サン自然薬研究所長 医学博士 小松靖弘 先生 最新情報 

月刊がん 「もっといい日」 シリーズ「食品の抗がん効果を考える」①
「免疫とキノコの密接な関係」
食品の抗がん効果を考える①
がんという病気のやっかいなところは、最初の治療で摘出しても、微小ながん細胞がどこかに潜んでいて何年もたってから、「再発」がんがみつかる場合があることだ。最初の治療を受けたあとは、再発予防、進行抑制に努める不断の努力がかかせない。食品には、日常の食品以外に、抗がん効果が注目される食品がある。日本では、薬品と区別するため法律上、健康食品とか機能性食品といった分類をされている。
本シリーズでは、臨床現場で使われている健康食品を中心に、食品の効能、抗がん剤治療と併用して治療効果を高める使い方、症状の改善など、生活の質の改善に役立つ食品、など具体的な情報を提供していきたい。
免疫力という潜在的な力と食品との関係を考える第1回は、健康食品に多いキノコ類に商店をあわせて小松靖弘氏にキノコと免疫の関係を伺った。
キノコもカビも同じ真菌の仲間!?
昔から“シイタケを食べるとガンになりにくい”などとよく言われていました。最近では様々なキノコについて、抗がん作用や免疫賦活作用が研究されています。科学的なエビデンスについても裏づけがとれてきているようです。どのキノコがいいのか、どんなものがいいのかと疑問に思ったときには、やはり臨床的にきちんととられたデータで判断したいものです。ただ、漢方薬と同様に一例報告も軽視できない。人の体というのは千差万別で、こちらの人には効いても、こちらの人には効かないということは必ずあり、数値的に同じような結果を求めても、それもまた難しい問題なのです。
そもそもキノコとは真菌のひとつですが、真菌は大きく五つに分類されていて、担子真菌と子嚢菌、カビなどを含む不完全菌などがあります。キノコ類はすべて担子菌類に分類され、子嚢菌には冬虫花草があり、ビール酵母、パン酵母、水虫の原因となるロンジダなどのカビの仲間の種々の菌が分類されます。またお酒や味噌などを作る酵母菌類も真菌の仲間です。つまり、キノコ類もカビ類も酵母菌も水虫菌も同じ真菌類、同じ仲間なのです。
キノコは木につく菌で、木を腐らせて土に返す役割を果たしています。生態系がうまく循環するように働いている菌ですが、結局は真菌の一種。人間の体にとってはカビや水虫菌と同様に「異物」です。
体は、異物が入ってくると、抗体が働き、その異物を排除しようとします。このときコクロアージやリンパ球などの免疫担当細胞が活発に働き出し免疫力がいつもより強く働くわけです。キノコが異物といて体内に入ってくることによって免疫機能が活性化される。これが、キノコが体内で免疫力を高めるメカニズムなのです。
もちろん、キノコは多種の人体に有効な成分を含んでいることが明らかにされており、少なからず体にはいい影響を与えるはずです。しかしのおそらく、キノコのよさは“どの成分がいい”というように簡単に特定されるものではないと思います。真菌類の一種であることから、体内に取り入れると身体の抗体が刺激を受けて免疫力が活性化するというのが、一番のよさになるといえるでしょう。
異物のキノコに抗体反応
たとえば現代の医療では、発生したがんの細胞を取り出して培養し、それを利用することで、その人の免疫力を賦活させるという治療法もあります。その方法で増やしたリンパ球なら、ターゲットとなるがん細胞を知っているので、体に戻した際にも、目標であるがん細胞をピンポイントで攻めることかできます。また、T細胞などの免疫活性物質も誘導されて活動が活発になるので、効果的にがん細胞がやっつけられる。これが、いわゆる活性化自己リンパ球細胞移入によるがん治療です。
がん細胞も真菌も体にとって異物という点では同様で、体は同じ反応を示すはずです。がんは、異型細胞の発生に起因していますから、これを防げばがんも防げるわけです。
細胞社会学という研究分野があって、人間の体内でも細胞集団がひとつの社会を形成しているという考え方です。その集団の中で“ヘンな細胞”(異型細胞)が生じるとその集団から物理的に排除されてしまう可能性もあるのです。また人体では、明らかに異型細胞ができるとNK細胞など免疫細胞の働きにより、すぐにつぶされます。異型細胞があまり目立たない場合は、消されることなくうまく生き残ってしまいます。その結果、その異型細胞は増えて塊になり、がん細胞などに変化していく。
がんについては、それが目に見えないところで起こっているから怖いのです。知らない間にがんは体内で育ってしまって、治療が困難になります。できるだけ早くそれを発見し、できるだけ早く対処しなければいけません。免疫学的反応によってがん細胞を殺すためにはがん細胞一個に対してリンパ球は10も20もかかります。がん細胞が少なければ少ないほど、どんな治療でも有効に働くと思います。
私が知っている症例では、実際にキノコのエキスを飲むことで免疫機能を高めながら西洋学的治療に挑み、がんを克服した方が多くおられます。手術や抗がん剤や放射線といった治療が前提であり、これを否定はしません。ただ、キノコのエキスを飲むなどして免疫を高めて治療すれば、なおさらいいと考えています。
多種類のキノコのエキスを混合して実際に腫瘍マーカーが消滅した例も
いくらキノコがいいといってもそんなに大量に食べられるものではありません。キノコから有効成分を抽出したエキスを飲むのがいいと思います。
さらに、どのキノコが合うかについては、個人差があると思います。ですから私は様々なキノコのエキスを混合したものを勧めます。人間の体はそれぞれ免疫応答性に違いがあります。食べ物でも相性があるように、どのキノコが効くかも人によって違うはずです。ただ、それを調べるには時間がかかります。今すぐ的確な情報を必要としているがん患者に試行錯誤している余裕はないので、多種類のエキスを飲む。とにかく早めの対処が必要ですからね。
実際にキノコの健康食品を飲んで、腫瘍マーカーがなくなったという人はいます。現代の医療制度で医薬品と認められているものだけしか効かないということはありません。キノコのエキスも、私はがん治療における利用価値が十分あると思います。
術後のがん治療は犯人探しのようなもの。どこにあるか分からないものを探しだしてやっつけるということです。そうした中で、抗がん剤は無差別爆弾のような要素があります。つまり犯人以外もやられるということ。がんだけでなく体のあらゆる細胞がダメージを受けるので、体力は著しく減退し、食欲も失せます。病気に打ち勝つ前に、体がどんどん弱っていくのです。
しかし、現在市販されているキノコのエキスを飲んでいる人の多くが、抗がん剤の副作用が緩和されるといいます。副作用が抑えられれば、それにより食欲も出るし、体力も回復できます。がんに打ち勝つための体を作る基礎ともなります。
キノコに免疫力向上作用があるということは、様々なデータにも裏づけられている事実です。その詳細については次号で。
より多くの人が自分に合うキノコのエキスを見つけて、自分に合った方法でがんを治療していく、あるいはがんを防いでいけれはいいと思います。
小松靖弘(こまつやすひろ)
1941年東京生まれ。獣医師。医学博士。64年東京農工大学農学部獣医学科卒業。77~78年ニュージーランド、オークランド大学留学。細胞免疫学を学ぶ。79から85年順天堂大学医学部組織培養研究所にて抗ウィルス剤、インターフェロン誘導剤に関する研究に取り組む。84~2000年(株)ツムラにて漢方薬の薬理研究に注力。02年から(有)サン自然薬研究所代表。東京女子医科大学東洋医学研究所、筑波大学医学系、金沢医科大学血清学教室にて非常勤講師を歴任。専門分野は免疫薬理学、アレルギー学。


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