、大腿神経痛、下肢のまひ、脚気、下腿の水腫、膝関節炎などの治療に用いられ、効果があります。
また、大腸炎、消化不良、急性胃炎、胃潰瘍、胃酸過多症、糖尿病など内臓の病気や代謝に関係のある病気にも使用されます。
 そのほか、むくみで食事がのどを通らない、尿が出ない、腰痛、わき腹の腫れ、
精力減退、心身症、女性の腹部にできるかたいしこり、股から膝にかけての痛み、といった症状にも効果があります。


173中都  ちゅうと
 「中」はあたる、「都」はみやこ、転じて渾という字のもつ意味に通じ、水の勢いよく流れるさまをあらわします。別名、中げきともいいます。

 [治療の効果]
 慢性の腸の病気や、腹部にしこりがあって痛むような場合に効果があります。
 また、このツボは生殖器系に症状があらわれたときにも効果があります。
 とくに女性の場合、出産後に出血やおりものが続いて止まらない、子宮や卵巣の病気で出血が止まらない、
といった場合に用いる止血の特効ツボでもあります。
 膝の痛みが足の下の方までひびくようなときにも有効です。


174蠡溝  れいこう
 「蠡」は木を食べる虫のことをあらわします。下腿部の骨が木の幹にたとえられることから、
蠡溝というツボ名は、下腿部を侵す邪気(東洋医学でいう病気の原因)がとどこおる溝とぴう意味をあらわしています。

 [治療の効果]
 前立腺炎などで尿が出ない、出にくい、おへその下がかたい、下腹部が腫れて痛む、
あくびがたびたび出て気分が悪い、のどの中が息づまって背中がこる、といったときに効果があるツボです。
 また、月経の不調や帯下(おりもの)を止めるなど、婦人科系の疾患にもたいへんよい効果を示します。
 そのほか蠡溝への刺激は、肝臓の機能や胆嚢の機能を高める働きもあります。


175承筋  しょうきん
 「承」の字は、受ける・うけたまわる・ささげるなどの意味があります。「筋」はすじで、文字どおりの意味です。
 つまり承筋という名は、ふくらはぎのすじをうけたまわるという意味になり、
この場所に病気が起こったときの特効ツボであることをあらわしています。

 [治療の効果]
 承筋はこむら返りに効果があります。海水浴などのときにこむら返りが起こると、溺れる恐れがありたいへん危険ですが、
あわてずに承筋の部分を指圧するとしだいにおさまってきます。痛みがひどい場合には、なでるだけでも効果があります。
こむら返りは  癖になる場合があるので、すぐおさまってもマッサージや指圧、お灸や鍼でじっくり治療しておくとよいでしょう。
 そのほかに、腰から背中が急に痛む、便秘、痔、手足がまひして動かない、鼻血、急な嘔吐、下痢といった症状に効果があります。
 また、座骨神経痛、あるいは膝から下、ふくらはぎなどがだるい場合にも用いられます。
 マッサージ、指圧のほか、お灸の治療がよく効きます。


176承山  しょうざん
 「承」は、受ける・うけたまわる・ささげるなどの意味があります。「山」は、やま・丘・うず高きものをあらわしています。
以上のことから承山は、こんもり盛り上がっている山状の筋肉の症状をうけたまわるツボという意味になります。

 [治療の効果]
 こむら返りをはじめ、足に出るいろいろな症状によく効きます。
 足が腫れる・痛む・しびれる・ひきつる・まひして立てないときなどは、承山を処置するとよいでしょう。また、膝の痛みにも使用します。
 ほかにも、座骨神経痛、腰痛、半身不随、痔、便秘、太りすぎて足が重くだるいような場合に効果が期待できます。
 承山は専門家による治療はもちろんですが、家庭で指圧やマッサージをおこなっても効果が高いツボです。
足がだるいとき、疲れてむくんだときに、押したりもんだりすると効果的です。


177飛陽  ひよう
 「飛」は、とぶ・高いの意で、「陽」はからだの外側をあらわします。

 [治療の効果]
 脚気で足がしびれる、すねや膝が痛い、足の指を曲げたり伸ばしたりできない、めまいがする、のぼせる、
鼻づまり、鼻水などの症状に効果が期待できます。
 東洋医学では、おへそより上にある病気はおへそより下のツボをを用い、おへそより下にある病気はおへそより上のツボを用いて治療することがあります。
これは、人間の上半身と下半身は互いに相反する機能をもっていて、コントロールし合っていることをう まくとらえたもので、科学的にも証明されています。
 したがって、足にある飛陽ですが、足の病気ばかりでなく、のぼせや鼻づまりなど、上半身の病気にもよく効く場合があるのです。


178築賓  ちくひん
 「築」は、きずくという意味です。「賓」は敬し待つ人・したがう・みちびくという意味ですが、
「賓」に「月」(にくづき)をつけると、「月賓」すなわち足のすね、膝下をあらわす文字となり、膝下の骨である脛骨のことを指します。
 したがって築賓という名は、脛骨の後ろで、歩くと筋肉が突き上げられたように盛り上がったところにある重要なツボという意味を示します。

 [治療の効果]
 のぼせ、冷え、二日酔いや乗り物酔いによる吐き気や嘔吐、膝の下からふくらはぎの後ろ側の痛み、
てんかんやひきつけ、頭痛、腰痛、さらには前立腺の病気や下痢などのような、下腹部の痛みに用いて効果があります。
 また、このツボのあたりは、スポーツや長く歩いたあとなどに筋肉の疲れがすじのように固まって、
こむら返りを起こしやすいところでもあります。こむら返りが起こったときは、
その部分をよく温めてから筋肉を大きくつかむようにマッサージするのが効果的です 。
 さらに築賓は、解毒のツボとして知られています。子どもの胎毒(乳幼児の顔や頭にできる皮膚病)や
その他の病毒に効果があります。いろいろな病気が原因となって起こるだるさや不眠、むくみ、疲労から起こる精力減退にも効果があります。


179三陰交  さんいんこう
 脾の臓・肝の臓・腎の臓の機能に関連する三つの経絡が交わる大切なツボが三陰交です。

[治療の効果]
 さまざまな症状に効果があります。とくに、足腰の冷えと痛みをはじめ、婦人科系の病気、
男性の生殖器病やインポテンツなどに効果があるツボとしてよく知られています。
 婦人科系では、月経不順、不妊症、子宮内膜症、帯下(おりもの)、冷え症などのほか、
更年期障害にともなういろいろな症状、たとえば、腰の痛みや太りすぎ、やせすぎなどにたいへんよく効きます。
 そのほか糖尿病や尿道炎、腎炎、膀胱炎、腹部の膨満感、下痢や便秘、足の関節痛、
下肢のまひ、脚気、胃炎、腸炎、冷えからくる夜尿症などにもよく効きます。
 昔から三陰交は、男女の虚弱体質や胃弱を改善するために、健康灸をするツボとしても知られています。
足の三里とあわせて、心身ともに丈夫にするツボとしてよく使用されています。


180太谿  たいけい
 「太」は、重要という意味です。「谿」は、谷・谷川・渓谷・大きくくぼんでいるところを示しています。
したがって、足のくぼみにある重要なツボという意味になります。人間の先天の元気と呼ばれる、
生まれながらにしてもった生命力が強いか弱いかを調べるとともに、いろいろな症状の治療をおこなうツボでもあります。

 [治療の効果]
 こむら返り、足のねんざや痛みなど、足の症状に効くだけでなく、全身のいろいろな症状に有効です。
 血圧の異常から起こるめまいや立ちくらみ、耳の痛み・耳鳴り・中耳炎などの耳の病気、慢性の関節リウマチ、
湿疹・じんま疹・しみ・そばかすなどの皮膚症状、前立腺肥大症、インポテンツ、月経困難症、月経痛、月経不順、
腎炎、膀胱炎、夜尿症などの症状に効果があります。
 さらに、神経・気分の動揺、気持ちがたかぶって眠れない、のぼせる、手足が非常に冷える、
気管支炎、のどの腫れ、ぜんそく、嘔吐、便秘や痔などにもよく効きます。


181復溜  ふくりゅう
 「復」は反復・くり返す、という意味です。「溜」はとどこおる・たまるという意味で、
邪気(東洋医学でいう病気の原因)がくり返したまるところをあらわしています。

 [治療の効果]
 女性の場合、冷えて下腹部が張るといったような症状があるときの治療に用いると効果があります。
したがって、月経痛がひどい場合や冷え性の治療に効果的です。また、このような婦人病に効くことから、不妊症の治療にも用います。
 また、婦人科系の病気に限らず、胃腸の調子が悪くて下腹部が張る場合にも有効です。
 そのほか、耳の痛みや歯の痛みなどをやわらげる効果があり、手足にむくみがある場合にもよく効きます。
 

182崑崙  こんろん
  「崑崙」は、中国の神山、崑崙山から命名されたツボです。外くるぶしの大きな隆起を崑崙山にたとえ、
そのすぐふもとにあたる、外くるぶしの後ろのくぼみにあるツボという意味になります。
 崑崙山は古代の中国において、人々の厚い崇拝を集めた神話伝説上の神山です。
しかも、地上ではなく天上に属する聖域とされ、天帝の居所は崑崙山のすぐ上空にあるといわれていました。
 崑崙山は天上への通路であり、黄河はここを源としていると信じられていました。

 [治療の効果]
 座骨神経痛、足の関節炎、リウマチ、ねんざ、アキレス腱炎、足の痛みと冷え、めまい、吐き気、
頭痛、子どものひきつけ、鼻血、目の痛みなど、さまざまな症状によく効きます。
 ほかの症状としては、足やくるぶしが非常に痛い、足のかかとが腫れて足をつくことができない、
筋肉の硬直性けいれん、鼻づまりや鼻水が止まらないなどがあげられます。
 ほかにも、子どもの発熱、子どもの下痢といった症状に効果があります。


183申脈  しんみゃく
 「申」は、あきらかという意味です。
 「脈」は、経脈の脈です。東洋医学ではからだの機能に関係のあるツボの道すじを経絡と呼んでいます。
このうち縦の道すじを経脈、横の道すじを絡脈といい、経脈と絡脈には、心身の活力となるエネルギーがめぐっているとされています。
 この申脈というツボ名は、明らかに経脈の触れるところにあるツボ、という意味からつけられています。

 [治療の効果]
 足首が痛み、長く立っていることができない、または座っていることができない、
気分が動揺して落ち着かない、頭痛がする、めまいがするなどの症状をやわらげ、取り除く効果があります。
 また、足の関節炎、リウマチ、関節のねんざなどの治療にも欠かせないツボです。


184中とく  ちゅうとく
 「中」は、なか・あたる・うち・かなめなどの意味があります。「とく」は、汚濁を流すみぞ・にごる・けがすという意味があります。
 つまり中とくは、大腿部の外側中央の縦に長く続く溝にあって、とくに下肢の病気を治すツボであることをあらわしています。

 [治療の効果]
 主に、足の疾患に効果があるツボです。悪寒(寒け)があり大腿部外側の筋肉の分かれ目が痛む、
筋肉がまひする、脚気などの症状の治療に使用します。
 また、座骨神経痛、大腿部の外側に起こる神経痛、半身不随、腰痛の治療にもすぐれた効果が期待できます。


185陽陵泉  ようりょうせん
 陽陵泉は陰陵泉と相対しています。「陰」が足の内側であったのに対し「陽」は外側をあらわしています。
 そして、おへその上に病気があるとき、冷えを中心とした陰(ここではからだの中、内面)の症状は陰陵泉で治し、
熱や腫れ、痛みなど陽(ここではからだの外、表面)に症状が出た場合は陽陵泉で治す、と昔からいわれています。
 別名を筋会といいます。筋会とは筋肉の病気の症状で、足がうまく動かせなかったり、
筋肉がひきつったりしている状態のことを指し、このような症状に効果があるという意味になります。

 [治療の効果]
 脚気、筋肉のひきつり、頭の表面の腫れ、足の病気全般によく効くツボです。
 座骨神経痛、腓骨神経痛、小児まひ、腰痛などにも効果があります。そのほか、
みぞおちの痛みや、湿疹、高血圧症にもよく効きます。


186光明  こうみょう
 「光」は、ひかり・輝く・照るから転じて、いろどる・つや・盛んなりの意味です。「明」は、
あきらか・とおる・あかしの意味になります。
 つまり光明は、症状が明らかにあらわれるツボという意味になります。

 [治療の効果]
 熱があるのに汗が出なかったり、熱が体内にこもったり、頭部に症状があるときに効果があります。
また白内障・視力の減退といった目の病気、さらにノイローゼ、足の神経痛・まひの治療にもよく使用されます。


187懸鐘  けんしょう
 懸鐘の「懸」は、つり下げるという意味です。
 昔、中国で子どもや踊り子が鐘の形をした鈴を足首のこの場所につけていたことから、懸鐘とよばれるようになりました。
 別名を絶骨といいます。このツボは、骨の上にあって、骨の髄の気が多く集まるところともいわれています。

 [治療の効果]
 腹が張る、胃がムカムカして食欲がわかない、脚気で足がだるく動かないといった症状に効果があるツボです。 
 また、足や背中の神経痛やまひ、中風、半身不随などにも使用します。
 そのほか、痔の出血や脳内出血、鼻血、後ろ首のこわばり、胃の調子が弱っているときなどにも効果があります。


188丘墟  きゅうきょ
 「丘」は、おか・高し・大いなり・集まるなどの意味があります。「墟」は、おか・しろあと・谷を指しています。
したがって、丘墟というツボ名は、外くるぶしを丘に見立てたときにできるくぼみの中にある重要なツボという意味になります。

 [治療の効果]
 足の筋肉がやせて血のめぐりが悪い、血のめぐりが悪いせいで一度座ると立つことが楽にできない、
股関節が痛む、こむら返りが起こる、突然足がひきつる、といった症状に効果があります。また、うなじのこわばり、
わき腹が激しく痛む、などの症状をやわらげる効果もあります。
 そのほか、足のねんざ、めまい、立ちくらみ、座骨神経痛、腰痛、慢性胆嚢炎、胆石症などの治療にも用いられます。


189�醯次 ,譴い�
 「�遏廚蓮△呂欧靴ぁΔ④咾靴い箸いΠ嫐�任垢��遒法嵶蓮廚了悊魏辰┐襪函��泙垢箸いΠ嫐�砲覆蠅泙后�
 「兌」は、喜ぶ・通る・集まるの意で、これに金へんをつけると鋭いという意味になります。
 したがって�醯爾蓮⊂評�鳳圓つ砲澆魎兇犬襪箸①△修譴鮗茲蟒釮い童亀い鬚弔院�
病んでいる人を励ますツボという意味になります。

 [治療の効果]
 いろいろな症状に用いて効果があるツボです。
 みぞおちから腹にかけて張って重苦しい、吐き気がする、という胃腸の症状をはじめ、
むくみがあるのに熱が出ない、寒気がして食欲がない、顔が腫れる、足が痛む、
のどから上の歯にかけて痛むなどの症状に効果があります。
 さらに、黄疸がみられる、腹膜炎のため腹水がたまる、糖尿病、顔面の神経まひ、
扁桃腺肥大症などの治療に使用しても効果があります。


190太敦  たいとん
 「太」は、重要であるという意味です。「敦」は、からだのエネルギーがとどこおって流れない状態のことです。
したがって太敦というツボ名は、この重要な部分にからだのエネルギーの流れがとどこってしまい、
邪気(東洋医学でいう病気の原因)がたまってしまうところという意味になります。

 [治療の効果]
 側腹部から下腹部、下腿部内側にかけての痛み、心痛、卒倒、てんかん、みぞおちの痛み、
睾丸が上がって痛む、睾丸が腫れる、こどものひきつけ、失禁・夜尿症などに効果があります。
 さらに、子宮からの出血、子宮脱などの婦人科系の病気、精巣炎など男性性器病気、ヒステリーの発作などにもよく効きます。
 また、太敦は、いろいろなけいれんの救急治療に用いられ、効果があります。


191内庭  ないてい
 「内」は、うち・なか・へや・いるという意味です。「庭」は、にわ、大広間のことです。
 したがって内庭というツボ名は、足の親指の隣の第二指と次の第三指の内側(間)で、
指を開くと庭のように広くなっているところという、ツボのある場所をあらわしています。

 [治療の効果]
 足や膝が痛む、まひする、けいれんする、といった症状の治療に用いられ、脚気、熱の病気などにも効果があります。
 また一般に、胃腸が弱って腹が張り、下痢をしているときに効果があるとされています。
 そのほか、顔面の神経まひ、歯痛、食あたり、ノイローゼ、手足の冷えなどによく効きます。
 なお、このツボは大人でも子どもでも、慢性の病気のときにお灸で治療をおこなうと、たいへん効果があります。


192太衝  たいしょう
 「太」には、重要という意味があります。
 「衝」は、つく・通路・通り道をあらわしています。
 このツボも含め、さわると動脈の拍動を感じるところにあるツボの名前には、衝の字がよく使われています。

 [治療の効果]
 子宮疾患、おりものが多い、前立腺炎、精巣炎、尿道炎などや、これらの生殖器病にともなう
下腹部や側腹部のひきつり、足の冷えなどに効果があります。
 そのほか、胸膜炎、肋間神経痛、めまい、耳鳴り、難聴、視力の低下、腰痛、慢性の肝臓病、湿疹などの治療にも使用されます。


193衝陽  しょうよう
 「衝」は、通り道・人の行き交うところを指し、あたる・突き進むなどの意味になります。
 また、皮膚の上から指を触れたときに脈拍を感じるツボには、衝という字がよくツボ名に使われています。
 一方、「陽」は、裏表の意味を持つ陰陽の陽です。足の裏は陰で、足の甲は陽となります。
 したがって衝陽というツボ名は、足の甲で、脈拍の触れるところという意味になります。

 [治療の効果]
 食欲不振や胃の調子の悪いとき、下痢などによく効きます。そのほかにも顔面の神経まひ、
半身不随、足や背中の腫れ、歯の痛み、悪寒(寒け)、熱が出るなどの症状がある場合にも効果があります。
 また、足がまひして力が入らなくなったときや、座骨神経まひの症状を治療する場合にも用いられることがあります。

194解谿  かいけい
 「解」は、とく・ほどくの意、「谿」は、谷・地の意味です。
 つまり解谿は、下腿部と足部の分かれるところで、谷間のように深くくぼんだ部分であることを示しています。

 [治療の効果]
 解谿は広い範囲の疾患によく効くツボのひとつであり、局所的な治療では、足の関節のねんざ、
関節炎、リウマチに効果があります。足が腫れて痛む、めまいがする、眼精疲労のため視力が落ち、
視野が狭くなる、気分が悪い、頭痛、顔が腫れる・むくんでいる、便が出にくい、ふくらはぎがつっぱるなどの症状をおさえるのに効果があります。
 そのほか、胃けいれんや腹痛などのような腹部に起こるさまざまな症状にも効果があります。
顔面や目の病気、脳神経の疾患であるヒステリー、てんかん、足の筋肉のけいれん、ぎっくり腰などにも有効とされています。
 また、息苦しい、せきが出る、冷えるなどの症状にも使用されます。


195商丘  しょうきゅう
 「商」はあきない・西方・秋の意味があり、東洋医学でいう五臓の肺を意味します。
 「丘」は、おか・四方が高く中央が低いおかの形・集まる・高しの意味があります。 
 この場合、内くるぶしを丘にたとえており、その近くにあるツボということを、商丘という名の中にあらわしています。

 [治療の効果]
 商丘は、脾の臓と肺の臓両方の病気をわずらっている場合に効果が期待できます。
 たとえば、胸膜炎、ノイローゼ、心臓病、胃アトニー、婦人病、胃下垂などによって、せきが出る、
胃弱、色白、なんとなくからだがだるいといった症状があるときに、効果があります。
 また、大腸の調子が悪いと、便意はあるのに排便がうまくできないといった症状が出ます。
このとき腸がゴロゴロ鳴り、腹が張ってくる状態をしぶり腹といいますが、その場合にも、商丘を治療に用いるとたいへん効果的です。
 さらに、子どものひきつけをしずめるのにも有効とされています。
 そのほか嘔吐、食欲不振、頭痛・頭重、全身の倦怠感に効果があります。


196照海   しょうかい
 「照」はてらす・日がさす・輝く・明らか・光る・てる、といった意味です。「海」は、物事が広く集まるところをあらわしています。
 つまり、からだに異常があるとき、明らかに邪気(東洋医学でいう病気の原因)の集まるところという意味になります。

 [治療の効果]
 婦人科系の疾患、とくに月経不順や月経に伴う症状に効果があるツボです。
 気分が落ち着かない、なんとなく気が重いといった精神的なものから、のどの渇き、腰の痛み、
下腹の張り、手足のだるさ、胸のむかつき、吐き気といった肉体の不快症状にまでよく効きます。
 月経の不順は、女性に起こるいろいろな症状の原因となっていることがあります。
小さなことに腹を立てたり、イライラしたりするのも、月経の不順によって起こる場合が多くあります。照海は、このようなときに効果があります。
 また、子宮内膜症、子宮の位置異常の治療にも使用されます。
 そのほか照海は、足のだるさ、重さ、痛みなどの症状を取り除くために、湧泉、
太谿とともに用いられるツボです。さらに、足の関節の炎症や、足の冷え、便秘、扁桃腺炎にも応用されます。


197至陰  しいん
 「至」は、いたる・とどく・到着するなどの意味です。「陰」は、ここでは小陰を指しています。
 つまり、足の小陰(小指)に至るツボというのが至陰の意味です。

 [治療の効果]
 足がほてる・冷える、胎児の位置異常、分娩障害、難産、頭痛・頭重、鼻づまり、鼻水、
胸・わき腹の痛み、排尿困難、インポテンツ、夜尿症、便秘、肩こりなどに効果がみられます。 とくに、泌尿器系の疾患にたいへん効果的です。
 また、腎臓の機能が低下すると、足の小指がかたくなり、もむと痛いという症状が出ます。
 このような場合に足の小指にある至陰をよくもみほぐすと、腎臓の機能が高まり、症状が改善されます。


198裏内庭  うらないてい
 「内」はうち・なか・へや、「庭」はにわ・大広間を意味します。足の甲にある内庭というツボに対し、足の裏にあるので裏内庭といいます。

 [治療の効果]
 消化器系の症状に効果があります。なかでもとくに、胃の痛みや下痢、食あたりなどの治療に用いられます。


199 内湧泉  うちゆうせん
 湧泉というツボのやや内側にあることから、この名がついています。

 [治療の効果]
 高血圧症の治療に用いて有効なツボです。とくに左右の足の内湧泉をこぶしで交互に軽く100回ずつほどたたくと、
血圧を下げる効果があります。
 そのほか、すぐわきの湧泉の刺激とともに足の裏をもむと、全身の疲れやだるさがやわらぎます。


200湧泉 ゆうせん
 人間が生まれながらにしてもっている、生きるためのエネルギー(先天の元気)が泉のように湧き出るツボということから、
湧泉と名付けられています。このエネルギーは、ここから湧き出たあと、全身をめぐるといわれています。

 [治療の効果]
 体調を整え、体力とスタミナをつける効果があります。だるい、疲れやすいといった症状には、この湧泉をよくもむと、たいへん効果的です。
 気分の動揺があるときは湧泉への刺激で落ち着くことができ、気持ちがたかぶったり、精神的疲労があって眠れないときにも有効です。
 また、発作性の心悸亢進、ヒステリー球(ヒステリー患者の症状で、絶えず丸い球状のものが胸を上下する感じがすること)、
のどの痛みなどにも効果があります。
 そのほか婦人科系の疾患、腰・下腹部・足にかけての冷えや痛み、のぼせにもよく効きます。
湧泉への刺激は血行を整えるので、色々な病気が原因で起こる冷えとのぼせをやわらげるというわけです。
したがって、冷えとのぼせがあらわれやすい高血圧症 などの治療にも用いられます。


                                      


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