介護のための漢方薬がわかる本

お年寄り介護の「困った」対策をお手伝いします。

巻頭言
超高齢化社会で求められる「あたたかい介護」
 日本では現在、世界に類をみない速さで超高齢化が進んでいます。これは、介護を必要とする人口が爆発的に増えていることでもあります。厚生労働省の統計では寝たきり・認知症・虚弱などの要介護高齢者は2010年で500万人を超え、そのうち半数以上が要介護3以上であることがわかっています。
 人間は加齢とともにさまざまな機能が低下していきます。体力は衰え、認知機能も低下し、また、多くの疾患を抱えるようになります。しかし我々はこれらの問題を伴いながらも、生活の質を維持し、最後の瞬間まで自分らしい納得のいく人生を送ることを望み、それを実践する権利を持っています。こうした「生活の質」「自分らしい生き方」が重視される社会では、食事や入浴など日常生活の一部を技術的に支援するだけでなく、お年寄りの生活を空間的にも時間的にもトータルにとらえ、その価値観に寄り添って支援する「あたたかい介護」がこれまで以上に求められるようになっています。

「ひとりの人間として、その人らしく」介護と漢方に共通する理念
 近年、認知症やがん緩和ケアなどの現場でも漢方薬が広く使われるようになっています。もちろん、漢方薬で認知症やがんそのものが改善することはありません。しかし、周辺の症状で本人や周囲の人々を悩ませる諸問題の解決に漢方薬が役立つことが、経験的にも科学的にも認められてきているのです。
 漢方は、その人をひとりの人間としてとらえ、心身に起こる以上は生命活動の調和の乱れによると考えます。乱れた調和を正すために、不足しているものは補い、過剰になっているものは抑えて、本来の生命活動の秩序を維持するのが漢方治療の理念です。目の前にいる人をひとりの人間として包括的にとらえ、尊重し、単に症状を抑えだけでなく、その人らしい生活を送るためのお手伝いをするという点において、介護と漢方はよく似た理念を持っているのです。これも介護と漢方の相性のよさを説明するものといえるでしょう。

現場で役立つ漢方薬情報を
 この冊子は、主にお年寄りに使われている漢方薬について、実践的な情報提供を目的に作られています。現場でよく見る番号はどのような漢方薬なのか、なぜこの漢方薬が出されているのか、さらには、服用方法や副作用など、介護の現場で役立つ情報をできるだけ具体的に紹介しています。この冊子が皆さまの目ざす「あたたかい介護」実現のお役に立つことができれば幸いです。

目次

Tお年寄り介護の現場で出会う「困った」症状にこんな漢方薬が使われています

 全身状態の底上げ 疲れやすい・だるい
 心の状態1 イライラ、暴力・興奮、せん妄
 心の状態2 抑うつ、不安
 眠りの問題 不眠・夜間の覚醒
 咽喉の問題 口内炎/のどの炎症/しつこい咳
 「食べる」の問題1 嚥下困難
 「食べる」の問題2 しゃっくり
 「食べる」の問題3 吐き気・嘔吐
 「食べる」の問題4 食欲がない
 「排泄」の問題1 尿の出が悪い
 「排泄」の問題2 頻尿、尿失禁
 「排泄」の問題3 便秘
 「排泄」の問題4 術後のイレウスや腸管マヒ/下痢
 むくみ
 手足の感覚の問題1 しびれ、痛み、冷感
 手足の感覚の問題2 筋肉の痛み、こむら返り
 手足の感覚の問題3 膝・関節の痛み
 皮膚の問題 かゆい
 風邪 風邪をひいた/風邪をひかないために
 介護のお手伝いをする漢方薬早見表 認知症ケア、がん患者のケア

U 介護現場でよく出会う漢方薬を知ってみよう

 補中益気湯
 大建中湯
 芍薬甘草湯
 牛車腎気丸
 抑肝散
 釣籐散
 六君子湯
 麦門冬湯
 半夏瀉心湯
 麻黄附子細辛湯
 当帰飲子

V漢方薬の飲み方の工夫と副作用の知識

 飲み方の工夫
 副作用にいち早く気づくためのヒント

W よくある漢方薬の疑問・質問
 
 服用のタイミング、飲み忘れ、服用方法 Q1,Q2,Q3
 併用の注意点、服薬情報 Q4,Q5,Q6
 お年寄りの注意点、効果が現れるまでの期間、医療経済への影響Q7,Q8、Q9

T お年寄り介護の現場で出会う「困った」症状にこんな漢方薬が使われています

咽喉の問題 M半夏瀉心湯など
「食べる」の問題 O半夏厚朴湯
「排泄」の問題 107 牛車腎気丸など
風邪 127 麻黄附子細辛湯など
手足の感覚の問題 107 牛車腎気丸など
認知症ケア
全身状態の底上げ 補剤各種
眠りの問題 137 加味帰脾湯など
心の状態 54 抑肝散など
むくみ P 五苓散など
かゆい 86 当帰飲子など
がん患者のケア

本人や周囲に負担をかける、「こういう症状が出たら困るな」の中で、特に漢方薬がお手伝いすやすいものを選びました。

全身状態の底上げ  疲れやすい・だるい

41 補中益気湯 なんとなく元気がない、気力や生命力が低下している、といった人の全身状態の底上げに使われる代表的な漢方薬です。
   ここに注意! 甘草、当帰を含んでいます。
48 十全大補湯 41補中益気湯で効果がない場合、気力だけでなく体力の低下も目立ってきた人に。
   ここに注意! 甘草、当帰、桂皮を含んでいます。
108 人参栄養湯 体力消耗が目立ち、横になっている時間が多い、少し動いただけで息切れがする、咳や痰の呼吸器症状がある、という人に。

全身状態の底上げには補剤を
 ここに挙げた3つの漢方薬は代表的な補剤です。補剤とは、低下した気力や体力を補う漢方薬の総称です。元気がない、全体的に生命力が低下した感じがする高齢者、体力消耗が著しい慢性疾患や術後の患者さんなどに対して、低下した心身の状態を底上げすることを目的に処方します。補剤には免疫力回復の作用も期待されます。気力・体力が上昇すると、全身倦怠感や抑うつ気分が改善するだけでなく、食欲不振やしびれや痛み、不眠、頻尿などの諸症状までも改善することがあります。

心の状態1 イライラ、暴力・興奮、せん妄

54 抑肝散 興奮してイライラが強く、夜も眠れないような人に。認知症の周辺症状、がん末期のせん妄にも使われます。
   ここに注意! 甘草、当帰を含んでいます。

15 黄連解毒湯 比較的体力がある人で、のぼせ気味でイライラのある場合に。
   ここに注意!黄ごん、山梔子を含んでいます。 苦いので服用の工夫を

47 釣籐散 イライラ・興奮などに加え、緊張が強く、めまいや慢性的な頭痛のあるような場合に。
   ここに注意!甘草を含んでいます。


●傾眠の心配がない漢方薬
 認知症の周辺症状に使われることが多い抗精神病薬は過鎮静による日中の傾眠がしばしば問題になりますが、抑肝散などの漢方薬にはこうした副作用がほとんどありません。
※認知症の周辺症状
 認知症に伴って生じる、徘徊、攻撃行動、不潔行為、幻覚、妄想などの行動や心理症状のことを指します。英語の頭文字をとって「BPSD」とも呼ばれます。

心の状態2 抑うつ、不安
54 抑肝散 不安で胸がいっぱいになり落ち着かない胸が熱く感じるような時に。
41 補中益気湯 がん患者の気力低下に処方して、治療にとりくむ気力を維持し、免疫力アップをはかる、という使い方もあります。
12 柴胡加竜骨牡蛎湯 発作的に不安が強まり、焦りを感じたり動悸を訴えたりする場合に。
   ここに注意! 黄ごん、桂皮を含んでいます。

●その他の処方
 体力のない高齢者やがん末期の抑うつや不安には、香蘇散(コウソサン)や半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)なども使われます。

漢方メモ1
 介護は、相手の生活スタイルから人生観までをトータルに受け止めて、その人に寄り添う姿勢が求められます。漢方医学もまた、ひとりひとりの心身の状態に合わせて治療法を考えます。介護も漢方医学も、その人にピッタリのサービスを提供する、最上の「オーダーメイド」なのです。

眠りの問題 不眠・夜間の覚醒

137 加味帰脾湯 体力がおち、顔色が悪いような人で、眠りが浅く不安を訴えるような人に。
    ここに注意!甘草、当帰を含んでいます

54 抑肝散 気が高ぶって眠れない、一度目覚めると寝つけないときなどに。頓服で用いられることもあります。

103 酸棗仁湯 疲れきって眠れないような人に。

●その他の処方
 この他、心を落ち着かせる柴胡を含む漢方薬(柴胡剤)も熟眠感を増す作用が期待されます。不眠に使われる柴胡剤には、柴胡桂皮乾姜湯(サイコケイシカンキョウトウ)、大柴胡湯(ダイサイコトウ)などがあります。

漢方薬は日中の傾眠や健忘の心配がないのがうれしいわ!

咽喉の問題 口内炎/のどの炎症/しつこい咳

14 半夏瀉心湯 口内炎には第一に選択すべき漢方薬。溶かした薬液を口に含んでゆっくり服用します。
   ここに注意! 甘草、黄ごんを含んでいます

138 桔梗湯 咽喉部の痛みや炎症に。溶かした薬液でのどをすすぐようにしながら服用します。冷やして服用してもいいでしょう。
    ここに注意! 甘草を含んでいます 桔梗は多飲で悪心をおこすことがあります。

29 麦門冬湯 感染症による咳ではなく、乾いた痰のない咳が長引き、顔が赤くなるほど咳きこむようなときに。
   ここに注意! 甘草を含んでいます

ほとんどの漢方薬エキス製剤はお湯で溶かして暖かいまま飲むのに適しているけれど、桔梗湯のように冷やした方がいい漢方薬もあるんだね!

黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)も、エキス剤を溶かして服用する場合には冷まして飲むといいよ。

「食べる」の問題1 嚥下困難

16 半夏厚朴湯 のどの違和感があって「のどになにかいる」という訴えがある場合に用いられます。のどが狭い、食道が狭い、何となく息苦しくてものが飲み込めない、というときに。

116 茯苓飲合半夏厚朴湯 のどの違和感など、上記の症状に加えて、吐き気や胸やけなど消化器症状を伴う場合に。

食べ物を食べやすい大きさに揃える、とろみを加える、などの介護の工夫が、漢方薬でいっそう効果的になるといいな。

●その他の処方
 のどの渇きが強く飲み込めない時には白虎加人参湯(ビャッコカニンジントウ)、乾いた咳が多く出る時は麦門冬湯(バクモンドウトウ)も用います。

漢方メモ2
 オーダーメイドで治療法を決める漢方医学では、元々の体質を重視します。基本的な体質は「虚証」と「実証」に分けられます。「虚証」は筋肉が少なくどちらかというと弱々しいタイプ。「実証」は筋肉質でがっちりしているタイプです。同じ症状でもタイプによって使う漢方薬が違ってきます。介護を受けるお年寄りにはどちらかというと「虚証」が多いので、虚証向きの漢方薬が用いられることが多くなります。


「食べる」の問題2  しゃっくり

31 呉茱萸湯 体力が低下して、手足が冷えている人に。高齢者や術後患者、がん治療中の方にも使いやすい漢方薬です。冷えによって憎悪する慢性頭痛などにも。
   ここに注意! 苦いので、服用の工夫を

68 芍薬甘草湯 筋肉のけいれんへの作用が知られる漢方薬で、しゃっくりにも使われます。即効性が期待できるので頓服で。
   ここに注意! 甘草を含んでいます

14 半夏瀉心湯 消化器症状全般に幅広い作用が知られる漢方薬で、しゃっくりにも使われます。
 ここに注意! 甘草、黄ごんを含んでいます

●西洋薬には特効薬がないしゃっくり
 しゃっくりは抗がん薬の副作用や手術の影響でも発症します。漢方薬には西洋医学では特効薬がないこれらの症状に対処できるものがあり、QOLの維持に役立てられています。

食事のたびにしゃっくりが起きると悩んでいる方を楽にしてあげられたらうれしいわ。


「食べる」の問題3  吐き気・嘔吐

17 五苓散 のどが乾いて、むくみ、めまいを伴い、胃に水がたまってチャプチャプする感じがある場合に。
   ここに注意! 桂皮を含んでいます

69 茯苓飲 高齢者や病後で体力が低下した人で、胸がつかえる、吐き気がする、酸っぱいものが上がってくる、水のようなものを吐く、といった症状に使われます。

43 六君子湯 食欲不振に対する作用が広く知られていますが、逆流や吐き気にも使われています。術後や抗がん薬治療に伴う悪心にも。
   ここに注意! 甘草を含んでいます

●抗がん薬の副作用対策としての漢方薬
 がん化学療法に伴う悪心・嘔吐に対して、制吐剤だけではQOLの維持が十分でない時に漢方薬が役立っています。


「食べる」の問題4  食欲がない

43 六君子湯 食欲不振に一番に使われます。高齢者や、手足が冷えやすい人に。
   ここに注意! 甘草を含んでいます

14 半夏瀉心湯 消化管全般の症状に処方される漢方薬ですが、特に胸がつかえたような感じがあって食欲が出ない場合に。
   ここに注意! 甘草、黄ごんを含んでいます

41 補中益気湯 疲れやすい人、病後や術後に。名前にある「中」は消化管消化管を意味します。きちんと食べて体力を補うというのが名前の由来です。
   ここに注意! 甘草、当帰を含んでいます

●食は気力・体力の元
 食欲不振に使われる漢方薬には、単に消化器症状を改善するだけでなく、気力・体力を回復させるものが多くあります。41補中益気湯(ホチュウエッキトウ)や43六君子湯(リックンシトウ)はそうした作用の代表的な漢方薬です。きちんと食べることが気力・体力維持には不可欠、ということですね。


「排泄」の問題1  尿の出が悪い

107 牛車腎気丸 お年寄りなどの下半身の諸症状に。尿の出が悪い時も、頻尿にも、どちらにも作用を持っています。
    ここに注意! 桂皮、附子を含んでいます。地黄を含んでいるので、時にムカムカを感じることも。

40 猪苓湯 利尿作用で知られる猪苓を含む漢方薬で、排尿障害や尿路不定愁訴にひろく使われます。

112 猪苓湯合四物湯 上記40猪苓湯の症状に加えて、皮膚が乾燥して貧血傾向で色つやが悪く、胃腸が弱い人にはこちらも使われます。

尿が出ないのは怖いので、漢方薬などを上手に使って改善したいね。


「排泄」の問題2  頻尿・尿失禁

107 牛車腎気丸 前立腺肥大、女性に多い過活動膀胱などによる頻尿・尿漏れ、夜間の頻尿、切迫した尿意の改善に幅広く使われます。
    ここに注意! 桂皮、附子を含んでいます。地黄を含んでいるので、時にムカムカを感じることも。

111 清心蓮子飲 弱々しく冷えのある人の、尿の出は悪いが尿意は頻繁にある、残尿感、下腹部の不快感といった尿路不定愁訴に。
    ここに注意! 甘草、黄ごんを含んでいます

●その他の処方
 慢性に経過した尿路感染症からくる症状には56五淋散(ゴリンサン)、イライラして怒りっぽい人には76竜胆瀉肝湯(リュウタンシャカントウ)なども使います。

漢方メモ 3
 漢方医学では、症状も「虚証」と「実証」に分けます。症状としての「虚証」は生命活動を支える要素が不足している状態で、「実証」は要素の循環が滞って部分的に過剰になっている状態です。不足しているところは補い、過剰になっているところは平らかにするのが漢方治療の基本的な考え方です。例えば、補剤は不足したものを補う漢方薬、54抑肝散は「気」の過剰を抑える漢方薬です。


「排泄」の問題3  便秘

126 麻子仁丸 どんな便秘にもまずこれを。高齢者にも使いやすい漢方薬です。

51 潤腸湯 体力が低下している人、高齢者の便秘に。水分の足りないところを潤す性質を持っています。
   ここに注意! 甘草、黄ごん、当帰を含んでいます

84 大黄甘草湯 便秘に幅広く使われている漢方薬です。大黄と甘草のふたつの生薬で構成されているので、即効性が期待できます。
   ここに注意! 甘草を含んでいます

100 大建中湯 腰痛を伴う便秘や、冷えがあり、ガスがたまって下腹がはっている便秘などに。腸の蠕動運動を活発にしたり硬い便を柔らかくする作用があります。

●認知症での下痢の難しさ
 効果的な下痢は西洋薬にもありますが、効きすぎて軟便や下痢になることがあり、結果的に奔便などの周辺症状につながるという問題があります。漢方薬は便を出させるという下剤としての作用だけでなく、全身の調和をはかって結果的に正常な便通の回数を期待するもので、介護の現場でも使いやすいものといえます。


「排泄」の問題4  術後のイレウスや腸管マヒ/下痢

100 大建中湯 術後のイレウスや腸管マヒに 西洋医学との相性も良く、術後のイレウスや腸管マヒ、抗がん薬やオピオイド系鎮痛薬による便秘などに広く使われています。食品成分のみで構成されていて安全性の高さにも信頼があります。

14 半夏瀉心湯 下痢に この漢方薬は、消化管の入り口(口)から出口(便)までの症状全般に幅広く使われます。抗がん薬による下痢にも。
   ここに注意! 甘草、黄ごんを含んでいます

30 真武湯 下痢に 冷えが強く体が弱っている人に。お年寄りの胃腸疾患など幅広い症状に使われます。

ひとつの症状を治すだけでなく、からだ全体の調和をはかって、その人本来の状態に回復させるのが漢方医学なのね。

漢方メモ4
 メモ3で紹介した「虚証」「実証」の他に、症状を「寒」と「熱」に分け、「寒」つまり冷えによる症状には温める漢方薬、熱がこもった症状には冷ます漢方薬、という使い分けをすることもあります。温める漢方薬として代表的なものには大建中湯、冷ます漢方薬には黄連解毒湯などがあります。


むくみ

17 五苓散 消化管やからだの組織の余分な水分を調整する代表的な漢方薬です。各種疾患に伴うむくみ全般に
   ここに注意!桂皮を含んでいます。脱水症状のある人には禁忌です。

114 柴苓湯 上記の五苓散の症状に比べ、消化管の炎症が強い場合に。がん切除術後のリンパ浮腫にも処方されます。
    ここに注意! 甘草、黄ごん、桂皮を含んでいます

20 防已黄耆湯 白色で疲れやすく、水ぶとりの体質の人の膝関節の腫れや痛みの伴う下肢のむくみに。
   ここに注意! 甘草を含んでいます

114柴苓湯は17五苓散にさらに7種類の生薬を足したもので、どちらもからだの中で滞っている水分の流れを正す作用があり、むくみによく使われます。とても似た漢方薬ですが、114柴苓湯に加えられた生薬の違いで、下痢や慢性胃炎などの消化管の症状を伴う場合などに使い分けられています。


手足の感覚の問題1 しびれ、痛み、冷感
107 牛車腎気丸 お年寄りの下半身の諸症状に使われます。タキサン系やオキサリプラチンといった抗がん薬による末梢神経障害にも。
    ここに注意! 桂皮、附子を含んでいます。地黄を含んでいるので、時にムカムカを感じることも。

30 真武湯 冷えの強い人に使いやすい、からだを暖める漢方薬です。冷えからくるしびれや痛み、胃腸の症状、気力の低下など、お年寄りの幅広い症状に使われます。
   ここに注意! 附子を含んでいます

38 当帰四逆加呉茱萸生姜湯 手足の冷えが強く、冷えによる痛みやしびれに。
   ここに注意! 甘草、桂皮を含んでいます。

附子はからだを温めて痛みをとる生薬です。
 附子はからだを温めつつ痛みをしずめる性質を持っています。附子を含む漢方薬は、基本的に温かいお湯と一緒に服用することが勧められます。エキス剤をお湯に溶かして飲むのもいいでしょう。


手足の感覚の問題2 筋肉の痛み、こむら返り

68 芍薬甘草湯 筋肉のけいれんとそれに伴う疼痛に有効で、しゃっくりや急性のぎっくり腰などにも用いられます。タキサン系抗がん薬による筋肉痛、末梢神経障害にも使われています。
   ここに注意! 甘草を含んでいます。

68芍薬甘草湯はこむら返り、疝痛、月経痛などにも用います。

即効性と甘草の割合を考えて
 甘草と芍薬の2種類の生薬からなる漢方薬です。生薬の数が少ない漢方薬は即効性が期待され、本剤も症状があるときに頓服で用いるのが基本です。他の漢方薬に比べ甘草の割合が多いので、その意味でも長期間続けて飲むよりは頓服に適しています。他の甘草を含む漢方薬や、グリチルリチンを含む薬と併用する時は注意が必要です


手足の感覚 膝・関節の痛み

20 防已黄耆湯 色白でお腹がぽっちゃりしている、いわゆる水ぶとりタイプの膝の痛みに。変形性膝関節症にも用いられます。
   ここに注意! 甘草を含んでいます

18 桂枝加朮附湯 冷え症でお風呂に入ると楽になるというような人の痛みに。
   ここに注意!桂皮、甘草、附子を含んでいます

28 越婢加朮湯 体力がある人で、関節が腫れて痛む時に。
   ここに注意!麻黄、甘草を含んでいます

漢方メモ5
 漢方薬を構成する生薬にも温める性質、冷ます性質のものがあります。温める漢方薬には温める生薬が多く含まれていますが、冷ます生薬も同時に配合されることが多く、作用のバランスがとられています。冷ます性質の漢方薬も同様です。


皮膚の問題  かゆい

86 当帰飲子 冷え性の人で、皮膚がカサカサしている人のかゆみに。熱を持った炎症のある人には不向きです。
   ここに注意! 甘草、当帰を含んでいます

15 黄連解毒湯 アトピー性皮膚炎など熱のあるかゆみにはこちらを。熱を冷ます性質があるので、冷え性への使用には注意を。
   ここに注意! 黄ごん、山梔子を含んでいます。苦いので服用の工夫を

22 消風散 分泌物が多い、じくじくした湿疹で慢性的にかゆみがあるものに。
   ここに注意!甘草、当帰を含んでいます。

「かゆみ」にもいろいろなタイプがあるので、それに合わせて漢方薬を使い分けるんだね。


風邪 風邪をひいた/風邪をひかないために

127 麻黄附子細辛湯 風邪をひいた お年寄りの、のどがイガイガする、背中がぞくぞくする、という風邪のひきはじめに。
    ここに注意! 麻黄、附子を含んでいます

1 葛根湯 風邪をひいた 市販薬としても有名ですが、風邪の初期に使います。風邪が長引いたら別の処方に切りかえます。
  ここに注意!甘草、桂皮、麻黄を含んでいます

41 補中益気湯 風邪をひかないために 気力・体力の底上げをはかり、免疫力アップを目指して使われます。
   ここに注意!甘草、当帰を含んでいます

ひとくちに風邪といっても、ひきはじめに使う漢方薬と長引いてから使う漢方薬は別なんだね。


介護のお手伝いをする漢方薬早見表
 本誌で紹介した漢方薬の中で、特に認知症およびがん患者のケアで出会うことの多いものをまとめました。症状改善の観察や副作用への注意の参考にしてください。
 本誌で紹介したものは代表的な処方のごく一部です。実際には症状や体質に合わせてこの他の漢方薬が使われることもあります。

認知症ケアによく使われる漢方薬
                      主な症状                     注意点
54 抑肝散(ヨクカンサン)  認知症の周辺症状                 甘草、当帰を含む!
                  ・妄想、幻覚・興奮/攻撃性・うつ・不安
                  ・焦燥感/易刺激性・睡眠障害
                  不眠
                  夜間覚醒

137加味帰脾湯        眠りが浅い
   (カミキヒトウ)       精神不安

47 釣籐散           認知症の周辺症状
   (チョウトウサン)     ・妄想・幻覚・興奮/攻撃性・うつ・不安       甘草を含む
                  ・焦燥感/易刺激性・睡眠障害
                   頭痛
                   過度の緊張

15 黄連解毒湯        のぼせ気味でイライラの症状           黄ごん、山梔子を含む
   (オウレンゲドクトウ)

41 補中益気湯        気力・体力の低下、全身倦怠感、食欲不振、  甘草、当帰を含む
   (ホチュウエッキトウ)  免疫力が低下して風邪をひきやすい、化学療法
                  による骨髄抑制、術後の貧血
48 十全大補湯
   (ジュウゼンダイホトウ)

108人参養栄湯
   (ニンジンヨウエイトウ)

54 抑肝散          がん末期のせん妄
   (ヨクカンサン)

100 大建中湯       術後のイレウス、腸管マヒ、化学療法、        特になし
  (ダイケンチュウトウ)  オピオイド系鎮痛薬による便秘  

107牛車腎気丸       化学療法による末梢神経障害・しびれ、       桂枝、附子を含む
 (ゴシャジンキガン)     痛み、冷感、術後の排尿障害            

14 半夏瀉心湯       化学療法による口内炎や下痢、悪心、嘔吐、    甘草、黄ごんを含む
                 食欲不振

68 芍薬甘草湯       化学療法による筋肉痛、化学療法による       甘草を含む
                 しゃっくり、こむら返り

48 六君子湯        術後/化学療法による食欲不振、胃部不快感    甘草を含む
   (リックンシトウ)    胸やけ、嘔吐、下痢


漢方薬になった食べもの@
 ショウキョウ(生姜)…しょうが

こんな漢方薬に使われています
 1 葛根湯  43 六君子湯  41 補中益気湯など

U
介護現場でよく出会う漢方薬を知ってみよう

認知症やがん患者の術後、緩和ケアなどの現場で漢方薬が広く使われるようになっています。
介護の現場で出会うことの多い漢方薬について、詳しくご紹介します。


41 補中益気湯

 体力・気力が低下している人への代表的な補剤です。
 お年寄りや術後、がん患者などにも使われます。

■効能または効果
 消化機能が衰え、四肢倦怠感著しい虚弱体質者の次の諸症:夏やせ、病後の体力増強、結核症、食欲不振、胃下垂、感冒、痔、脱肛、子宮下垂、陰萎、半身不随、多汗症
■用法・用量
 通常、成人1日7.5gを2〜3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。

全身がだるい、食欲がない、疲れやすい、風邪をひきやすい、声や表情に力がない

補中益気湯はこれらの生薬でできています
 ニンジン(人参) ソウジュツ(蒼朮) オウギ(黄耆) トウキ(当帰) チンピ(陳皮) タイソウ(大棗) ショウキョウ(生姜)
 サイコ(柴胡) ショウマ(升麻) カンゾウ(甘草)


100 大建中湯
 お年寄りから術後・抗がん薬の副作用対策まで幅広い腸の問題に。
 食品成分だけで作られている漢方薬です。

■効能または効果
 腹が冷えて痛み、腹部膨満感のあるもの
■用法・用量
 通常、成人1日15.0gを2〜3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。

術後のイレウスとその予防 過敏性腸症候群 便秘 比較的強い腹痛 腹部膨満感

大建中湯はこれらの生薬でできています。
 カンキョウ(乾姜) ニンジン(人参) サンショウ(山椒) コウイ(膠飴)

食べ物だけでできているのがいいね。

 大建中湯は腸管運動亢進作用、腸管粘膜血流の増加作用、抗炎症作用があることが解明され、臨床データでは術後単純性癒着性イレウス症状、過敏性腸症候群患者の腹部膨満感などの消化器症状、難治性便秘症を含む排便障害、向精神薬による排便障害などの改善効果が証明されています。


68 芍薬甘草湯
 こむら返りに対する数少ない治療薬です。頓服で即効性があることも人気の秘訣。

■効能または効果
 急激におこる筋肉のけいれんを伴う疼痛
■用法・用量
 通常、成人1日7.5gを2〜3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。

急激な足のけいれん(こむら返りこむら返り) しゃっくり 急にくるぎっくり腰 尿管結石 胃の痛み 生理痛

芍薬甘草湯はこれらの生薬でできています。
 シャクヤク(芍薬) カンゾウ(甘草)

含まれている生薬の数が少ない漢方薬は、効果が出るまでの期間が短くなるんだって。だから芍薬甘草湯は即効性があるのね!

 甘草を多く含むので、副作用の低カリウム血症(偽アルドステロン症)の出現に注意が必要です。そのため、処方は症状が出たときの頓服が基本で、できるだけ長期間の継続投与は避けるようにします。


107 牛車腎気丸
 お年寄りなど体力がない人の下半身の諸症状やかすみ目に。
 附子を含み、からだを温める漢方薬です。

■効能または効果
疲れやすくて、四肢が冷えやすく尿量減少または多尿で時に口渇がある次の諸症:下肢痛、腰痛、しびれ、老人のかすみ目、かゆみ、排尿困難、l頻尿、むくみ
■用法・用量
通常、成人1日7.5gを2〜3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。

かすみ目 口が渇く かゆみ 四肢のしびれ 下肢の脱力感 冷え 夜間頻尿 排尿困難

牛車腎気丸はこれらの生薬でできています。
 サンシュユ(山山茱萸) サンヤク(山薬) ケイヒ(桂皮) ブシ末(附子) ジオウ(地黄) シャゼンシ(車前子) タクシャ(沢瀉) ボタンピ(牡丹皮) ブクリョウ(茯苓) ゴシツ(牛膝)


54 抑肝散
認知症の周辺症状の改善作用の研究が進み、注目度急上昇!がん末期のせん妄などにも。

■効能または効果
虚弱な体質で神経が高ぶるものの次の諸症:神経症、不眠症、小児夜なき、小児疳症

■用法・用量
通常、成人1日7.5gを2〜3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。

抑肝散はこれらの生薬でできています。
 ソウジュツ(蒼朮) センキュウ(川きゅう) トウキ(当帰) チョウトウコウ(釣藤鉤) サイコ(柴胡) ブクリョウ(茯苓) カンゾウ(甘草)

 甘草を含む漢方薬の副作用である低カリウム血症(偽アルドステロン症)は、高齢者ではその出現頻度が高くなります。抑肝散は甘草を含み、かつ高齢者に使われることが多い漢方薬なので、注意が必要です


47 釣籐散
 認知症の周辺症状に抑肝散と同様使われています。慢性頭痛やめまいにも用いられます。

■効能または効果 
慢性に続く頭痛で中年以降、または高血圧の傾向のあるもの

■用法・用量
通常、成人1日7.5gを2〜3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。

慢性頭痛 のぼせ 肩こり めまい 認知症の周辺症状

釣籐散はこれらの生薬でできています。
からだを温める・・・チンピ(陳皮) ハンゲ(半夏) ニンジン(人参) ボウフウ(防風) ショウキョウ(生姜) 
からだを冷ます・・・チョウトウコウ(釣籐鉤) バクモンドウ(麦門冬) キクカ(菊花) セッコウ(石膏) 
中間の性質を持っている・・・ブクリョウ(茯苓) カンゾウ(甘草)


43 六君子湯
 薬の影響でも、精神的なものでも、体力低下からくるものでも、食欲不振にはこれ!

■効能または効果 
胃腸の弱いもので、食欲がなく、みぞおちがつかえ、疲れやすく、貧血症で手足が冷えやすいものの次の諸症:胃炎、胃アトニー、胃下垂、消化不良、食欲不振、胃痛、嘔吐

■用法・用量
通常、成人1日7.5gを2〜3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。

食欲不振 胃もたれ X腺や内視鏡でみても異常がみられない胃の不快感や痛み

六君子湯はこれらの生薬でできています
からだを温める・・・ニンジン(人参) ソウジュツ(蒼朮) ハンゲ(半夏) チンピ(陳皮) タイソウ(大棗) ショウキョウ(生姜)
中間の性質を持っている・・・カンゾウ(甘草) ブクリョウ(茯苓)

お腹が温まりそうだね。


29 麦門冬湯
 痰のないしつこい空咳に。 気管支炎や気管支ぜんそくにも使われます。

■効能または効果
痰の切れにくい咳、気管支炎、気管支ぜんそく

■用法・用量
通常、成人1日9.0gを2〜3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。

のどに痰がはりついたような感じ のどのイガイガ はげしく咳き込むけれど痰はでない 風邪の後、咳だけ残っている

麦門冬冬はこれらの生薬でできています。
からだを温める・・・ハンゲ(半夏) タイソウ(大棗) ニンジン(人参)
からだを冷ます・・・バクモンドウ(麦門冬)
中間の性質を持っている・・・コウベイ(硬米) カンゾウ(甘草)

半夏以外は全部気道を潤す性質を持っている生薬です!
痰の多い咳に使われないのはそのためなのね。


14 半夏瀉心湯
 食道全般の症状に幅広く使われます。抗がん薬や免疫抑制剤による口内炎や下痢にも。

■効能または効果
みぞおちがつかえ、ときに悪心、嘔吐があり食欲不振で腹が鳴って軟便または下痢の傾向のあるものの次の諸症:急・慢性胃腸カタル、発熱性下痢、消化不良、胃下垂、神経性胃炎、胃弱、二日酔、げっぷ、胸やけ、口内炎、神経症

■用法・用量
通常、成人1日7.5gを2〜3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。

吐き気・嘔吐 下痢 食欲不振 抗がん薬による口内炎や下痢

半夏瀉心湯はこれらの生薬でできています。
からだを温める・・・ハンゲ(半夏) ニンジン(人参) タイソウ(大棗) カンキョウ(乾姜)
からだを冷ます・・・オウゴン(黄ごん) オウレン(黄連)
中間の性質を持っている・・・カンゾウ(甘草)


86 当帰飲子
 お年寄りや、体が弱っている人の、熱を持たない乾いたかゆみにはこの処方が適しています。

■効能または効果
冷え性のものの次の諸症:慢性湿疹(分泌物の少ないもの)、かゆみ

■用法・用量
通常、成人1日7.5gを2〜3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。

分泌物の少ない乾いた感じの湿疹、かゆみ

当帰飲子はこれらの生薬でできています。
からだを温める・・・トウキ(当帰) シツリシ(疾り子) センキュウ(川きゅう) ボウフウ(防風) カシュウ(何首烏) オウギ(黄耆) ケイガイ(荊芥)
からだを冷ます・・・ジオウ(地黄) シャクヤク(芍薬)
中間の性質を持っている・・・カンゾウ(甘草)

漢方薬になった食べものA
コウベイ(硬米) ・・・お米
こんな漢方薬に使われています 21麦門冬湯など



V 漢方薬の飲み方の工夫と副作用の知識
 漢方エキス顆粒の服用法や副作用など、介護の現場で役立つヒントをご紹介します。

飲み方の工夫
 漢方薬には味やにおいが独特なものも多く、またエキス顆粒が飲みにくいという問題もあります。服薬の問題にはこんな工夫を。

においや味が気になる
●ココアパウダーを混ぜて、砂糖を少し入れて
 エキス製剤にココアパウダーと少しの砂糖を加え、お湯で溶いて服用すると味やにおいが緩和されます。見た目もココアなので、エキス製剤の色も気になりません。

見た目にも注意しないとね!

●甘いゼリーなど味がしっかりしていて、喉ごしのいいものに混ぜて
 甘いものは味がごまかしやすいやすいので、口触りのいいゼリーなどのおやつに混ぜるといいでしょう。

ここに注意!
 市販ゼリーの上に振りかけるのは見た目が汚くなり、認知症の方はそれだけでいやがることがあります。エキス製剤を溶かしてからゼリーにして、その上を見た目のいい牛乳ゼリーなどで覆う、といったひと手間がほしいところです。
 お粥や味噌汁などに混ぜると味が変わったことで食事まで嫌いになってしまう心配があります。おやつに混ぜるほうがリスクは少なくてすみます。

顆粒が口に残る
●お湯に溶かす
 エキス製剤1包に100〜200ccくらいのお湯を入れて攪拌します。溶けにくい場合は電子レンジで30秒〜1分ほど暖めます。138桔梗湯や15黄連解毒湯は冷ましてから服用します。
●顆粒を粉状にする
 粉薬なら飲める、という人にはこの方法も。薬剤師による剤型の加工にエキス製剤も加えてもらうように上申する方法で。
●入れ歯をはずしてから服用
 在宅で意識のはっきりしている方ならこの方法も。

施設では周囲への配慮も大切だね!

ここに注意!
 認知症の方は、一度入れ歯をはずすとそのままになってしまうことが多く、食事やQOLにまで影響がでてしまいます。施設では他の入居者が他人の入れ歯を見るのをいやがる場合もあります。

飲み込みにくい
●ゼリーのような喉ごしのいいものに加工する
 口が渇いて飲み込みにくいような方には、エキス剤を溶かした液でゼリーにすると飲み込みやすくなります。味やにおいを隠すのにも役立ち、一石二鳥。
●トロミのある液体にまぜる
 嚥下障害がある方は、お湯などさらさらした液体よりもくず湯やトロミ剤を使ってトロミがある液体にするとむせることが少なくなります。


副作用にいち早く気づくためのヒント
漢方薬にも副作用はあります
●漢方薬の副作用
 漢方薬は自然の生薬によってできています。そのために、副作用がないと思われがちですが、実際には低カリウム血症による偽アルドステロン症や間質性肺炎など、漢方薬でも注意すべき副作用があります。
●早期発見は介護者の役目
 副作用にいち早く気づくことができるのは、その人に寄り添い、日々の生活に関わっている介護者です。
●ほとんどが想定内の副作用
 漢方薬の副作用は、ほとんどが想定内のものなので、発症してすぐに減量や中止などの処置を行えば大事にはいたりません。それだけに、早期発見できる立場にいる介護者の責任は重大です。

こんな症状に注意!
●顔や手足のむくみ
●尿量減少、体重増加
●脱力感、筋力低下
●筋肉痛、こむら返り
●頭痛、のぼせ、肩こり
●手足のしびれやこわばり
●吐き気、嘔吐、食欲不振
 甘草を含む漢方薬は低カリウム血症による偽アルドステロン症に注意しましょう。
●空咳
●発熱
●労作時の息切れ
 間質性肺炎は、9小柴湖湯(ショウサイコトウ)をはじめ、多くの漢方薬で特に注意すべき副作用のひとつです。黄ごんを含む漢方薬におきやすいことが知られていますが、その他の漢方薬でも報告があるので、どんな漢方薬でもこうした症状に注意してください。
●腹痛
●下痢
●便秘
●腹部膨満感
 一部の漢方薬に腸間膜静脈硬化症の報告があります。これらの腹部症状にも注意をはらってください。

副作用と関係が深い生薬と主な漢方薬
 漢方薬の副作用は、そこに含まれる生薬が作用していると考えられます。副作用との関係が指摘されている主な生薬は次のようになります。

副作用を起こしやすい生薬/漢方薬
生薬 甘草
副作用 低カリウム血症 偽アルドステロン症
早期発見のための症状 むくみ、尿量減少/体重増加、脱力感/筋力低下、筋肉痛/こむら返り、頭痛/のぼせ/肩こり、手足のしびれやこわばり、吐き気/嘔吐/食欲不振




高尿酸

尿酸値 気にしてますか?
健康診断の結果 尿酸値が高かった方
(8.0r/dl!!)
尿酸値が高いと指摘された生活習慣病の方
(最近 血圧に加え尿酸値も高いですね。)
(尿酸値?・・・はぁ。)
痛風発作を起こしたことがある方
(痛ーい 急に足の親指の付け根が痛くなったよ〜!)
尿酸値が高いと、痛風発作をはじめ腎臓の病気や動脈硬化にかかわります。心当たりのある方は、まず一度、医師に相談しましょう。
(ええ!そうなの?)

はじめに
かつては「ぜいたく病」といわれた痛風も、この飽食の時代ではありふれた疾患になりました。一方で、健康に対する意識の高まりから健康診断や人間ドックを受ける人が増え、多くの人々が「尿酸値が高い」ことを指摘されています。尿酸は体内でできる老廃物のひとつですが、『血液中の尿酸の濃度が高い状態=高尿酸血症』が続くと体内に尿酸の結晶が蓄積して、痛風と呼ばれる関節炎を起こしたり、高血圧などの生活習慣病を悪化させたりします。つまり、高尿酸血症は痛風の予備軍であり、生活習慣病の要素のひとつでもあります。

では、尿酸値が高いといわれた人は、全員が治療を受ける必要があるのでしょうか?同じ「尿酸値が高い」人でも、健康診断などで尿酸値が高いことだけが問題になった人、それ以外にも合併症がいろいろある人、痛風関節炎を起こしてしまった人と、いろいろな段階があります。尿酸値の高さによっても、治療方針も治療目標も異なります。この冊子では、「尿酸値が高い」人の状態別に、必要な知識や必要な対策をわかりやすく解説しました。

病気に対して正しい知識をもつことは、病気を克服する第一歩です。正しい知識を持ち、正しく治療を受けることにより、より健康な生活を送っていただきたいと思います。
(ゆっくり座って、一度「尿酸値」のことをじっくり考えてみましょう。)


あなたはどのタイプ?
健康診断の結果尿酸値が高かった方 
いま何の症状もなくても、「尿酸値が高い」状態は、痛風をはじめ様々な合併症を招きます。いますぐ生活習慣を見直しましょう。
※尿酸値が9.0r/dl以上の方は、薬による治療がすすめられます。

尿酸値が高いと指摘された生活習慣病の方
高尿酸血症は高血圧や糖尿病などの生活習慣病と密接に関係し、心筋梗塞や脳卒中などを起こす奇険が高まります。尿酸値を下げる生活習慣は、「ほかの生活習慣病の改善にもつながります。病気の進行にブレーキをかけましょう。
※尿酸値が8.0r/dl以上の方は、薬による治療がすすめられます。

痛風発作を起こしたことがある方
痛風発作を一度でも起こしたことのある方は、薬物による治療が必要です。痛風は痛みが治まったからといって病気そのものが治ったわけではありません。その元となる「高尿酸血症」の根本治療に取り組みましょう。

気になる方は、まず一度受診しましょう。


@高尿酸血症ってなに?
尿酸値が高いとなぜいけない?
血液中の尿酸の濃度のことを尿酸値といいますが、尿酸値が7.0r/dlを超えたら「高尿酸血症」と呼びます。
今は何の自覚症状もなくても、高尿酸血症は様々な合併症の黄信号です。
@高尿酸血症は痛風発作や腎障害の予備軍
高尿酸血症の状態が長く続くと、尿酸の結晶が体のあちこちに沈着し始め、激痛で知られる「通風発作」をはじめとする様々な症状を引き起こします。

腎障害(痛風腎)
尿酸の結晶が腎臓に沈着して、腎臓の働きが低下する。腎障害が進むと腎不全を起こし、透析が必要になることも。

痛風結節
尿酸の結晶が皮下組織(皮膚の下)に沈着してかたまりができる。ひじや手の甲、耳介などの体温の低いところにできやすい。

痛風発作(関節炎)
尿酸の結晶が関節内に沈着して起こる関節炎で、あるとき急に腫れや激痛を伴って起こるのが特徴。

尿路結石
尿が酸性になって、尿の中の尿酸が溶けにくくなり、結石ができる。

A高尿酸血症は生活習慣病や慢性腎臓病※を合併しやすい
最近では、高尿酸血症は高血圧や高脂血症、糖尿病などの生活習慣病や慢性腎臓病(CKD)を合併しやすいことがわかってきました。生活習慣病のベースにはメタボリックシンドロームといわれる内臓脂肪型肥満の代謝異常がありますが、高尿酸血症も全身の代謝異常のひとつの現れともいえます。高尿酸血症はこれらの疾患と密接に関係し、動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や脳卒中などを起こすリスクを高めているといわれています。

高尿酸血症←→(密接に関係)メタボリックシンドローム
                   内蔵脂肪型肥満+高血圧高脂血症 慢性腎臓病(CKD)
   ↓                  ↓
        動脈硬化
          ↓
      心筋梗塞・脳卒中 

  関節炎 脳卒中 心筋梗塞  腎障害  尿路結石  狭心症

Check! 高尿酸血症では、水面下に隠れてみえない重大な合併症に注意することが大切です。
※尿酸の結晶が腎臓に沈着しなくても、高尿酸血症に腎臓の働きが低下することがあります。

そもそも尿酸ってなに?
尿酸という名前から、「尿」の「酸」のことだと勘違いされやすいのですが、尿酸はひとつの物質の名前です。尿酸のもととして食品に含まれる「プリン体」が有名ですが、実は食品のプリン体からつくられるエネルギーの燃えかすと、遺伝子が分解されることによって生じる老廃物です。できた尿酸は、尿の中に排泄され、体内の尿酸の量(尿酸プールといいます)は常に一定に保たれています。
体内で尿酸がつくられる過程
食品に含まれるプリン体→体内のエネルギー・遺伝子RNA DNA→プリン体→尿酸→尿 腎臓

尿酸値はどうして高くなるの?
体内で尿酸がつくられ過ぎたり、不要となった尿酸がうまく体の外に排泄されなくなることで、血液中の尿酸の濃度が高くなります。

体内の尿酸プール
体内でつくられる尿酸(1日約600r)
体内で合成(約500r) 尿酸プール(約1g) 食べ物から(約100r) 主に尿中に排泄(約600r)
体の中でつくられる尿酸の量  体の外へ排泄される尿酸の量
体の中でつくられる尿酸の量と体の外へ排泄される尿酸の量のバランスが崩れると、尿酸値が高くなるんですね。

A高尿酸血症と痛風の関係
痛風ってどんな病気?
痛風発作は痛風関節炎ともいわれ、尿酸の結晶が関節に沈着することで起こります。発作はある日突然起こり、腫れと激痛を伴うのが特徴です。
場所は足の親指の付け根が最も多く、痛むのは普通一度に1カ所だけです。発作は1〜2週間程度で治まりますが、根本にある高尿酸血症を放っておくと発作を繰り返します。

痛風発作を起こした足
関節炎の起こりやすい場所
足の親指の付け根 足首 足の甲 膝 手首 ひじ

痛風になりやすい人は・・・
激しいスポーツを好む 仕事会の熱血清 アルコール、特にビールが大好き 早食い・大食い 太っている

痛風患者さんの95%が男性で、元気で仕事も遊びもバリバリこなしているタイプの人が多いのです。 まるで自分!?

痛風の起こるしくみ
尿酸値が7.0r/dlを超えた状態が長く続くと、血液に溶けきらなかった尿酸が結晶化して、関節に沈着していた尿酸の結晶が関節の中ではがれ落ちると、白血球がそれを排除しようと格闘します。その結果、関節の炎症(痛風発作)が起きるのです。

高尿酸血症が続くと、関節などに積み木のように尿酸の血症が積みあがります。そして何らかのきっかけで崩れ落ちてしまった状態が、痛風発作です。高尿酸血症を治療しない限り、これを繰り返してしまいます。

ストレス 激しい運動 尿酸値の急激な変動

B高尿酸血症と痛風にはどんな治療をする?
 高尿酸血症と痛風にはどんな治療をするのでしょうか?

高尿酸血症だからといって、すぐに薬による治療が必要になるわけではありません。尿酸値が7.0mg/dLを超えている方はまずは生活習慣を見直しましょう。
ただし、次のような方は薬を飲むことがすすめられますので、主治医に相談しましょう。

●痛風発作を起こしたことがある、または痛風結節がある方
●尿酸値が8.0gm/dL以上で合併症のある方
●尿酸値が9.0mg/dL以上の方

ここでいう合併症とは、腎障害、尿路結石、高血圧、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)糖尿病、メタボリックシンドロームなどです。

治療の基本
高尿酸血症と痛風治療の根本治療は尿酸値6.0mg/dL以下を目指した尿酸値の継続的なコントロール。起きてしまった痛風発作の治療とは分けて考えます。

尿酸値6.0mg/dL以下を保つと、体に沈着している尿酸の結晶が溶け出し、痛風発作や合併症のリスクが減るといわれています。

高尿酸血症と風痛治療の進め方
痛風発作が起きたら、まずは痛みを抑える治療を行います。

痛風発作が治まってから、尿酸値を下げる治療をはじめましょう。発作が起きていない方はここからスタートですよ。

痛風発作治療薬(痛みを抑える薬) 痛風発作治療薬は、発作が起きたときにだけ飲みます。

尿酸降下薬(尿酸を下げる薬) 尿酸降下薬は少ない量から開始し、徐々に増やして3〜6ヶ月かけて維持量を決定します。

尿酸値 6.0mg/dL以下を目指しましょう。 高尿酸血症 下がった尿酸値をキープするため、治療を続けましょう。

尿酸値のコントロールと合併症の予防のため、並行してこれらもすすめていきましょう。 
尿路結石を防ぐ治療
合併症に対する治療
すでに行っている方は継続します。

B高尿酸血症と痛風にはどんな治療をする?
生活習慣の改善

「尿酸値が高い」と言われると、とかくプリン体の制限にばかり目が向きがちですが、大切なのは、尿酸値を上げやすい生活習慣全体を見直すこと。次の5つのポイントから、尿酸値を下げる生活のコツをつかみましょう。

尿酸値を下げる生活は、他の生活習慣病も併せて改善してくれます。まずは、生活習慣を見直しましょう。

尿酸値が高い人の生活改善のポイント
@食事の量を抑えて、体重を落としましょう。
Aアルコールを減らしましょう。
B水分を十分にとりましょう。
C適度な有酸素運動をしましょう。
Dストレスを上手に発散しましょう。

@食事の量を抑えて、体重を落としましょう。
肥満を解消すると、多くの人で尿酸値が下がってきます。尿酸値が高いからといって、食べてはいけないものはありません。いろいろなものを少しずつ食べて、食事全体の量(カロリー)を抑えましょう。

食事で気をつけるポイントは、次の3つです。

1 適正カロリーを守りましょう
1日に摂取する適正カロリーの目安
標準体重×25〜30kcal
★標準体重は、身長(m)2×22で求められます。

2 プリン体のとりすぎに注意しましょう
食べてはいけないものはないとはいえ、プリン体を多量にとると尿酸値が上ることに間違いはありません。ポイントは食べる量を頻度。魚卵や内臓などのプリン体の多い食品は「たまに」「少し」楽しんでください。

3 アルカリ性食品を積極的にとりましょう
尿酸値が高いと尿が酸性になり、尿酸が溶けにくくなって尿路結石ができやすくなります。野菜、海藻、牛乳などのアルカリ性食品を積極的にとるとともに、水分を十分にとりましょう。

3 高尿酸血症と痛風にはどんな治療をする?

プリン体の多い食品(食品1人前に含まれるプリン体の量とカロリー) 1日に摂取するプリン体の量は400mgを超えないようにしましょう。

    分類         食品名と1人前の分量    1人前に含まれる量
                                    プリン体(mg)          カロリー(kcal)
プリン体が極めて多い  鶏レバー 80g        249.8                  88.8
食品            マイワシ干物 80g(2尾)  244.5                  154.4
               あん肝(酒蒸し) 15g    59.9(100gあたりでは399.2)   66.8
プリン体が多い食品   豚レバー 80g        227.8                  102.4
               牛レバー 80g        175.8                  105.6
               牛ひれ肉 200g       196.8                  266〜446
               カツオ   80g(刺身5切) 169.1                  91.2〜132
               マイワシ  50g(1尾100g) 105.2                 108.5
               大正エビ  50g(2尾)    136.6                 47.5
               マアジ干物 60g(中1尾90g) 147.5                100.8
               サンマ干物 90g(1尾130g) 187.9                 234.9


尿をアルカリ化する食品と酸性化する食品

尿をアルカリ化する食品
 海藻類  ひじき・わかめ・こんぶ
 きのこ類 干ししいたけ
 豆類 大豆
 野菜類 ほうれんそう・ごぼう・にんじん・キャベツ・大根・かぶ・なす
 いも類 サツマイモ・里芋・じゃが芋
 果実類 バナナ・メロン・グレープフルーツ

尿を酸性化する食品
 卵類 卵
 肉類 豚肉・牛肉
 魚介類 サバ・アオヤギ・カツオ・ホタテ・ブリ・マグロ・サンマ・アジ・カマス・イワシ・カレイ・アナゴ・芝エビ・大正エビ
 穀類 精白米

Aアルコールを減らしましょう。
ビールにプリン体が多いというのは有名な話ですが、ビールに限らずアルコールそのものが尿酸値を上げる原因になります。プリン体の量はお酒の種類によって違いますが、たくさん飲んだら一緒です。尿酸値の高い人はなるべくお酒を控えましょう。

Check!
アルコールが増えると、摂取エネルギーも増える上に、痛風のリスクも高まります。量を考えて飲みましょう。

尿酸値を上げない1日の飲酒量の目安
ビール500ml 焼酎25度120ml ウイスキーまたはブランデー40度 60ml 日本酒 180ml ワイン 180ml

B水分を十分にとりましょう。
尿酸は尿から排泄されるため、尿の量が増えれば、体内の尿酸が体の外へ出やすくなります。心不全や腎不全で水分制限の指示を受けているような場合を除いて、1日2Lを目安に積極的に水分をとりましょう。

Check!
果糖や砂糖を含む甘いソフトドリンクは肥満につながる上、痛風のリスクを高めるので、飲みすぎに注意しましょう。

水やお茶でまめな水分補給
1日2L以上を目安に

C適度な有酸素運動をしましょう。
肥満の解消、尿酸値の高い人に合併しやすい生活習慣病の予防のためにも運動することがすすめられます。ただし、激しい運動は、かえってエネルギーの燃えかすである尿酸が増え、尿酸値を上げる原因になるので要注意。ウォーキングのような軽い有酸素運動を継続して行うのが効果的です。毎日の生活習慣に取り入れる工夫をしましょう。

尿酸値のためによい運動(例)
自宅から最寄り駅まで毎朝10分間の早歩きから始めてみます。

尿酸値のために悪い運動(例)
過度な筋肉トレーニング
肩で息つくような激しい運動

Check!
どんな運動もやり過ぎは逆効果。ご自身の標準体重を目標に、週3回程度の軽い運動を継続して行いましょう。

Dストレスを上手に発散しましょう。
痛風になる人には、せっかちで行動的な人が多いといわれています。食事をすれば早食いに大食いで、仕事はバリバリこなし、プライベートもじっとしていない…思い当たる方はいませんか?こうしたタイプの方はストレスにさらされやすく、ストレスは尿酸値を上げるといわれています。
尿酸値を下げるためにも、ストレスを解消することが大切ですが、そのストレス発散法が飲酒や過食では、逆に尿酸値を上げる結果となってしまいます。
十分な睡眠、適度な運動など、体に優しい自分なりのストレス解消法を見つけてください。

○ のんびりリラックス…
× ストレスたまったから、パーッと飲みに行くぞ〜。

Check!

暴飲暴食、激しいスポーツは体へのストレスになります。
のんびりリラックスを心がけましょう。

痛風発作(急性関節炎)の治療
痛風発作が起きたら、激痛を和らげるために関節の炎症を抑える治療を、発作が起きている間だけ行います。

痛風発作のときの薬の使い方
前兆期 痛風発作を抑えるためにコルヒチンを1錠服用

極期 関節の炎症や痛みを抑えるために、非ステロイド抗炎症薬を短期間だけ大量に服用

回復期 痛みが持続する場合は、非ステロイド抗炎症薬の通常量を服用

1 関節の違和感やむずむず感など発作の前触れがあるときに服用すると、発作を予防したり、軽減します。
2 非ステロイド抗炎症薬が効かなかったり、使用できない場合には、ステロイド薬を使用します。

市販の痛み止め(アスピリンなど)を服用した場合に、かえって症状が悪化することがあるので、自己判断で服用しないようにしましょう。

発作が起きたときの対処法
痛風発作が起きたら、患部を心臓より高くして冷やしましょう。温めたり、もんだりすると逆効果です。無理に歩き回るもの禁物です。

発作の対処法
冷やす
患部を心臓より高くします

尿酸値を下げる薬は発作が治まってから
痛風は尿酸値が高いために起きる病気ですが、発作の治療に尿酸値を下げる薬は使いません。痛風発作は、尿酸値が上ったときだけでなく、急に下がっても起きやすいのです。発作中は尿酸値をなるべく変動させないことが原則。発作が治まってから、尿酸値を下げる治療を始めます。

Check!
ただし、すでに尿酸値を下げる薬をきちんと服用している方が発作を起こした場合は、そのまま薬を続けてください。

高尿酸血症の治療
痛風発作が治まったら、まるで病気が治ったかのように見えますが、根本にある高尿酸血症は何も解決していません。ここからが本当の治療の始まりです。高尿酸血症の治療で、体内にたまった尿酸を溶かしだして、痛風発作や恐い合併症を予防しましょう。
尿酸値を下げる薬(尿酸降下薬)は、次のタイプがあります。

分類      尿酸生成抑制薬      尿酸排泄促進薬
主な薬   フェブキソスタット      ベンズブロマロン 
       アロプリノール        プロベネシド
                        ブコローム

特徴    尿酸が体の中でつくら   尿酸を体の外へ出しやすくする薬です。
       れるのを抑える薬です。

尿酸降下薬を服用しているときの尿酸値の目安

尿酸値 6.0mg/dL↑ 服薬を徹底するまたは薬を増量する
     6.0mg/dL ↓理想的

Check!
痛風発作を起こしたことがある、または高血圧の方は、尿酸値6.0mg/dL以下をめざしましょう。

高尿酸血症の治療はあせらず、根気よく
尿酸値はゆっくりさげましょう。
血液中の尿酸の濃度が急激に下がると、関節などに沈着していた尿酸の結晶が一気に溶け始めることがきっかけで、痛風発作がおこることがあります。尿酸値を下げる薬を服用する際は、発作を防ぐために、医師の指示に従い段階的にゆっくり尿酸値を下げていきましょう。

尿酸値はしっかりさげましょう
尿酸値を目標値まで下げたら、その値をしっかり維持しましょう。尿酸値を6.0mg/dL以下に保てば、痛風発作は起こらなくなります。そして、そのような尿酸値を下げる生活習慣を続けていくことが、心筋梗塞や脳卒中のような様々な合併症を予防することにもなるのです。

医師の指示に従い、定期的に受診しましょう。
薬を服用する際は医師の指示に従い、自己判断で薬を減らしたり止めたりしないようにしましょう。
高尿酸血症や痛風の治療は継続することが大切です。定期的に診察を受けながら、根気よく治療を続けましょう。






やさしくわかる人口股関節置換術

■ はじめに
 関節に疾患を抱えている人は日本国内で3,000万人を超えると推定されています。
しかしこれほど多くの人が罹患(りかん)しているものの、関節疾患の多くは比較的ゆっくりと症状が症状が進行する慢性型のため、「加齢」という理由で見過ごされてしまうこともあります。その結果、疾患の度合いが進んでしまうと関節に強い痛みや熱が発生したり、あるいは歩く・座る・立つといった基本的な動作が制限されてしまう事態になりかねません。
 これらの関節疾患を治癒させるため、整形外科手術や製薬といった医学が展開を続けてきました。本冊子でご紹介する『人工関節置換術』も、この医学のひとつです。主に変形性股関節症や関節リウマチ、骨頭壊死等の関節疾患を治療する方法として、国内でも毎年たくさんの手術が行われています。
 本冊子では『人口股関節置換術』について、手術前から手術後までの流れも含め、わかりやすくご紹介しています。関節疾患に悩んでいる方が、1人でも多く痛みから解放され、アクティブな生活を取り戻されることを心から願ってやみません。

セルフチェック
該当する項目すべてにチェックをつけてください。

1.膝が常に重く感じる
2.動き始め、歩きはじめにももの付け根が痛む
3.運動をした後、ももの付け根やお尻の横が痛い
4.家族あるいは親戚に股関節の病気を抱えている人がいる
5.歩くとき、左右に体がゆれる
6.スカートやズボンの丈が左右で合わない
7.段差があると、上りづらい
8.小さいころからあぐらがかけない、または正座ができない
9.靴下をはきにくい
10.寝返りを打つとももの付け根の関節が痛い

1.-2点  2.-1点  3.-2点  4.-1点  5.-2点  6.-1点  7.-2点  8.-1点  9.−2点  10.−1点

6点以上の方は…
関節疾患の可能性があります。
関節疾患は他の病気と比べ、症状の進行は比較的ゆっくりしていますが、疾患の程度が軽いほど治療法の選択幅は広くなりますので、ぜひ早めに医療機関の受診をされるようお勧めします。

3点以上の方は…
関節疾患予備軍です。
関節疾患は他の病気と比べ、症状の進行は比較的ゆっくりしていますが、疾患の程度が軽いほど治療法の選択幅は広くなりますので、症状が続くようであれば医療機関の受診をされるようお勧めします。

2点以下の方は…
関節疾患の心配はないでしょう。
軟骨や骨、筋肉を健やかに保つためにも、適度な運動をバランスの良い食生活を心がけましょう。


股関節のしくみ
ボールの表面と受け皿の内側は、弾力のある軟骨で覆われています。

股関節は球関節(ボールと受け皿の関節)として知られており、大腿骨(太ももの骨)の丸い骨頭(ボール)が骨盤の臼蓋(受け皿)に組み合わさってできています。
 ボールと受け皿の表面は軟骨でおおわれ、股関節のまわりは筋肉や腱に囲まれて補強されています。
 こうした組織が股関節を支え、安定した動きを与えています。

痛みのもとになる疾患は?

股関節が痛む主な原因として、次に挙げる関節疾患があります。

■変形性股関節症
 うまれつき股関節がずれていたり(先天性股関節脱臼)、骨盤の発育不全(臼蓋形成不全)などがあるとき、体重の負荷で軟骨が磨り減りやすくなり、骨頭と臼蓋がこすれあうため、痛みや運動障害を招く病気です。

■関節リウマチ
 関節リウマチのような関節炎では、関節の中にある膜が炎症を起こします。炎症により放出された化学物質が関節の軟骨や骨を破壊し、痛みや腫れを引き起こします。

■骨頭壊死
 大腿骨(太ももの骨)の骨頭が、血流障害のために、脆くなってつぶれてしまう疾患です。

■外傷
 事故などの衝撃が原因で、股関節脱臼や骨折を引き起こすと後遺症として関節疾患になる場合があります。

治療法は?
 股関節の病気では、程度が軽い場合は、投薬や理学運動療法といった保存的療法で症状を和らげることができます。
 ただし、痛みが継続する場合や、歩行能力の回復が見込めない場合、また関節リウマチが進行した場合には、人口股関節置換術などの手術療法が必要になります。





腰痛・関節痛などの痛みでお困りの患者さんへ

痛みを上手にコントロールしながら、ロコモティブシンドロームを予防しましょう。

ロコモティブシンドロームとは?

運動に関る骨、関節、筋肉、神経などが衰えてしまい「立つ」「歩く」などの動作に支障を来し、要介護や寝たきりになること、またその危険性が高い状態をいいます。
加齢とともに増加するため、早めに予防対策をはじめましょう。

ロコモティブシンドロームの症状は?
骨や関節、筋肉などの障害は、要介護や寝たきりと深く関係しています。
「腰が痛い、ひざが痛い」などの症状は骨や関節筋肉などの加齢シグナルです。要介護や寝たきりにならないために、これらのシグナルを見過ごさないようにしましょう。

ロコモティブシンドロームの原因は?
ロコモティブシンドロームの原因は、加齢、運動不足などによる「筋力の低下」、「バランス能力の低下」、「骨や関節の病気」です。
ロコモティブシンドロームの方とその予備軍は、全国で推定約4,700万人で、高齢化に伴いさらに増加すると予想されています。

ロコモティブシンドロームの予防は、骨や関節、筋肉などを適度に使い、機能を保つことが大切です。

病気による関節や骨の変形・痛みなどがあるときには、痛み止めをきちんと飲み、できるだけ日常生活を制限なく送ることが大切です。

痛みをコントロールしましょう!
腰痛や関節痛などがある場合は、我慢せずに痛み止めを服用しましょう。痛みが楽になると「立つ」「歩く」などの動作がスムーズになり、日常生活を制限なく送ることができます。また、動くことで筋力の低下を防ぎ、ロコモティブシンドロームの予防へとつながります。

胃の不調をかんじることはありませんか?

腰痛、関節痛などに対し一般的によく使われる痛み止めは、痛みだけでなく熱や腫れも抑える効果がありますが、胃を荒らすことがあります(消化管障害)。下記の消化管障害の危険因子に該当する方は特に注意が必要です。

痛み止めによる消化管障害
危険因子
○65歳を超える高齢の方
○痛み止めの服用量が多い方
○胃・十二指腸潰瘍の経験がある方
○ステロイドなど、痛み止め以外に胃を荒らしやすいお薬を服用している方

危険度
高い 胃・十二指腸潰瘍による吐血の経験がある方
    左記の4つのうち、3つ以上当てはまる方

やや高い 裂きの4つのうち、1〜2つ当てはまる方

低い 左記の4つのうち、1つも当てはまらない方


○心配な方は早めに医師に相談しましょう。
○従来の痛み止めに比べて胃を荒らしにくいものもあります。


日常生活で適度な運動を!
ロコモティブシンドロームを予防するために、筋力やバランス能力を日頃から鍛えておきましょう。
自分のレベルにあった運動(開眼片脚立ち、スクワットなど)を日常に取り入れるとよいでしょう。

運動の方法
@開眼片脚立ち
 左右1分間ずつ1日3回行いましょう。

転倒しないように必ずつかまるものがある場所で行いましょう。

床に置かない程度に片足を上げます。

Aスクワット※1
深呼吸をするペースで5〜6回繰り返します。1日3回行いましょう。
安全のために椅子やソファーの前で行いましょう。

Bその他、ストレッチ※2、ウォーキングなど、無理のない範囲で積極的に運動を行いましょう。

※1:上半身を伸ばした状態で膝の曲げ伸ばしを行う運動。ふとももなど下半身をきたえるために行います。
※2:全身の筋肉と関節を伸ばし体をほぐす運動。体を動かす前の準備運動の役割もあります。





骨の健康が気になる方へ
私たちの身体を支える大切な骨。ちょっと目を向けてみませんか?

 骨は、私たちの身体を支える大切な存在ですが、そのほかにもカルシウムを貯めておく、血流の成分を作るなど様々な役割を担っています。
 骨では、古い部分が壊され(骨吸収)、新しく作り直される(骨形成)という新陳代謝がたえず行われています。通常は、これらのバランスが保たれていますが、女性では閉経を機に、骨の形成に重要な女性ホルモンが低下するため、骨の量が減ってしまう骨粗鬆症が起きやすくなります。

 壊す=作る → 壊す>作る

 骨粗鬆症が進行すると、骨折しやすくなったり、腰痛になったり、背中が丸くなって食べ物をうまく消化できなくなるなど、毎日の暮らしに大きな影響をもたらします。
 しかし、骨粗鬆症はこうした状態になるまで発見されにくいのも事実ですから、早めに検査を受けることが大切です。

こんな場合は要注意?!
 ・若い頃よりも身長が4cm以上低下した
 ・体重が(年齢−5)sよりも軽い
 これらは骨粗鬆症の一つの目安になります。
 当てはまる場合は一度検査を受けてみましょう。

骨の健康チェック
骨の健康が気になる方は、下記の質問にお答えのうえ、医師・看護師にご相談ください。

Q1 年齢は?  ......歳
Q2 身長は?  ......p
Q3 体重は?  ......s
Q4 50歳以降に骨折したことはありますか?             □はい
Q5 母親が骨折したことはありますか?                □はい
Q6 タバコを吸いますか?                         □はい 
Q7 一日に日本酒2合(ビール350ml缶3本)以上飲みますか?  □はい
Q8 ステロイド薬を使用したことがありますか?             □はい
Q9 関節リウマチと診断されていますか?                □はい

骨の健康を保つために....
1 適度な運動を
 適度な運動は、骨を丈夫にします。1日30分程度のウォーキング、水泳などがお勧めです。

2 食事にも気をつけて
 乳製品や小魚、大豆など、カルシウムを積極的にとりましょう。塩分やたんぱく質のとりすぎに注意し、薄味でバランスの良い食事を心がけましょう。魚や卵、きのこなど、ビタミンDを多く含む食品も忘れずに。

3 禁煙を心がける
 タバコはカルシウムの吸収を妨げます できるだけ禁煙しましょう。

4 お酒は適量を
 アルコールもカルシウムの吸収を妨げます 適量を心がけましょう。

5 定期的なチェックも忘れずに
 40歳くらいまでに一度、50歳を過ぎたら年に一度は骨検診を受けましょう。





製品効能:腹痛、側胸部痛、神経痛
ストレス起因の心身不調、漢方の抗ストレス薬
 柴胡疏肝湯
【希望小売価格】48包5,000円(税別)、300包・500gオープン価格  【規格】48包、300包、500g
【効能・効果】体力中等度で、胸腹部に重苦しさがあり、ときに頭痛や肩背がこわばるものの次の諸症:腹痛、側胸部痛、神経痛
【用法・用量】大人(15才以上)1回1包(2.0g)、8歳以上15歳未満 1回2/3包  4歳以上7歳未満 1回1/2包、 2歳以上4歳未満 1回1/3包 2歳未満1回1/4包 を 1日3回食前又は食間に服用してください。
【成分・分量】本品6g中(1日服用量)
 サイコ(柴胡) 3.00g 苦、微寒(解表、解熱、疏肝解鬱、升拳陽気)
 シャクヤク(芍薬) 3.00g 酸・苦、微寒(補血、緩急止痛)
 コウブシ(香附子) 2.25g 辛、微苦、平(疏肝理気、調経止痛)
 センキュウ(川キュウ) 2.25g 辛、温(活血行気、きょ風止痛)
 キジツ(枳実) 2.25g 苦酸、微寒(行気、消積)
 カンゾウ(甘草) 1.50g 甘、平(補脾益気、清熱解毒)
 セイヒ(青皮) 1.50g 苦・辛、温(疏肝、理気、消積)
【効能・効果】
 ・疏肝解鬱
 ・理気止痛
 ・活   血
※ 本来の柴胡疏肝湯は〔柴胡・芍薬・香附子・枳殻・川きゅう・ 甘草〕の組成ですが、日本では「枳殻を枳実に変更」し、さらに「青皮を加えたもの」が、エキス製造を許可されています。

マツウラ
 柴胡疏肝湯の必要サイン 
ストレスをきっかけとした、心身の不調
 ※イライラしがち(怒りの感情)
 ※下痢と便秘をくり返す
 ※生理前症候群

柴胡疏肝湯の元となる基本処方 四逆散(傷寒論)
 柴胡 苦、微寒(解表、解熱、疏肝解鬱、升拳陽気)
 芍薬 酸・苦、微寒(補血、緩急止痛)
 枳実 苦酸、微寒(行気、消積)
 甘草 甘、平(補脾益気、清熱解毒)

【製品訴求点】 現代生活は「ストレス過多社会」と言って良い程、この処方はストレスによる様々な体調不良を治療する、いわば「漢方の抗ストレス薬」です。気の循行停滞(気滞)による、「肝気鬱結」の症状緩和に用いられます。
【肝気鬱結】 ゆううつ感、情緒不安定、ヒステリック、ため息が多い、胸脇部苦満、排便がすっきりしない、下痢と便秘が交互に来る、胸苦しい、腹鳴、残便感、月経前に乳房が張る・月経痛・月経不順・無月経など(生理前に不快症状)

 柴胡疏肝湯は、ストレスによる心身の不調の代表的治療薬です。ストレスによる機能障害を起こしやすい臓は「肝」で、その治療は柔肝を基本とします。本処方中に含まれる「柴胡+芍薬」の組合せが、その中心的役割を担います。治療にはさらに気を巡らす理気薬の存在が不可欠、「気病の総師・女科の主師」と呼ばれる香附子が心身の状況回復に助力し、不快症状を早期治療へと導きます。
 ストレスに耐えられる許容範囲は人により異なりますが、「深夜まで起きている」「目の酷使(パソコン・テレビ・携帯ゲーム)」などの現代生活習慣が、耐ストレス力を低下させている事を御認識ください。

《柴胡+芍薬の組合せを持つ抗ストレス薬・他処方》
 大柴胡湯  : 清熱・瀉下に働く大黄の配合あり。のぼせ・イライラが著しく、便秘がちな場合に用いる。便通が戻り不快症状が和らげば、柴胡疏肝湯等に切り換え。短期使用で病状を観察。
 加味逍遥散 : 感情が高ぶった後で、疲労感を持つ場合等に。血の道に働く生薬・当帰の配合があるために女性専用のイメージを持たれるが、男女を問わず使用出来、継続服用も可能。


抗ストレスの漢方処方! 柴胡疏肝湯
 現代はストレス社会、精神的なイライラや情緒不安定でお悩みの方は多数に及びます。継続的に@〜Cの症状でお悩みなら、それは心身の病的変化。柴胡疏肝湯の服用でストレスを和らげ、心と身体を守りましょう。

【用い方の目安】 〜ストレスを起因とする〜
 @情緒不安定(怒りやすい、イライラ、ゆううつ感)
 A生理前症候群(生理的に不快症状が起こる)
 B胸脇部が張って苦しい(胸苦しい、口苦)
 C胃腸・排便の不調(下痢・便秘の反復、膨張感、おなら・ゲップ多発、残便感)

《マツウラ柴胡疏肝湯の製品データー》
【効能・効果】 腹痛、側胸部痛、神経痛
          (体力中等度で、胸腹部に重苦しさがあり、ときに頭痛や肩背がこわばる者)
【成分・分量】 本品6.0g(大人1日服用量)には下記生薬より製したエキスを含有します。
          柴胡・芍薬 各3g/枳実・香附子・川きゅう各2.25g/甘草・青皮 各1.5g

※製品効能が限定されていますが、心身の不調治療(肝気鬱結)には不可欠な製剤です。
※配合生薬は7種類。配合生薬が少ない方の処方で、速効性が期待出来ます。
※生理前症候群の治療処方としても知られますが、男女の区別なく心身不調に用います。
※柴胡疏肝湯の服用により快方に向かえば、根治のため血虚の手当てを考慮します。

《ストレス対応のための生薬配合》
 心身のストレス対応には、「柴胡+芍薬」の組合せが不可欠です。
 それを含む基本処方は四逆散(柴胡・芍薬・枳実・甘草)で、気薬の配合を増し治療効果を高めた製剤が柴胡疏肝湯です。柴胡と芍薬の配合を持つ他2処方との使い分けを記します。

・大柴胡湯(柴胡・芍薬+枳実・大黄・黄ごん・半夏・生姜・大棗)
 清熱・瀉下効果を示す大黄の配合により、「のぼせ・イライラ・上部の熱感が著しい場合、便秘傾向の場合」に用います。イライラ起因の心身不調(肝気鬱結→肝火)が長引けば、高い確率で「眠れない・気持ちのあせり」が現れます(心肝火旺)。大柴胡湯は短期投与を基本とし、便通が戻り熱症状が緩和すれば、柴胡疏肝湯や加味逍遥散に転方します。

・加味逍遥散(柴胡・芍薬+牡丹皮・山梔子・薄荷・当帰・白朮・茯苓・甘草・生姜)
 「感情が高ぶったあと、疲労感を持つ様な場合」に、補剤・当帰の配合があるため“婦人薬”のイメージでも捉えられる事がありますが、男女を問わず使用していただきたい製剤。肝気鬱結治療の速効性においては、柴胡疏肝湯がリードしています。